お花結び

GIANTKILLING二次創作小説同人サイト

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「押すと感度100倍になるスイッチ」2

【5486文字】
以前、感度が100倍になるスイッチですっかり騙されてしまった番犬。悪ふざけに乗ってたまるかとニヤニヤ笑ってはみたものの!?ほのぼのアホえろジノザキ書きたいなーって、定期的に思いますね。でも、オチは別にないのだ、ってなりがちです(めっぽう無責任)
全然関係ないけど今回の投稿で唇を記号にしちゃったみたくて、ちゃんと唇マークが出てて笑っちゃいました。💋←環境依存文字だけど見えたら私と一緒にうけてくださいw(*´ε`*)チュッチュ

        ジノザキ , ,

「あの人まだこんな玩具捨ててなかったのかよ」
 俺がそう言いながら手に取ったのは、先日見つけたスイッチだ。俺はあの日すっかり王子に騙され、まんまと恥をかかされた。忸怩たる思いが蘇って、いたたまれなさに唇を噛んだ。

*

 シャワーからベッドルームに戻ってきたとたん、彼は頓狂な声を出した。
「待って!?ザッキー、何をしているの?」
あまりにもわざとらしい感じのその演技が、なんとも神経を逆撫でする。
「……」
ジロリと不貞腐れた顔をしながら、取り上げようとする王子をさっとよけた。
「……何?いい子だから、ほら、返して」
「今度はこれで、なんて詐欺るつもりだったんスか?王子」
苛立ちの俺と、悪ふざけの王子、ベッドの上ですったもんだが始まる。
「違うよ、そうじゃなくて、これは」
「んだよ、また俺をそうやって、」
王子は趣味の悪いあの演技を、悪びれることもなく続けていた。
「信じてよ、ねぇ、危ないから早くこっちに……弱ったな、君が気付く前に片付けようと思っていたのに」
「こんなもん、ただのスイッチじゃねぇか。残念だけど、もう二度とその手の冗談には」
「あ!駄目!押さないで!?」
「絶対騙されねぇから!」
「やめっ……」
 勝ち誇ったようにそれを押した途端、王子は息をのんで愕然としていた。
「なんてことを……」
「そんな顔したって滑稽なだけですよ?なんも起きねぇことはもうわかってるんで」
「ザッキー」
「なんスか」
「……裏、見てもらえない?」
「は?」
 大げさに震えながら指差す王子を尻目に、乱暴に裏を返してそれを見た。
「……なんだこれ」
「ザッキー……気づかなかった?それ、この前のものとは色が違うでしょう?」
確かに言われてみればそうだった。
「実は先日のスイッチにメーカーのマークが入っていたから、君に隠れて問い合わせたんだ。『これはジョークグッズですか、面白い物を考えますね』って」
そうして、如何にも気の毒そうな口調によって王子の説明が始まった。
「そうしたら、婉曲な苦情だと思われてしまったらしくってね。『申し訳ありません。直ちに代替え商品を』って」
説明が嘘か冗談かなど、別に考える必要もなかった。全身総毛立って、ざわざわする。異変はすでに始まっていた。
「いらないって言ったんだけど押し切られちゃって。そうして送られてきたのが、この……」
「『押すと感度1000倍になるスイッチ』……」
押し殺すように俺がそれを言えば、王子はこくりと頷いた。
「そう……もう100倍は在庫がなかったんだって。結構人気商品らしいね」
「……」
王子の声色が反響するみたいに、頭がなんだか、ぼうっとする。
「これは100倍では物足りない人用のデラックス版らしくって」
「う……」
「研ぎ澄まされた五感の世界を楽しむためだけのものなんだって。注意書きにも書いてあった。効果がちゃんと切れるまで、絶対に部屋から出ちゃ駄目だって。そうだよね、ちょっとした酩酊状態になるんだ。危なくって仕方がない」
まるで高熱が出る風邪のように、体がどんどん熱くなる。息があがっていくのがわかる。
「それに、性行為の補助剤としては絶対にご使用にならないでくださいって。刺激が強すぎて危険だって……」
世界が虹色に輝いている。
「だから、なーんだ、そんなんじゃ何の役にも立たないって、ああ、なんですぐに片付けておかなかったんだろう。今日はたっぷり君とって楽しみにしていたというのに……ザッキー、ねぇ、大丈夫?」
皮膚に触れている布の感触が、俺を追い詰め始めている。
「大丈夫……じゃないみたいだね」
オロオロと差し伸べられた両手を、拒絶するように首を振る。たったそれだけの身動き一つで、快感が駆け巡って体が跳ねた。
「……っ!?」
そこからはもう頭が真っ白だった。部屋着の刺激にも耐えられなくて、身悶えしながら剥いでいく。その感触にも嬌声が上がった。すぐそこで王子が俺をじっと見ている。けれど最早それどころではない状態だ。両手で股間を抑えながらうつ伏せになって、やがて腰を突き出し、指を後ろのほうまでも。酷い醜態を晒す羞恥が、王子の頬の紅潮を見ていると興奮にかわる。
「ザッキー、苦しそう。ごめんね?どうしよう」
 あきらかに彼もまた今の状況に興奮していて、けれど俺に触れることも出来ないままに、ただそこにいながら耐えていた。見ていられないと目を逸らしては、横目で盗み見、汗を拭った。やがてまた俺の自慰を食い入るように見つめながら、押し殺すような甘いため息をついた。

