パーティをぬけだそう
セレブパーティに愛犬2匹は興味津々というブラックコメディ。ラテン系王子が可愛い二人の為に頑張るんですが、住む世界が違うことに気付いてません。閲覧注意 ×ラブなR18 ○モブエロ描写含むアダルト系エグ目なブラックジョーク
話の流れ上こんなになりましたが、本来はもっと抜け目ない男なんでこんなことにはならないでしょう。
今日も練習帰りに王子と椿と俺の3人で食事に出かけた。いつものお店に付いた途端、王子の携帯にメールの着信音。俺達と話をしながら返事をしても返事をしてもすぐまた鳴るメールに、王子は少し不機嫌になっていた。最後には相手も埒があかないと思ったのか、ずっと携帯が電話の着信音で震えっぱなしに。それを見て王子は忌々しそうに電源を切ろうとしていた。
「王子俺達のことはいいんで電話出てください。待ってますから。よっぽどでしょう?」
「いいんだよザッキー、こんなのただのパーティーのお知らせだよ。もう面倒臭い。」
「パーティ?ですか?王子?」
椿がそう質問すると、苦笑いをして答える。
「ホント、しつこいんだよねこの人。」
俺には八つ当たりするように忌々しげに話すのに椿には少し笑顔で返事をする。なんでいつもこの人は椿にだけ優しいんだ。なんかムカつく。そういう間にもずっと鳴りっぱなしの携帯。
「パーティーってあれッスかね。またセレブパーティみたいなやつッスか?」
「え!ザキさん、王子ってそんなのに行ったりするんですか?もしかして芸能人とか?」
「ああ、バッキー、確かに来るは来るかな?まず幹事が芸人だしね。今回はいつもは顔出さない××君とか○○さんとかも来るらしいし結構大きな集まりみたいけど…。どうしても来てほしいって人がいるからボクにも来いってさ。そんなのボクには関係ないのに。」
「ええ!!」
王子の名をあげた有名人は今どの番組でも引っ張りだこのピン芸人××と、日常生活から本名まで一切秘密のミステリアスな魅力で有名な超実力派女優の○○!俺と椿は顔を見合わせた。
「王子ってそんな人らともつながりあるンスか!」
「えー?つながりってほどでもないけど~。知人って感じかな。ちょっと連絡先交換頼まれてさ。たまに飲みに誘われたりするけど面倒くさくて。いるだけでいいからってしつこいんだ。」
「へぇ~、なんかデラックスな感じですねぇ~。俺なんて田舎者だからなんかあこがれちゃうなぁ、そういうの。」
「ん?バッキー、こういうのに興味あるの?なんか意外だね。」
「あ、いや、興味とか。なんかすごい都会っていうか…普通にテレビ出てる人とかが知り合いなんてすごいなぁー。」
椿が真っ赤な顔をしながら頭をポリポリ掻いている。なんかかわいい。俺も王子が業界に知り合いがいるのは知っていたけれど、こんなメジャーどころと懇意にしているなんていうことには驚いた。俺、あんな人らの誘いを面倒臭がって断るような人といつも飯食ったり寝たりしてんのか…。
「ふ~ん、なんかザッキーも興味ありそうな顔してるね?あれかな。キミらも一緒ならボクも少しは退屈しなくて済むかなぁ。よかったら付き合ってくれる?」
「えぇ!!」
俺と椿二人して声をあげてしまった。ドギマギして返答に困っている俺らを尻目に王子はシレッと電話に出て、連れ2人一緒なら参加してもいいなんて言い始めた。じゃ、いかない、もう行かないし二度と連絡してこないでよ、なんて押し問答。なにやら相手はとても困ってる様子で、王子が如何に行ってやる立場なのか思い知らされた。そうして話をしている最中に、ちらっと俺らのことを見て言った。
