あ、いいこと思いついた
椿の王子への告白で始まる愛犬2匹困惑コメディで椿目線ザキ+バキ。バキ→ジノ、ジノザキですが椿は喧嘩ばかり見ているのでジノザキ状態知らず。変態ラテン系王子が思いつくことは100%ろくでもない。毎回ただそれだけなんでオチもなく。王子はザッキーもバッキーも超大好き。つまり言いたいのは三つ巴じゃなくてみんな仲良し!ってことなんですよ。(え?なんか違う?)
「ちょっといいですか?王子。」
「なんだい?バッキー。」
「あの…オレ、王子のことが好きなんです!」
「ふ~ん、それはそれは。」
「ふ~んって…」
今日は勇気を出して王子に気持ちを伝えてみた。なのになんか変なリアクションされてしまって、次の言葉をどう続けていいのかわからなかった。
「飼い犬に嫌われたら嫌だもんね。ま、好かれててよかったよ。」
「あ…いや、そういう意味ではなく。」
「ん?どういう意味?」
「あの…なんというか、恋愛感情…的な…なにかです。王子。」
もう、自分でわかる。顔が熱い。きっとびっくりするくらい今のオレの顔は真っ赤だ。
「恋愛ねぇ…。キミって男が好きなの?」
「!!いや、そういうわけでは!!たまたま好きになった人が男だったってだけで!!!」
「なるほど、なるほど。」
なんだか、自分が思ってたのと全然違う。なんかこうもう少しドラマチックっていうかロマンチックっていうか、あとは軽蔑っていうか冷徹っていうか、そういうムードになるもんだと思ってたのに。のん気というかホノボノというか妙な感じだ。王子が何考えてるのかいつも以上にさっぱりわからない。
「念のためもう少し確認するけど、キミの今言ってるその恋愛感情ってさ。プラトニックなピュアラブ?それとも肉欲的ななにかなの?」
「!!!」
「一緒にお出かけしたいとかさ、ご飯行きたいとかさ。そういうのはすでにキミの願いは叶っちゃってるわけだし。今更そうやって告白みたいなものしてくる意味ない気がするんだけど。でも、キミみたいな子が男相手に欲情するのとか想像できないしねぇ。まあ女の子相手にもだけどさ。なんか童貞っぽい感じ。失礼だけど。」
「…オレだって…男…です。欲情とか…普通にしますし…王子にも、なんていうかそういう劣情があって…」
「へー、そうなんだ。キミ、ボクと寝たいの?」
「あ…あらためて確認されちゃうと…なんかそういうのやめてもらえると助かるんですけど…」
「そう?なんで?どこ目指してるのか最初に確認しておくのって大事じゃない?なんかキミ変わってるね。」
王子こそ…。
「なんか、意外だねー。そりゃボク、そういうことする相手は男女を問わないとこもあるけどさ。キミがボクに抱かれたいと思うなんて今まで考えもしなかったよ。」
「ちが!!王子!違います!」
「ん?」
「オレは、抱かれたいんじゃなくて…王子を抱きたいんです!!」
「!」
ハトが豆鉄砲を食らったように目をまん丸くしながらパチパチと瞬きをしている。オレそんなに驚かすようなこと言った?