*

「お、うじ……」
涙を零し、涎を垂らし、腰を振りながら王子に言った。
「助け、て……あぁっ、シーツ、汚……」
「いいよ、大丈夫だから気にしないで」
許しを得ることでますます大胆になって、激しく刺激を続けて泣いた。
「駄目、だ……ぃ、く……ヤバ、い」
今日を楽しみにと俺に言ってくれていた王子は、それで少しでも君が楽になれるなら、と切ない表情で俺を見ていた。
「あ、あ、王子、……おう、じ、っああ」
勝手にひとりで夢中に耽って、自分の馬鹿さ加減にも涙が溢れる。それでも、未だかつてない興奮を感じていた。食い入るように見つめるおあずけのままの王子を見つめて、イく、イく、と醜態を晒し続けた。
「ザッ……」
やがて、言葉すら忘れてしまった最愛の人の面前で、俺は痙攣するように達したのだった。惨めに飛び散らせた液が寝具を汚す。淫らさと卑猥さに嘔吐するような、呻き声が体の奥から湧き出てくる。
「んっ……っ、ぅぇっ、」
そして、より状況が深刻であると感じさせたのは、その後、更に強まった疼きだった。

*

「あ……、うっ……」
すがるように見つめる俺に対して、王子は少し勘違いをしていた。
「泣かないで?ごめん、君の恥ずかしい姿を全部見てしまって……」
「……っ、ん……」
確かにとても恥ずかしかったが、それが堪らなかったのも事実だった。そして今はそんなことよりも、どうにかして欲しいことがあった。
「ザッキー?何?」
「……全然……治ま……ん……、うぅ……あ、ん……」
横臥した姿勢で体をビクビクと震わせながら、必死になってそれを伝えた。
「うん、そうだよね……確か1~2時間くらいは効能があるらしいから、そんなにすぐには」
自分を過激に慰めたために、スタミナは完全に切れていた。それでも快感だけは体の中で渦巻いていて、解き放ちたくてたまらなかった。
「、無……理……苦し、……」
「そのまま疲れで眠ってしまえればいいんだけど。ザッキー、もう少しだけ続けられるようなら」
 首をふるふると横に振って、またそれだけで喘ぎ声が出た。
「ああ、かわいそうに」
「おう、じ……」
「ん?」
「て、てつだ……って」
「……えぇ?……でも、ザッキーそれは」
熱く潤んだ目でそれを言う。日頃腹の立つことも多いけれど、やっぱりこんな状況下では俺のことを優先的にと、その優しさが全身に沁みる。
「いい、から……おう、じ」
愛情とはつまり信頼だ。今日の王子はいつもと違って、乱暴な真似はしないだろう。
「……王子、で……ちゃんと俺のこと、も、一回、イか、せて……」
犬のように舌を出して、乱れた呼吸で王子を見つめる。
「……責任……とっ……」
「ザッキー」
「頼……、おね……が……」
「……わかったよ。そのかわり、少しでも危ない感じがしたら……絶対、僕に合図してよ?」
ようやく意を決した王子がシャツを脱ごうとすることさえ、今は不要と腕を伸ばす。
「はや、く……」
気がはやる俺は喘ぎながらその手を思い切り自分に引き寄せ、王子はぐらりと姿勢を崩した。
「あっ、あぶな……」
咄嗟に俺のことをかばってくれて、でも、なんだかその後の王子の様子が変だった。
「……う、嘘でしょう?」
(……?)
王子の唇の色がない。
「ザッキー、なんでこれがベッドの上に」
(あ……それは……)
カチリと変な音がしたな、とは思った。
「だ、駄目だよ。あんないやらしいザッキーを見ちゃった直後に、駄目だって、これ、絶対、すっごくヤバい……」
 王子の体が総毛立っていくのが、青ざめた頬がみるみる桜色に染まっていくのが、そして、何よりも一気に溢れ出す濃厚なその色香が、今の彼の状態を物語っていた。
「駄目、ザッキー、お願い、僕から、逃げて……すぐに僕達、離れないと……」
「そ、そんな……こと」
すでに足腰の立たない状態の中にいる俺に、王子は無理難題を言う。
「二人ともこんな状態で、だなんて……ねぇ、ザッキー、危険だ……絶対やめた、ほうが」
王子の理性が壊れていくのがよくわかった。そして俺の理性はとっくの昔に。頭の中のアラートは響き、でもそれこそが更なる互いの欲望を呼んだ。二人はまるで磁石のように、みるみる引き合い、絡みつき、抱き合い、キスをして、そうしているうちに我を忘れた。
「ねぇ、すっごく気持ちいい……ザッキー、大丈夫?」
「王子、いいから、もっと……やめな、……あっ」
二人はすっかりスイッチの毒気にやられてしまった。すればするほど体はますます疼き、悶え、ずっとそうしていないといられないほどだった。
「……ザッキーの、エッチ」
「王子、こそっ」
延々としながら、なんだか二人、最後の方には笑えてきた。へとへとで、くたくたで、もうがたがたなのに、それでも求めあうことをやめられなかった。
「さすが、に……もう……」
指先一本動かせもしないと、そんな風に俺を後ろから横抱きにしている王子はそれでも。
「俺だってもうとっくに、何も、出……」
もう一滴も出ないほど空っぽになって、それでもまだ俺も王子と繋がっていたくて、肩越しに目配せして、苦笑して、そうして遠のいていく意識の中で、オフシーズンで本当に良かったと思った。効き目に個人差があるとはいえ、流石にこれでは明日あまりにも、と。