「どうする?行くならなんとかなりそうだけど。断るなら断るでもいいよ?次の週末。試合はホームだから予定がなければ一緒に行こうか?」
「あ!は…はい!」
「バッキーはOKってことだね。じゃあ、ザッキーは?」
「……」
ミーハーだと思われたくなくて、ちょっと憮然とした顔でなんとなく俺は頷いた。実は俺は芸人の××のことはめっちゃ好きだった。王子は、じゃ、3人ね、詳しくはメールでよろしく、と言って電話を切った。
「キミたちがああいったことに興味があるなんて、驚きだよ。ま、温泉宿貸し切ってやるらしいから、のんびり骨休めでもすればいいさ。ね?」
といって笑った。
* * *
当日の朝、俺ら3人クラブハウスで待ち合わせ。王子の車に乗って出掛けて、3人で一泊なんて初めてのこと。椿は意中の人(王子)とのお出かけが楽しみであの日から今日までずっと俺に向かってどうしようどうしようと興奮していたし、俺は俺でどうやって王子にバレずに××のサインをもらうか思案していた。あんなに誘いの連絡を迷惑そうにしていた王子も俺らが一緒というだけでとても機嫌がよさそうだった。
高速に乗って王子の愛車は快音を響かせる。この加速音が気に入ったのだとにこやかに。その音は確かに今まで乗ったどの車よりも美しい音色だった。街中を走るその音とはまた全然違うテンションの上がるような甲高い響きだった。
「いやー、それにしてもホント、キミらがあんなのに興味があるとはねー。」
「王子!言ってた温泉宿って予約も何か月待ちの超高級旅館じゃないですか!あんなとこ貸切ってすごいですね!俺、△△温泉自体テレビの旅番組とかでしか見たことなくて!古い温泉街なんですよね??」
椿が興奮しながら王子に言った。王子はバックミラーをチラッとみて微笑む。こいつは後輩だからといつも遠慮がちに後部座席に座るので、ホント体育会系だなぁと感じる。王子の車の後部座席は俺は座ったことがないけど多分前に比べると結構狭いと思う。
「まー、結構有名かな?ボクはよく知らないけどね。気にすることないよ。あの人らはみんな、もうそんなことくらいにしか金の使い道がないんじゃないのかな?」
「今日は結構、人、沢山来るんですか?」
「そうだね。今回はアレみたい。駐在大使とか外資系の偉いさんとかそういう人も呼んでるから温泉になったらしいよ?」
「へー、でも、王子、パーティーって具体的になにするんですか?みんなでご飯食べてお泊りするって感じですか?」
「ん?どうかな?聞いておけばよかったね。」
どんなパーティなのか不安なのか興味津々なのか椿の質問が止まらない。王子が笑ってる。きっと椿のことをかわいいなぁーなんて思ってるんだろう。王子は俺のこともかわいいと言うけれど、俺は自分のことは全然可愛げのない人間だし、かわいいっていうのはやっぱり椿みたいなのをいうんだと思う。かわいくってしょうがないのか、王子が一生懸命真面目に返事をしているのが伝わる。
「うーん、今回はやること聞いてないけど…前回は…」
「前回は?」
「あれだね、なんだろ、えーっと…そうそう!あれだ。」
「なんですか?」
「あのさ、貸切だからさ?みんなで大浴場で全裸で騎馬戦やったり?」
「はあ????」
あんまりにも想定外すぎることを王子が言い始めたので俺ら二人思わず声をあげた。
「男女混合だけど女性が上に乗ってるケースが多かったかな?やっぱり。」
