ムード満点!?花酔夜
ホノボノお花見泥酔夜話3部作の1作目。二人に大酒くらわせたかったんです。くっだらないことをゴチャゴチャ二人でしゃべってるだけの、ほぼ全編会話文の書き殴りコメディ。ジーノが酔って幼児化しながら飼い犬に絡みまくります。
桜満開、花嵐。そんなある春の夜のことだった。
(あぁ、また終電乗り過ごしちゃったな。ま、いっか。明日休みだし)
この部屋で楽しい夜を二人で過ごすのはもう何度目のことだろうか。赤崎が幸せな気分に浸りながらふと隣を見ると、ジーノもまた楽しそうな顔をしながらクスクスと思い出し笑いをしていた。
「さっきから随分ご機嫌ッスね」
「…すっごく綺麗だったなーって思ってさ」
「ああ、川沿いの桜並木のことですか?」
「うん、ちょうど満開だったね?桜っていいな…まさに日本!って感じで、ああいうのホントいい…」
「俺も結構楽しかったです。あんな見事な桜見たのは随分久しぶりでした」
「そう?ならよかった。実は寄り道して帰ろうよって言ったものの興味ゼロで単にボクに付き合ってくれてるだったらどうしようって思ってたんだよね」
「そりゃ一応俺も日本人だし…ってか花見が嫌いな人間なんてそうそういないんじゃないですか?」
「そっかな?」
「そうですよ」
「そっか…そうだよね?フフ」
ニコニコ顔のジーノのしゃべり方はいつになく甘ったるく、よく見ればほんのり頬も色づいていた。赤崎は美しい上気の艶に魅入られながら、この人も酔っぱらうことあるんだな、とジーノと同じように微笑んだ。
練習帰りにジーノの家に立ち寄りサッカーの録画をつまみに酒を酌み交わすのはいつものこと。けれど今日は二人とも随分と酔いが回るのが早かった。花見の夜というのは別名、花酔夜(はなすいよ)と言って昔から不思議と深酔いすることがあるらしい。それほど今日の桜は圧倒的な美しさだった。満開の花びらはまるで吹雪のように空を舞い、そのままヒラヒラと散り落ちたそれは闇色の川面を艶やかな桜色に染めていた。たゆとう流れをじっと見つめていると、なるほど怪しげな毒気にあてられそのまま幽玄の世界に連れていかれたとしてもおかしくはなかった。
「……」
「どうかしました?」
「フフ、ホント綺麗だったな…桜…」
桜よりも今のあんたのほうがよっぽど…と言いかけて赤崎はそんな自分が可笑しくて口をつぐむ。でも頬染めるジーノの視線が今日は妙に艶めかしく、逸らすことを許されぬ赤崎の瞳が口よりも雄弁にジーノの美を語っていたのだった。
「…なんかさ」
「はい?」
「急にHしたくなってきちゃった」
「な、突然何言いだすんだ!」
「ね、しよっか?」
「!」
「どうしたの?もしかしてザッキー、H嫌い?」
「いや、あの…嫌いとか好きとかそういうことじゃな…ちょ…王子」
「フフフ、そんなに緊張しなくてもいいよ、ザッキー」
あまりにもナチュラルな流れで赤崎はあっという間にカウチに沈められてしまう。
「冗談が過ぎる!何いきなり俺のこと押し倒してんだよ、ふざけんなッ」
「別にふざけてないけど?」
「ふざけてんだろ十分!」
「フフフ、威勢のいいことで。なんかゾクゾクしちゃうよ」
「やめろって、俺は女なんかじゃ」
「そんなの知ってるよ」
「やめろって!」
赤崎の剣幕にカチンときたのかジーノは服を脱がしにかかっていた手を一旦止めた。
「ザッキー…」
「な…なんスか…」
「無駄に暴れないでよ。怪我とかしたらどうするの?あとちょっとうるさい」
一段下がった声のトーンが威圧的。しかも今はもう魅惑の半眼どころかジーノの目は完全に据わっている。まさに不機嫌を絵に描いたような目付きだった。
「いや、あの…あんた酔った勢いとはいえ男同士でこんな…マジ黒歴史……明日の朝もしあんたに今の記憶あったら100%俺のせいにするに決まってる。悪いけど八つ当たりされんのはゴメンです」
