お花結び

GIANTKILLING二次創作小説同人サイト

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飼い犬

15日なのでザッキー過去編をば。沢山の人達に愛されながらサッカー一筋に生きてきたってイメージで書きました。家族設定がっつり捏造。登場人物は赤崎、王子、同級生、家族、チームメイト、彼女(H有)。変な時間にジーノがフラフラあらわれてたのは後藤氏と飲みに行く為。このシリーズの後藤さんはお母さんでタッツミーはお父さん的役割。

小学時代~夢見る力

「やい!お前何睨んでんだよ!言ってみろよ!」

 また始まった。小学校の門を出ようとしていた赤崎はため息を付く。いつものように下校中に同級生の男子5人に絡まれていた。

   くだらない奴等
   俺はなんもしてねぇ
   目つきが悪いのは元々だ
   意味もなく絡まれるのは腹が立つ
   こいつら何度言っても俺の話を理解できない正真正銘の馬鹿だ

「うっせ。別に睨んでねぇし。」
「お前態度でけぇんだよ!大体てめぇなんでランドセルじゃねーんだ?おしゃれ野郎気取りかよ!」
「うらやましいならお前も買えば?ETUオフィシャルのエナメルバッグ。校則でもねーのにランドセルなんて背負ってられるかって。」
「いらねぇよ!ダッセー!お前ユカに昨日告られたんだろ?なんでだよ!不釣り合いにもほどがあるだろ!ふざけんな!態度でけーくせに、女にばっか色目使いやがって!」
「ったくうるせぇなー!そんで絡んできてんのか。お前がダセーよ。」
「なんだと!」

 突き飛ばしにかかられたので身をかわした。

   こいつらの動きは常に直線的で退屈しのぎにもならない
   この学校のサッカーチームはそれなりに強いらしいけど、
   ETUのジュニアのセレクションに通った俺の敵じゃねぇな

「別にただ立ち話してただけだよ。あれか?ヤキモチってやつ?へー、お前ってああいうのが好きなんだ?」
「テメッ!にやついてんじゃねぇ!」
「俺そういうの全然興味ねぇし、お前の恋バナも関係ねぇ話だけど。ま、頑張ってみれば?…ッ!やっべ!ともかく俺忙しいから今お前らの相手なんてしてる暇なんてねぇし!じゃあな」
「逃げんなよ!」

 絡んでくる同級生達が引き留めようとするのをよけて走り出した時、もうすでに赤崎の気持ちはETUのグランドに向かっていた。

「ったくまたサッカーかよ。ホントあいつサッカー馬鹿だな。」
「相手してんのもアホらしくなってくるわ。まあ、あいつがサッカー以外興味なことなんて考えて見りゃ最初からわかってたけどな。」
「そうだよな、帰ろうぜ。」
「…だな。」

 何事にも率直なので赤崎の口からはポンポンと角が立つような言葉が出てくる。だが、言ってる内容が的を射ていたり陰に思いやりが潜んでいたりするので不思議と必要以上に恨まれたり憎まれたりすることはなかった。たまにこうして口論のような出来事があったとしても、気持ちを中にためないでその場で感情を発散させて消化してしまうので、双方が根に持ったりグジグジと後を引くこともあまりなかった。直情的ながら性質は真面目で、運動が出来て頭もそこそこいい。シンプルながらも整った顔立ちは校庭で泥まみれになりながらも不思議と清潔感を漂わせていて。そんな赤崎は意外とクラスのみんなや先生達からの受けがよかった。

   *  *  *

   ETUは東京Vに比べると弱小だから
   セレクションに来る面子も大したことないなんて誰が言ったんだ
   ちょっとなめてたけどもっと沢山練習しねーと俺レギュラーも危ないじゃん

 そんなことを考えながらもサッカーが楽しくてしょうがない赤崎は、鼻歌を歌うかのようなご機嫌な気分で練習場まで走っていく。

 赤崎はETUのジュニアチームに入った頃からすでに、自分は天賦の才能の持ち主ではないという自覚を持っていた。多少のセンスはあっても、あくまでもそれは多少でしかないと言う意味で。それというのも自信満々に受けたセレクションで自分よりもメチャクチャうまい人と沢山遭遇した過去があったから。これは、赤崎少年の短い人生の中の初めての挫折のようなものだった。

 小さい頃から運動が得意でサッカー以外もなんでも負け知らず。ジュニアセレクションを受ける日が来るのをずっと心待ちにしていた赤崎親子は、受けたら当然楽勝で合格するものと考えてた。なのに、蓋を開けてみれば他の選手の技術に圧倒されて、赤崎は緊張のあまりろくでもないパフォーマンスを晒すことになってしまって。
 帰り道赤崎の父親はしょぼくれてうなだれている息子に対して、まだ結果が出たわけじゃないしな、それに他のクラブのセレクションだってあるし、なんてフォローするのが精一杯。父親は熱狂的なETUサポなのだから他のクラブチームの話を持ち出すなんてよっぽどのこと。赤崎は父の言葉に益々情けない気持ちになった。やっぱり俺そんなにひどかったんだな、とがっかりした。