「ちょ!ちょっと待って!王子!それおかしいでしょ?何言ってんですか!!」
俺はつい声を荒げてしまった。
「あと、宴会場みたいなところでは真ん中に通路作ってね?女の子があそこにお猪口挟んでだれが一番先にゴールまでたどりつくか競争したりとかね?ちなみに男はあそこにコップかぶせて歩くんだけどあんな条件でよく立つよね。負けたチームはお銚子をお尻につっこまれちゃったりするから逆に負けたがる人もいるんだ。」
「な!!!!」
「あと、なんだっけなー?あんまり興味なくて覚えてないんだよねー…」
「王子!それ冗談なんでしょ???」
「ん?冗談?なんで?みんなさ、贅沢してるとなにが面白いかわかんなくなってきちゃうのかね?ま、あとは必ずあるのはワカメ酒かな。寝かせた全裸の女の子にお酒注いでさ。あそこの毛がワカメだワカメだって笑いながらひとりずつ順番に飲むんだよね。それとド定番な女体盛りはやっぱり海外の人には人気。二つとも結構日本らしい趣があって面白いみたい。でもあれって素肌にお刺身乗せるからさ、いたまないのかなぁ?ねぇキミたちどう思う?」
ペラペラと滑らかに語る王子の顔はいつものように少し笑顔で、冗談なんだか本気なんだかさっぱりわかりもしない。
「いや…王子、引き返しましょう。」
「何言ってるのさ、ザッキー、ここまで来ちゃって今更帰れるわけないだろ?で、キミ達も参加したければ多分いくらでもやらせてもらえると思うよ?」
「いや、いや、いや!!!」
「ボクもうそういうの見飽きちゃったし全然面白くないけど、きっとキミたち最初なら楽しいかもね。」
「いや…そうじゃなく、ホント、あの…」
「芸能人とかすごいよ?テンションからして。本職は違うよやっぱり。」
「…もう…王子、俺…」
俺はともかく椿の声が震えてる。後ろで一人驚愕に陥ってるに違いない。ああ、こんなことなら二人で後部座席に並んで座ってやりゃよかった。王子にはそろそろ控えて欲しいところだけど、この人空気読めないっていうより読んだうえでワザとこうやってはしゃぐタイプだからタチが悪い!
「あの人らはフランクだから盛り上がってきたら最後にはあっちこっちでところかまわず皆セックスし始めちゃうしね。キミらもいざとなったらゴムとかそういうのだけは気を付けておいた方がいいよ?変な病気もらっても損だし。」
「あんた!そろそろいい加減に……」
「大丈夫。使う気はないけど一応ボク持ってきてあるから。必要になったら言ってね?」
「…いや…あの…」
「遠慮しなくていいよ?」
「遠慮じゃ…」
「あ、でもサイズとか大丈夫かな?」
「…そういうことじゃなくて…」
「ま、キミたちと一緒だって思うだけで退屈せずに済みそうだよ。」
驚愕の椿が可哀そう。自制してもらうよう王子の袖をツンツンひっぱってみたり足をトントン指で叩いてみたりしてみたけど馬耳東風で。むしろ俺の手を普通に握り返してニヤニヤしたりしてホント弱った人だ。勿論振り払ってやった。
「…ったくこの人は…俺頭痛くなってきた。」
「ザキさん…俺もなんかお腹痛くなってきちゃって…」
「二人とも大丈夫?もうすぐ着くからね?」
「…SAでいいんで一度降ろしてくれません?」
「え~?もうそろそろ出口だから無理無理。」
豪快な王子の高笑いと、
マセラティの快音が鳴り響く。
心地よいはずの快音が今ではまるで俺達の悲鳴のよう。
俺と椿の心の底からの懇願も
全く王子の耳には届かない。
誰か…なんとかして…
ほら、もうすぐだよ?
