お花結び

GIANTKILLING二次創作小説同人サイト

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お大事に

風邪ひきタッツミーとそれを心配しているジーノの話。ジノタツですがタツユリ的な要素もほんのり含まれていますのでご注意。でもNLというより兄妹的な何かです。甘くしようと無理矢理頑張ってみたところなんだかモヤモヤとした仕上がりになってしまったような…

        ジノタツ

SIDE:ジーノ

 ある肌寒い練習日。帰りの挨拶が飛び交う中ボクが見つけたのはタッツミーと広報女史が話をしている光景だった。

「でね?サイトに載せるのに文章だけだとつまんないから一緒に写真も載せようと思って」
「……」
「ちょっと聞いてる?」
「ん?うん」
「じゃ、どう思う?」
「……」
「笑って誤魔化さない!やっぱ聞いてなかったんじゃないの?全くもう」

 タッツミーは逃げようと思えばいくらでも逃げられるのに時々こうして延々と彼女の話に付き合ったりする。彼女にそれがどうしても必要になるタイミングが自然にわかってしまうのだろう。
 サイトの更新内容とかいう話なんて、急ぎでもなんでもないおよそどうでもいいものだ。別に今じゃなくたって。違うかい?タッツミーもこんなつまらない話を聞いているよりも先にやらなきゃいけないことがあるだろう?なのにそれをキレイに片づけて彼女に付き合い続けている姿は、やっぱり愛情だとボクは感じる。いや、でも。彼女をこうして支えることすら、あの人には自分自身にとっての最優先の事柄なんだろうか。

 ボクの最優先事項といえば、当然キミが最優先。ボクは常にキミの願いや欲望を、何でも叶えてあげたい人間だ。キミの思うがままに、キミが欲するままに、キミの全てを満たしたい。でも今日は違う。なんでだかその意味、わかるよね?タッツミー?

   *  *  *

「ゴメンね?その話長くなりそう?」
「あ、王子?達海さんになんか用だった?」
「ちょっとね」
「ごめんね!いいのいいの、また今度で。じゃ、達海さん!今のこと後で考えといて?」

 こういうやり方はあまり好きではなかったのだけれど、仕方がない。ほら。やっぱりタッツミーはボクを一瞥してその場を去っていこうとする。

「彼女の風邪、大分よくなったみたいね」
「そうみたいだな」

 クラブ内の人間はみんな体調管理についてはとても神経質だ。彼女が風邪を蔓延させてはいけないと言って、大人しく休んでいたのは先週の話。休ませたのは、そして、彼女の不調に真っ先に気が付いたのは、勿論、ボクの素敵なタッツミー。

 日本式のいわゆる古き良き根性論で生きているあの可愛い女の子はいつも自分の仕事にそれこそ夢中で、だから、体調がおかしいのにもすぐに気付けなくて。キミがこっそり医務室に連れて行った後にそこで何があったかはおよそ察しがつく話。
 そう、クラブ内の人間はみんな、体調管理に神経質であるべきだ。と。つまりは風邪を巻き散らかして選手にうつすな。と。自己犠牲は簡単に出来てしまう彼女をキチンと説得して止めるためには、その手の手厳しい正論がきっと必要だったんだろうね?ボクはキミの使っただろう正論が、ただの彼女を思うあまりの手段に過ぎないものだったとよくわかるけれど。次の日大人しく休んだ彼女は果たして、キミの言葉にしないその心を理解できていたのかね?ポーカーフェイスの陰にある心配顔したキミの心を、お休み中の彼女に見せてあげたいくらいだった。

 キミは何もかもとても器用にこなし過ぎて、だから時々こんなことになってしまう。ボクはキミのそういうところが勿論好きではあるのだけれど、同時に、なんでキミはいつもそうなんだい?と文句を付けたくなってしまったりもするんだよ。

 元気になった彼女が明るい笑顔でクラブハウスに戻ってきた頃、キミは反対に練習にもあまり顔を出さなくなり、来てもあまり選手に近づかないようになってしまった。なんでか?そりゃあ理由なんて一つしか。ねぇ?