「じょ…冗談だよね?バッキー?」
「え?」
「いや、ボクを抱きたいって話。」
「冗談じゃないです。冗談なんかじゃ…王子…。」
「……」
「…王子?め…迷惑でしたか?」
いきなり深刻そうな顔をし始めた。もしかして大変失礼なことを言っちゃったんだろうか。
「キミってさぁ…男性経験あるの?」
「いや…ないッス。」
「それでいきなりボクに?」
「……」
「ちょっと、ハードル高くない?それ。」
「!!ダ…ダメですか?」
「だっていろんなマナー的なこと、知らないでしょう?ボクとしたい人なんてそりゃごまんといるけど、抱かせた相手はホント数えるほどしかいなかったりするんだよ?」
恐縮しながら聞いてたけど、さりげなく王子って男も未経験じゃないんだなーと変な感心をしてしまった。
「なんか、バッキーにされるのって怖そう。」
「そ…そんな…オレ別に…」
「あ、いいこと思いついた。」
「え?」
「キミさ、ちょっと何人か男性相手に抱かれてきなよ。そしたらどんだけ大変なことか少しわかるようになると思うよ?何事も身を持って体験するのが一番さ。」
「な!そんなの無理ですよ!」
「そう?じゃ、せめて男性でも女性でもかまわないからちょっと後ろの経験積んできたら?それでも経験しないよりはマシかもよ。ま、キミの最初とかって相手は大変だろうけどさ。」
「そんなのも無理です!」
「我儘だなぁ~、だってボクやだよ、いきなり初心者に体預けるの。なんかキミ興奮したら無茶しそうなんだもん。」
「!!」
「ホントにしたいなら、事前練習くらい軽くやれるくらいじゃないとね。違う?」
「それ…さりげなく断ろうとしてるってことですよね…」
そうだ、王子は。きっとオレのこと嫌いなのに、嫌いって言えなくて色々難癖つけてるんだ。そう思うと急に悲しくなってきて、どうしていいのかわかんないくらいに落ち込んでしまった。
そうしたら王子が優しくオレの頭を撫でてきた。よしよし、と、子どもをあやすように。情けない気持ちだった。
「断ってるって思う?じゃ、いいよ、そういうことにしておこうよ。ね、バッキー?ボク達、今まで通り仲良くしていこう?」
「はい……」
* * *
あれからしばらく経って。オレの気持ちは未だ全然収まることもなく。むしろ好きだという気持ちがドンドン募ってしまってその度に悲しい気持ちになってしまっていた。王子はいつみてもキレイで、かわいくて、触りたくて。ドキドキする。もともとスキンシップの好きな人だから、あれから彼の言葉通りなんらかわりなく頭を撫でたり腰に手を回したりしてくるし。どうにかなっちゃいそうだった。帰りがけのロッカールーム。二人っきりになったのをいいことにもう一度思いを伝えることにした。
「王子!やっぱオレ、諦められない!好きです!」
「ふ~ん、それはそれは。」
「ふ~んって…」
この前と全くおんなじリアクション。王子。それわざと?
「あ、ザッキー。」
「!!」
王子のセリフでびっくりして振り向くと、後ろにザキさんが立っていた。ザキさんもオレと同じくらいにびっくりした目をしていた。
「あ!あの!!!」
「…なんだよ。」
「聞こえて??」
「お前が王子好きだって話?」
「!!」
聞かれてた!やっぱり!!!
「いいとこで。ねぇザッキー。相談なんだけどさ。この子ね、ボクと寝たいんだって。」
「ちょ!!王子!!」
「なに?バッキーそう言ってなかった?」
「…なんスカ…それ…マジかよ…」
「いや、あの!!えっと…その…そ…そう…です。はい…」
「……」
王子の一言でオレもザキさんも固まるしかなかった。なんでこの人こんな性格なの泣きたい。
「でね?寝たいっていっても、ボクのことを抱きたいって言うんだよ。驚きでしょう?」
「!や!!やめてください!!王子!」
「なんで?キミたち兄弟みたいなもんなんだから相談とか協力とかしあえばいいじゃない。でね?ザッキー。この子全然経験ないのにそんなことしちゃいたいって言うからさ。ボク正直怖いんだよね。だからさ、どっちがどっちでもいいから、キミらでちょっと練習してみたらどう?」
「な!!!あんた何言ってんだ!!」
「だってバッキー、他の男のつてもないみたいし、女の子もいやだっていうんだもん。ボクが直接教えてあげてもいいけど抱きたい相手に手ほどきされちゃうなんて初心者にはメンタル的に受け入れがたいとこもあるでしょ?その点、キミならバッキーもリラックスして挑めるんじゃない?」
「ふざけんな!」