と言いながら王子はウインカーを出して高速を降りた。
あぁ…助けて…
* * *
宿について車から足取り重く荷物を運ぶ。相変わらず王子は上機嫌。受付には見覚えのある芸能人がずらりと並び、みんなは会費を払っているようだった。俺らはフリーで入れたので王子の顔を見ると、だってボク達は招待客だからね?と笑った。
部屋に通されてその広さに驚く。そして窓の外には美しい日本庭園風の風景が。室内風呂と露天風呂の両方があるこの部屋は、この高級旅館にあっても特に上質な部屋だということが一発でわかった。
椿も俺もあんなに具合が悪かったが、それをみて急に元気になってあちらこちらを探検し始めた。王子はそれを微笑ましそうに見ていた。こんなことでキミらがそんなに喜ぶなんて驚いた、ボクもとっても嬉しいよ、と言った。
そんな時、部屋に来客が。日本人じゃなかった。大柄の上品そうなその紳士は、ジーノ、ジーノと何語かわからない言葉で話しかけて、王子に熱い抱擁をした。王子は苦笑いをしながら、今日はこの子達と楽しく過ごしたいと思ってるんだ、と言いながら彼の行う頬へのキスを受けていた。きっとこの男は王子に熱烈に会いたがっていた人なんだろう。一緒にいた芸人が、今日は本当に来てくれてありがとうと半分涙目になりながら王子の手を握っていた。多分彼が電話の主だったんだろう。そして、その芸人は俺らにも本当にありがとう!と深々と頭をさげていた。俺ら二人は恐縮してしどろもどろになってしまった。
そうして王子はちょっと話があるからキミらはお風呂とか入ってきていいよ?フロント電話したら案内してくれるからね?といって彼らと一緒に部屋から出て行った。
“大浴場で騎馬戦”の話が頭をよぎったが、それでも高級旅館の大浴場って一体どんなところだろうかと興味があって。少々戸惑いながらも俺ら二人で行くことにした。
ドキドキしながらフロントに電話したら、早い時間だから今日はお二人が一番風呂ですね、と笑いながら案内してくれた。
「ザキさん、なんかすごい旅館ですね。俺こんなとこ来たの初めて。」
「俺も…。」
二人で貸し切るにはあまりにも広すぎる露天風呂に思いっきり体を伸ばしてゆったり浸かりながら話す。なんて気持ちがいいんだろう。さっきの話さえ聞いていなければ。
「ホントなんスかね。王子の言ってたこと。」
「うーん、あの人って冗談言ってる時とそうじゃない時とほとんど区別つかないからなぁ」
「で…ですよね…。俺、ザキさんと一緒でよかった。俺一人だったらもうどうしていいんだかわかんないとこでした。」
俺を頼りにされても困るけれど、しょうがないので照れ隠しに椿の頭をちょっと小突いた。
「ま、話聞いてる限り、王子ならそういうの率先して参加するタイプにはぜってー思えないから、ともかくあの人から離れないようにくっついてればいいんじゃないかな。てか、それ以外方法ないし。あの人のことだからやってこいって言いそうな気もするけど、そん時は戦うから。心配すンな。な?椿?」
「は…はい…。まさか王子、そんな全裸騎馬戦とか、やらせ…ないって信じてますし…ね?そうですよね?ザキさん?」
「お…おう!勿論だ。俺らは現役のサッカー選手だからな?あんまり危ないことはさせねぇだろ?さすがに。」
「ですよね?ははは」
風呂から上がり、旅館の浴衣に袖を通す。一点一点柄違いの肌触りの良い着心地のシャンとした浴衣で、普通の旅館の白っぽいペラペラのものとは大違いだった。そうして二人部屋に戻ったら、王子も部屋に戻っていて、彼は部屋付の温泉に入って上がってきたところらしかった。
「あ、王子、ここの入ったんですか。それなら俺も待ってればよかった。でも、王子の浴衣姿初めて見ました。なんか素敵ですね。」
「ありがと、バッキー。キミたちもよく似合うね?でも惜しむらくは合わせが反対だよ?右手が懐に入るように。逆だと死に装束になっちゃう。おいで?」
手招きをされて椿が王子の側に行って。王子が笑いながら帯を解いてなおしてあげている。普通こんなん間違えるか?と苦笑しながらちょっと二人を見て残念な気持ちにもなった。仲睦まじい姿を横から眺めている疎外感。なんだかちょっと寂しかった。二人とも好きなのに時々こんな気持ちになる自分も嫌だった。ヤキモチとかじゃない。なんだか自分だけ違う世界にいるみたいな心細さ。