   *  *  *

 彼女との会話を邪魔した上で図々しく話しかけるボク。まあ、でも手短にしておくからちょっとくらい付き合って?

「キミにうつったその風邪も、ボクにうつして治るならそれが一番いいんだけど」

 適当に受け流して立ち去ろうとしているタッツミーに向かって、ボクはこんな風に意地悪を言う。すると、言われたくないことを指摘されたキミはボクにしかわからないような小さな小さな反応を見せた。でもそんなことはお構いなしに、ボクは更に言葉を重ねる。

「ボクはかまわないよ?」
「馬鹿言うな」

 とても不愉快そうに振り向くキミの顔は、まるで桃のようにほんのりと赤みを帯びて、そのかぐわしさにボクはうっとりとしてしまう。ああ、やっとボクを見てくれた。本当に今すぐここで食べてしまいたいくらいだよタッツミー?

「今、何度?」
「知らね」

 ボクが歩みを進めれば、まるで磁石が反発するかのようにその分離れてしまうキミ。ボクはキミの看病がしたいのにやっぱりキミはそれをさせてくれない。だってボクは選手だから。キミの采配に命を吹き込むためのコマだから。ボクにはそのことがとても光栄ながら、悲しい出来事だったりするんだ。

「ったく。お前のそういう目ざといとこ、ホント、うぜぇ…」
「…だって、タッツミー」
「わかってる、そんな顔すんなって」

 ボクはちょっと傷ついて再び思わず近づこうとしたけれど、タッツミーは片手でさりげなくしかし厳格に押しとどめながらとても困ったような笑顔を浮かべた。

「あんがと。大丈夫だから」

 ボクはなにもしてやれない。オロオロとこうしてキミの周りをうろつくことしか出来やしない。こういうやり方は苦手なんだ。世界はいつもボクが中心で回っていたはずだったのに。

「お前ってホント優しいのな」

 こんなの間違ってる。こんなたった一言がボクの心を締め付ける。今までどれだけ耳タコかわからないこの言葉を、ボクは何故この人に投げられるとこれほどまでに?それはこの人がタッツミーだからに決まってる。理由にならないそんな理由が、この現象の一番の理由なのだ。

 2mは離れているだろうボク達のこの距離感が、心理的に一気に近づく。まるで吐息がかかるくらいにタッツミーが近くに感じる。ボクをこんな気持ちにさせてくれるのも、この世にこの人しかいない。

「よくなったらさ、ジーノ」
「ん?」
「一杯風邪がうつるようなこと、しようぜ」
「!」

 あまりの一言にボクが呆然とそこに立ち尽くしていると、タッツミーは

「つまんねぇし早く治すことにするよ」

 こう言い残して去って行った。

 優しいのはタッツミーだ。そしてとても意地悪。ボクが傍にいられないのがとても辛いんだと素直に言えば、辛いのは俺の方だとこうして簡単に返してしまう。タッツミーは逃げようと思えばいくらでも逃げられるのに時々こうしてボクの話に付き合ってくれる。ボクにそれがどうしても必要になるタイミングが自然にわかってしまうのだろう。

 だから、ボクは彼の言葉と姿に身悶えしながら、まるで躾けられた犬のように大人しく「まて」をしてしまうんだ。ボクをちっぽけで従順な犬にしてしまうのも、この世にキミしかいないよ?タッツミー。ボクはキミがキミじゃなければどれだけ思う存分好きなように、と思うし、そしてキミがキミだからこそボクはこんなにまで心の底から、とも思う。いつも、いつも、思ってる。

 そこんとこ、ちゃんとわかってるのかな?ボクのタッツミー?ボクは餓えたキミの全てを満たしたいのに、いつも先に餓えたボクを溢れんばかりに満たしてしまう真似をする。キミに追いつけるのは一体いつなのかと、いつも、いつも、ボクは途方に暮れるばかりなんだ。

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