「ふざけてないよ?だって可哀そうじゃない。でもボクやっぱりちょっと嫌だしさぁ。二人で心配だったらするときボクも一緒にいてあげるから。そしたら間違ってるとことかあったら教えてあげられると思うしね?」
「バカかよ!!!自分が最初が嫌だからって勝手にオレを練習台にさせようなんて考えんじゃねぇよ!いっぺん脳みそ水道で洗ってこい!!!」
「え~、いいアイディアだと思ったのに~。キミってバッキーへの愛が足りないんじゃないの?ザッキー冷たいなぁ~、ねぇ?バッキー?」
「……」
「あれ?バッキー?」
そう王子に声をかけられた頃には、オレはすでに泣いていた。王子とザキさんがいつもいつも口論している。でもオレは少しでも仲良くして欲しくて今まで一生懸命やってきたつもりだったのに。オレが王子に告白なんてしたせいでまた二人がケンカして。自分の我儘でこんなことになってしまったのが情けなくて悲しくて仕方がなかった。あと、当然だけどザキさんにとんでもないお願いを王子がしたのもショックだった。もうオレ、合わす顔がない。ザキさんゴメン…。オレ、もう恥ずかしくてどうしていいんだかわかんないです。
「あぁ~、可哀そう!ザッキーが泣かした~」
「あんただろ!」
「え~?違うよ?だってバッキーがかわいいから色々ボクだってそれなりに考えて…」
「それがおかしいんだよ!いいから椿!変態がうつるからちょっとこっちこい!ジュースおごってやるから!」
「うぅ…ザキさん…ごめ…ごめんなさ…」
「いいから!王子!あんたはもう帰れ!バカ!」
「ひどーい」
* * *
「うぅ…ぅ…」
自販機の前のベンチに二人。いつもみたいにザキさんがオレにジュースを買ってくれる。それでもオレの涙は止まらない。どうしてこんなことになっちゃったんだろう。好きになっちゃいけない人を好きになっちゃったからかな。オレは王子が好きだけど、それ以上に3人で仲良く話をしたりご飯を食べたりしていたい。なんだか全部自分で台無しにしてしまったような気分。
「あのな椿。お前本気で王子のこと好きなのか?あれ男だぞ?しかもそれ以前に変態だぞ?」
「うぅ……」
うんうん、と首を縦に振るくらいしかできなかった。
「そうか…。でもいきなり抱きたいとか。それ、あいつに言わされたんじゃないのか?お前の性格でそんなこと最初から言えるとは」
「ううううう!!!ザキさぁあああん!!」
ぶわぁっと涙が溢れて溢れて、そんな情けないオレの肩を抱いて、ザキさんがオレを慰めてくれる。
「オ…オレ!!ぅう…なんか…どうしていいのか…うあああぁん!!!」
「ったく、落ち着け落ち着け、わかったから。」
「うぅうううう…」
「お前、なんていうか…大変だな…。」
「うううわああああん!!!だって、王子!!!素敵で、オレ…オレ!!ッううう…」
「まぁ、あんな変態野郎だけど妙に魅力的なとこもあるからなぁ。椿もご苦労なこって。」
「諦めようとしたンス…。チームメイトだし。男だし。やっぱそういうのってダメだよなーって…うぅ……でも…諦めよう…諦めようって…それでも無理で…告白、2回目なンス……王子多分やだって…そんだけのことなのに…わざわざあんな…ザキさんと王子、ケンカしちゃって…うぅ…オレ辛いッス」
しゃべりながらもしゃくりあげるように息が詰まってしまう。ザキさんオレの言ってること、ちゃんと聞こえるかなぁ。スイマセン、スイマセン。ホント。
「ケンカはいつものことだから気にすんな。」
「でも…でも…オレ、二人は仲良くしてて欲しくて…なのに…ごめ…ごめんなさ…」
「いいって!あの人はあんな人なんだから!それよりオレはお前が泣いてるほうが辛えよ。」
よしよし、と頭を撫でてくれる。なんか王子がやってたのととても似てて。オレは益々涙が出てしまった。
「ふ~ん、ナカナカいいムードじゃない?!」
「あ!!王子!あんたまだ帰ってなかったのかよ!」
「ハッハー、その調子で頼むね?」
「何がだよ!早くどっかいけ!」
「失礼だなぁー。ザッキー、さっきボクのこと魅力的って褒めてくれてたのに~。」
「なッ!あんたいつからきいてたんだよ!ふざけんな!」
「や…やめて…やめてください、二人ともぉ…うぅうう……」
「おーこわ、じゃ、またねー。ごゆっくりぃー。」
ひらひらと手を振って王子は軽やかに帰っていく。残された二人はなんともいえない心境で。それぞれがそれぞれともに、心の中で、どうしてこんな人好きになっちゃったんだろう、と思ったのだった。
そう、この時の俺はザキさんもまた王子のことが好きだなんて、ちっとも気が付いていなかったのだった。