*

 目が覚めると体中あちこち痛い。かの人は隣でまだ寝ている。
「痛、つつ……」
寝返りを打つのもままならない。やっとのことで時計を見れば、あれからたった数時間しか経っていなかった。
「ん……」
「あ、王子。起きましたか?」
少し身じろぎした後にぽかりと目をあけ、何時なのかと俺に問う。
「〇時半ッス」
「……え、まだ?本当?」
くしゅくしゅと子供のように目をこすって、王子もやっとやっとで時計を見た。
「本当だ……ものすごく時間が経った気がする……」
二人は体勢を整えながら、おはよう、と挨拶のキスをする。
「……効き目、ようやく……切れたのかな」
「えぇ、確かにそうみたいッスね」
安堵の微笑みの中で、もう一度二人、ゆっくりと落ち着いてキスをし直した。
「しっかし、ひどい目にあっちゃったね」
「ったく、全部王子のせいですから」
怠惰な時間をゆったりと楽しむ。
「だね。でも君が僕の言うことをちゃんと聞いていれば」
「そりゃそうですけど、あの場合」
「まあね」
体が鉛のように重たく、でもそれがまた不思議と心地良い。
「……しかし、なんていうか……凄かったよね」
あの王子がしみじみこんなことを言うものだから、なんだか少し面白かった。
「何?」
「いえ、別に」
いつでも余裕のこの人の、あの時の姿はあまり記憶にない。吐息や、虹色の光や、愛を受ける悦びや、そんなものがただただ溢れている、まるで夢の中の出来事だった。
「……」
「王子?」
じっと俺のことを見つめている。とても切なげな瞳だった。
「本当に……ザッキー、すっごく、いやらしかった」
「……なっ」
うっとりと、溜息をついていた。色香で潤んだ王子の姿に、あの時の羞恥がぶり返した。そう、最初にスイッチを押したのは俺で、王子は確かにその後だった。彼は正気を保ったままに、俺のあられもないあの醜態を、その一切をガン見していた。
(うわぁ、勘弁してくれ……恥ずか死ねる)
スイッチの効果はすでに消えていたので、ただただ恥じ入るばかりだった。
「蕩けちゃうような顔で僕の名を呼んで……あんなに素直に乱れちゃって……意外だった。君にもああいう一面があるんだね」
動悸は高まり、耳鳴りがして、全身が赤く染まっていくのを感じた。
「ただ、感度が増幅されただけなら、本質がああなんだっていうことなのかな」
パクパクと陸の魚のような情けなさで、でも何も返事すら出来なかった。
「苦しそうで可哀そうでもあったけど……ああ、本当にすっごく……昨日の君、」
スイッチで理性が崩れゆく王子の姿が、ふっと俺の脳裏をよぎった。
(……ってことは、王子の本質っていうのも)
その映像があまりにも断片的過ぎて、それがとても口惜しかった。
「でも、あんなのはやっぱり異常だよね。危ないし、もうこりごりだ」
クスクスと笑いながら王子は転がっていたスイッチを手に。
「こんなものに頼らないで、僕の力であの君を引き出したい」
だから、もうこんなものはいらない、捨ててしまおう、と王子は呟き、ベッドのヘッドボードにそれを置いた。
「疲れたね。もう少し眠ろうか」
「……」
ふんわりと抱き寄せられる感触が心地良くて、あっという間に睡魔がやってくる。
(王子は、確かに俺をああさせてしまうことが出来るかもしれない。でも、俺はもうあの王子には二度と……)
俺はとても不公平に思った。ちゃんと王子を見てみたく思った。
(……なんとか、このスイッチ俺の手に入んねぇかな?)
王子がゴミ箱に捨てたならその後ひっそり、それともネットで検索して新しいものを?ちらちらと脳裏をさまよう虹色の王子の姿を追いかけながらも、泥のような眠りに落ちていく。
(なんとか王子だけにそれを押させて……そんで、今度は俺がすっかり壊れちまった王子の姿を……)
つくづく、とんだ目にあわされたものだと思いながらも、スイッチに未練が残ったのは俺の方だった。

      ジノザキ , ,