お花結び

GIANTKILLING二次創作小説同人サイト

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楽しい、楽しい、3すくみ

バキ→ジノ→ザキ→バキの追いかけっこのお話。タッツミーは俯瞰で見て3すくみ把握済み。ジーノも把握済み。基本ジーノ現状を楽しんでいますが時々焦れるのでタッツミーはそれを見つけてはお説教します。「全員好きって言えないhtrちゃん」
バキジノザキはネタ系だと楽しいけど現実的になるとちょっと悲しい

        バキとジノザキ

椿→王子

「あの!…王子、スイマセン、今日は…」

 練習が終わった後、とても不機嫌そうにしている王子に向かって俺はどうしていいのかわからなくてただひたすら謝っていた。

「なにが?」

 自動販売機の前に置かれた固い椅子。それに座りながら俺を見上げる王子の目がとても冷たい。胸が痛い。

「あ…あの…なんかわかんないんですけど、俺…今日連携とかうまくできなかった気もするし、王子のやりたいこと通じてなかったかもしれないと思って…」
「ふーん、キミはなんにも心当たりがないのにただ出鱈目に人に謝ったりするタイプの子なんだねぇ。それってすごく…不誠実だと思わない?」
「え…どういう…?」
「頭下げときゃやり過ごせる、適当にその場を収めちゃおうってそういうことでしょ?違う?」
「いや!そんな…。俺、自分が鈍いからいろんなことがよくわかんなくて…。でもしょっちゅうそうやって知らないうちに人に迷惑掛けちゃうことが多くて…」
「世の中のすべての出来事が自分の行動による結果だなんて、やっぱり傲慢だよキミ。ハハ、ホント大したもんだ。」
「そんな!」
「なに?なんか反論でもしたいのかい?」

 王子は気さくで、まあ、ちょっと毒舌なところもあるけれど。基本的に優しくってとてもいい人なんだ。なのに、俺と二人っきりになるといつもこう。俺は王子のことが大好きで一生懸命彼になにがやれるのかってことを考えながら生活をしている。でもこうして王子はいつも俺を責める。俺のことを、いい奴だよってフリをした極悪人であるかのようなことを言う。この人、俺のこと、大っ嫌いなんだろうか、って思う時も沢山ある。でもそんなの嫌だなって、気持ちが暗くなる。

「俺、そんなつもりじゃ…。どうしたらいいんですか?王子。俺、よくわからない。」
「…そういうところからすでに傲慢なんだよ。なんでもキミは他人にお鉢を回して、自分は万歳して。失敗したら安易に謝ってそして忘れて。そうしてまた他人にお鉢を回すんだ。キミがどうありたいかなんてキミが決めることなのに、いつもいつも責任を他人に押し付ける。とても迷惑だ。ボクはキミのお父さんでもお兄さんでも、そう、キミの奴隷でも何でもないっていうのに。」
「奴隷だなんて、王子、俺そんなこと一度でも思ったことないです!」

 きらりと王子の目が光った気がした。

「じゃ…、なんだって思っているの?教えて?バッキー。」
「あ…」

 俺を見上げる視線。黒目が闇のように深くて下まつ毛がとても色っぽい。そんな目で見つめられては、俺の鼓動が乱れ始める。言葉が詰まって何も出てこない。どうしていいのかわからない。俺は王子が好きだ。親でも、兄でもない。ましてや奴隷でも何でもない。王子が好き。一人の人間として。選手として。そして、これはいえやしないこと。俺はひそかに王子を情欲の目で見てしまってる。目にかかる長い髪。美しい首筋。華奢に見えて実はしっかりとした硬質の筋肉で彩られた体のライン。あまりにも魅力的な王子。女性だけでなく男性の性欲までも激しく煽る、あまりにも淫靡なその存在性。

「…言えない?」

 なんて目をして俺を見るんだろう、王子。俺はその瞼にキスしてしまいたい。王子の長い睫をこの唇で堪能したい。こんなこと言えない。変なこと考えてるのを知られてしまっては、俺は王子に嫌われる。

「…ホント…ずるい男だね、キミは。」
「すいません、ずるいって言われても…わかりません、俺、わかりません、王子。」
「こんな言葉、知ってる?人として清廉であろうとするのが善で、自分を美しく見せようとするのが偽善。キミもボクも後者の偽善者だ。それではそこから抜け出せない。」
「ぎ…偽善者?」
「そう、偽善者。楽しい安楽な生活だ、ねぇ?バッキー?反吐が出るよ。」

「ジーノ!お前何やってる?」

 不意に監督の声がした。驚いた王子が泣きそうな顔をして固まっている。

「あ、タッツミー…違うんだ、これは…あの…」
「何が違う?」
「……」
「椿とお前は違う。いい加減にしとけ。勝手に自己投影して責めるのはやめろ。」

 見下す監督の目線、項垂れる王子の姿。こんな場面初めて見た。

「なあ、椿。ガキの我儘に付き合ってやる必要はねぇよ?こいつ馬鹿なんだよ。あんま深く考えんな。」
「そんな、王子が馬鹿だなんて…」
「なまくらなんだよ。なんでも責任を他人に押し付けてるのはこいつだ。なぁ?そうだろ?色男?」
「……」
「最近、ホントこいつ我儘で…勝手な事ばっかりいいやがって。保身と偽善がそんなに嫌なら、今すぐこの場でお前の中身、引きずり出しやってもいいけど?」
「やめて、タッツミー…」
「じゃあ、もうこんなオイタすんなよ?後輩相手に。さあ、椿に頭下げろよ。」
「……」
「おい。」
「あ、別にいいんです、俺、そんな…」
「ごめん…バッキー。ボクが悪かった…。」
「よくできました。ちゃんと仲良くしろよ?試合近いんだから。」

 監督はその姿を見てニッコリ笑い王子の頭をクシャクシャと子どものように撫でた。そして悠々と立ち去って行ったのだった。

「あの…、王子?なんか俺…すいません…」
「……」

 王子が眉間に皺を寄せて俯いている。さっき彼が言っていた言葉を思い出して慌てた。

「あの!違うんです、今のは!頭下げときゃやり過ごせる、適当にその場を収めちゃおうとかそういうんじゃなくて!」
「……」
「今のは絶対俺が悪かったと思うから。王子が話してることが俺よくわかんなくて、それで監督が誤解して…だから!」
「フッ…」

 王子が失笑している。俺は王子のことが好きなのに、彼の事を理解出来ない。悲しくなった。

「キミとボクは違うさ。わかってる。ゴメンね?バッキー。臆病で卑怯なのはボクだけだ。」

 そういってやんわりと俺の手を取った。少し冷たい指先。ドキドキして硬直していたら、不意に手の甲に軽いキスをした。

「お!王子!」

 びっくりして声が上擦った。王子はそれをみて益々苦笑いをして、こう言った。

「ホント、ゴメン。ボク達ある意味同志だから。この戦いに勝てるように、お互い精一杯頑張ろう?」

 意味の解らない俺を残して、王子もゆったりと優雅に立ち去って行ったのだった。

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