 とてもショックを受けた赤崎はその時自尊心を大いに傷つけられ、その日寝ようと思ってもナカナカ寝つけない夜を過ごす。

 自分が井の中の蛙だったことを痛感し、こっそり布団の中で一杯泣いた。勝気で負けず嫌いで有名な赤崎だったが、本当はその分だけとっても泣き虫だった。それだけ感受性が強く感情の起伏が激しい性質だということなのだけれど、男が泣き虫なんて恥ずかしすぎて誰にも内緒にしていることで。だから昔はそれこそみんなの前でワンワンと泣くこともあったけれど、今ではこうしていつも一人になった時にだけ隠れて泣いていた。

 結局はなんとかセレクションに合格し、赤崎一家はほっと胸を撫で下ろした。とはいうものの。行ってみると赤崎が振り分けられたのはBチーム。その中のサブ。本当に当落線上のギリギリ合格みたいなものだった。なんとなくわかってはいたけれど、やっぱりどうしようもない屈辱を感じてイライラしてしまって。お前はプロなんて目指す価値もない、その他大勢だとはっきりと言われたような気分になってしまって。

 でもだからこそ、悔しくて。たまにはこっそり布団の中で一人泣いて、その後はどんな努力も惜しまなかった。

   いろんなアスリートが同じようなことを言っている、“努力は人を裏切らない”と

   才能のあるなしに関わらず、
   “努力”というのは夢を手に入れるための必須条件なんだ
   まずはそれがあって当たり前、なにもかも、そこからがスタートだ
   俺はまだ小学生で、今からスタートするところ
   下を向くのはまだまだ早いはず

 悔しさをバネにして、頑張った。そうやってしばらくして、ついに赤崎は無事Aチームの選手としてなくてはならない存在になることが出来た。届くつもりで届かなかった夢と願望。そういう、サッカーに対して一番最初に見た夢を、赤崎が自分の努力によって現実に変えることができた瞬間でもあった。これは今でも赤崎の胸に残る、諦めないで頑張って初めて結果を出せた出来事。初めて自分で勝ち取った強力な自負と自信でもあった。

 こんな風に、赤崎は夢を作ってそれを現実化するためにいろんな努力をするのがとても上手な子どもだった。毎日クタクタになるまで一生懸命練習に明け暮れる。この頑張りは苦悩を生むでない、何物にもかえ難い大切な喜び溢れる時間で。
 やれないことがやれるようになっていくこと。目に見える成果と自身の成長。そういう一歩一歩前に進む喜びに虜になっている少年だった。そんな部分が、赤崎の持つ素晴らしい才能の一つでもあった。そして叶うまで諦めない、そんな負けず嫌いからくる情熱が赤崎という人間を象徴するような、プライドの形でもあった。

   *  *  *

 そんな風に休み時間には校庭でボールを蹴り、放課後には練習に向かい、週末にはスタジアムやテレビの前で試合に熱狂する日々を過ごしていた。この頃の赤崎は生活のすべてがサッカーで出来ているようなそれさえあればご機嫌とでもいうような、いわゆる典型的なサッカー少年という風情で。だが、そんな能天気にも思える赤崎にも、実はちょっとした悩みがあった。

 赤崎の実家は家族揃ってETUのサポで、サッカーのうまい息子が“サッカー選手を目指す”と言うと、みんな諸手を挙げて応援をした。そして世界や代表選手になることを、日常的に当たり前のように夢みたり、それに向けて何が必要なのかを相談しあったり。ともかく常に家族でワイワイ大盛り上がりをしていた。

 なのに、一歩家の外を出てみると、そんな赤崎の夢をみんなが笑う。自分なりに真剣に言ってるのに、じゃー俺は赤崎見習って××レンジャーになることでも目指してみっかなー、なんて馬鹿げたことを言い出す奴までいる始末。活発な赤崎の周りにはヤンチャで照れ屋なタイプの少年達が多く、からかいや冗談など、乱暴で誹謗中傷紙一重のようなキツイ交流形式だったりするのも原因だった。

 赤崎が周りに真面目に将来の夢を目指して生きることの大切さについて説明する度にいつも場がしらけた。また始まったとうんざりした顔で見られることが多かった。家の外に出ると何故かこんなにも話が通じない。みんな本心ではどう考えているのかわからなかったけれど、熱血めんどくせー、なんて言うのがカッコいいようなそんな空気が漂っていた。自分を馬鹿にする風潮は赤崎には我慢ならない事だったけれど、最近では仕方がない事なのかなと思い始めてもいた。人は人、自分は自分なのだからと。

 でもやっぱり、そういう相手のパターンが決まってしまっていることはとても寂しい事だった。自分のこんな気持ちを、そうだね、って肯定してくれる人、応援してくれる人。なにもサッカーじゃなくったっていい、芸人でもロックバンドでもなんでもいいから、夢に向かって俺達一緒に頑張ろうぜ、なんて本気で言い合える人。家族以外でもそんな人が欲しいなと赤崎はいつも思っていた。だからいつでも自分の夢を語ることを辞めたりなんかしなかったし、勿論気持ちを腐らせて諦めるなんて論外な話だった。

   言っとくけど、
   俺らより年下でもスカウトされて海外行ったりしてんだぞ?
   サッカーに限らず、芸能界で働いてる奴もいたりするわけジャン

   大人になってしまうのなんてあっという間で
   準備する時間なんてどれだけあっても足りないくらいなんだ
   のん気なことを言ってるばっかじゃ、後から心底後悔するぞ?

 周りから馬鹿げた夢を見る幼い少年に見られていた赤崎は、その実同級生の誰よりも大人でリアリストだった。自分の未来を見据え、その時その時でベストを尽くして前に進む必要性をすでに知っていた。