大人しく話を聞いている様子に我に返ったかと赤崎がホッとするも、ジーノは押せども引けどもびくともしない。完全にマウントを取られているので当然だ。なんせジーノと赤崎ではこういうことの場数が違う。
「王子?あの、ちょっと…ほら…」
確かにジーノは話を聞いてはいたが肝心の趣はちっとも理解してくれない。どけ、どけ、といくら赤崎がお願いしても、簡単に話題は明後日の方向へ飛んでいくばかり。さsすがは酔っ払い。
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「ザッキーったらゲイの人とかのことディスったs
「よくないよ、そういうの…」
「え?いや…あの…俺が言いたいのはそういことじゃなくて…」
「男同士は黒歴史とか…失礼だよ?」
「まぁ、確かにちょっと言い方悪かったかもしれな…」
「謝るべきだよ」
「スンマセ…って、え?…もしかしてあんたゲイ……」
「別に違うけど」
「違うのかよッ!」
「どちらかというと、たかが股間についてるものの違いで態度とか気持ちとか変えるってどうなの?って感じかな」
「こッ!股間!?」
「っていうか色んな意味で頭は固いより柔らかいほうがいいよ絶対。ザッキーもサッカーとかで大成したいなら世界観もっと広げなきゃ、ね、だから、しよ?何事も勉強勉強」
「それとこれとは…てか、あんた股間の違いで扱い変えてるじゃねぇか!なら遠征ん時同室の奴追い出すなよ!」
動揺しながらも正論を吐く赤崎だったが、ジーノは当然お小言を聞く耳など持ってはいなかった。
「いいから、いいから。そんな深く考えなくても別にいいじゃない。チャチャッと手早く済ませてあげるからさ」
「ちょ!やめ!」
「男同士の方が寧ろ気持ちかったりするんだってよ?フフフ、確かに同じ体だといい場所わかりあえるもんね」
「駄目だって!百歩譲ってこういうのも大事な経験の一つだとしても!それとは別の問題があるだろ!」
「何それ」
「こういうのには順序ってもんがあんだよ!」
「順序?何?ボク順序守ってるでしょ?嫌がる子に無理矢理飛びかかるほどボク野蛮人じゃない」
「現に今飛びかかってるじゃねぇか!」
「一声かけてるよ失礼な」
「一声って!そんだけで安易に、はいわかりましたじゃあしましょう、ってなるわけないだろ!発情期の動物じゃあるまいし!」
「……」
「んだよその目、文句あんのかよ!」
「もしかして順序って女の子みたいに手間かけて口説いてほしいってこと?いいよ?やったげる。なんて魅力的なんだザッキー、キミはボクの太陽だよ。この世にキミがいなかったらボクはまるで萎れた花のようにその場で枯れ果ててしま…」
「馬鹿にしてるだろ!」
「手抜きだった?しょうがないじゃないか酔ってるんだもの。急に言われたって頭のスイッチすぐには切り替わらな…」
「そうじゃないって!」
「めんどくさいなぁ、そんなにH嫌いなの?」
「だからしたいしたくないの問題じゃねぇんだよ!」
「なんでもいいから、しよ?ややこしいこと言わないでさぁ、いいじゃない、ねぇねぇ」
「ちょっと待てって!変な甘え方すんな!」
「もう、なんなの?いい加減観念しなよ」
「駄目だって!まずはお互い気持ちがないとって話ですよ王子!」
「気持ち?じゃ問題ないじゃない。キミボクのこと好きでしょ?」
「なッ…」
「ボクもキミのこと好きだし、はい解決。ね?だからしよ?」
「待て待て待て!」
「あー!うるさい!どうしてもボクとHしたくないわけ?」
「当たり前だ!そんな簡単に出来るわけないだろ!」
「じゃあ最初っから嫌なら嫌、嫌いなら嫌いってはっきり言えばいいだけの話じゃないか!順序とか!安易とか!一体何だよ全く、もうわかったよ!」
「ちょ、王子?」
「知らないよ!ボクもう寝る!おやすみ!」
そう怒鳴りつけるとジーノは赤崎を突き放すようにガバリと起き上がり、ドシドシと乱暴な足音を立てながら寝室に引っ込んでしまった。