そのまま3人、浴衣姿で部屋に用意されたお茶とお茶菓子を食べながら雑談。浴衣姿で急須を持つ王子が不自然なようでいて、逆にとっても自然でなんか面白かった。あ!王子!そういうのは俺が!と慌てた椿が湯呑を倒して、みんなで笑った。
そうしているうちに夕飯の時間が近づいてきて、おのずと椿と俺の緊張は高まっていく。それを見て王子がクスクスと笑う。
「なに?さっきの車の中でした冗談、真に受けてたの?やだなぁ。ハハハ」
「な!」
俺達二人は呆気にとられてしまったけれど、同時にかなりほっとした。王子は本当に人をからかうのが好きで。それでもこんな人の悪い冗談を言わないでほしい。この人が言うとなんだか本当にそんな世界があるのかと勘違いをしてしまうから。
フロントから呼び出しがあって行ってみると、一体何十畳あるんだろうという広い宴会場に百人は軽く超える人たちと、御膳には美味しい料理がずらりと並んでいた。前方には舞台もあって、かわるがわる芸人は小ネタを披露し、アーティストは歌を歌い、俺ら3人はそれを見ながら楽しい時を過ごした。椿は間近に見た芸能人に興奮し、俺は大好きだった芸人の××に酒を注がれて感動した。
そして、あとは部屋で飲もうか?という王子の提案で、部屋に移動して3人でゆっくり過ごすことにした。3人で笑うだけ笑って、昨日は試合で今日は回復トレの日だったこともあって、俺らはあっという間に眠りについた。
* * *
早く寝たせいか3人早く目が覚めた。朝食まで時間があるので、もう一回お風呂に行こうかなんて話をしていたら、王子が今度は部屋のお風呂を使ってみたら?ナカナカよかったよ?と言った。せっかくなのでそうさせてもらうことにした。椿が王子も一緒に入りますか?と聞いたら、ボクは今度は大浴場の方を使ってみるよ、といって笑いながら部屋を後にした。
部屋付にしては立派過ぎる露天風呂を堪能し、二人ご機嫌でお風呂から上がって、しばらくしたら王子が不機嫌そうに戻ってきた。でも俺らに気付いてパッと明るい表情になり、
「朝食は部屋でとろう。」
と言った。
昨日の場所でみんなで食べるって言ってませんでしたか?と尋ねると、ここで3人で食べたらおいしいなって急に思ったんだ、と答えた。王子は我儘だけどこの我儘は結構いい我儘だなと、俺と椿は喜んだ。著名人や芸能人がたくさん集まるあの部屋よりも、こうして3人で過ごす時間がどれだけいいものか、俺らはもうすっかり理解していたから。
* * *
渋滞の嫌いな王子に合わせて、早めにチェックアウトすることにした。なんやかんや楽しい一泊旅行だった。芸能人とかセレブとか。そういうのがキッカケで決まった話だったけれど、結局はこうして3人で出かけることそのものがすごく楽しくて。椿も俺も機嫌がよかった。多分こうして横で笑っている王子も。そんな中、歩きながらふと前方の廊下に目をやると人が倒れているようだった。
「あ、あの人たち、大丈夫なのかな…具合でも悪…」
椿が気にかけて声をかけようとして思わず立ち止まる。いたのは××と○○だった。浴衣の前をはだけて、絡んだ手足。なにやら不自然に体を動かしている二人は近づくまでもなくなにをしているのかすぐにわかった。戸惑う俺ら。
そして王子は纏うオーラを一瞬にして変化させて、足早に彼らに近づいていく。向こうの方から最初に俺らに感謝して頭を下げていた芸人が大きな声で王子を呼んで謝りながら走ってくる。絡み合う二人と王子の間に割って入って王子をとめようとしていたその瞬間、王子は恐ろしい勢いで壁を蹴りあげた。
「ねぇ、なにこれ、この体たらく!やるならバレないようにやれっていっただろう!?」
王子が恫喝した。こんな激高した彼を見たことがなかった。男も、廊下でさかっていた二人も、すっかりその場で固まっていた。
そして王子は何事もなかったかのように振り向いて、俺らに言った。
「さ、帰ろうか?」
まるで天使のように優しい笑顔の彼に戸惑う。
椿はそのままオロオロとしていた。
俺はたまらずこう言った。
「車の中の話…どこからどこまでが冗談だったったんッスか?」
「ん?なんの話?ボク車でなんか言ったかな?」
王子はそういって前に向き直し、寝乱れた二人の床に広がる浴衣を忌々しそうにチラリと横目で見て、バンッ!と大きな音がするほどに思い切り踏みつけて。車のカギをチャリチャリと鳴らして歩いて行った。
追いかける俺らの後ろで、3人はスイマセン、スイマセン、と震えながら謝っていた。
