お花結び

GIANTKILLING二次創作小説同人サイト

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二人だけに必要な世界

30巻のあのミニゲームの前日までの短いお話です。超個人的ジノタツ目線で見て一本書いてみたんですけども、かなり観念的な文章になってしまいました。この二人は出来ているようでいて出来ておりません。関係ない話ばっかり弾ませる、たまに食事に行く程度の関係性です。

        ジノタツ

「ね、タッツミー、今日ご飯一緒に食べない?」
「ん~…やめとくわ。悪いな。」
「うん、別にいい。じゃ、またの機会に。」

 連敗が続いて、ジーノと達海の二人の時間や会話は少しずつ減ってきていた。言いたいことがあるけれど言わない達海をジーノは理解をしていたし、達海はそんなジーノの気持ちを理解していた。

 この二人の関係は少々奇妙なものだ。

 監督と選手でありながら、どこまでも対等な部分があり、しかもそれぞれが兄のようであり、甘える子猫のようでもあった。独特なこの二人の関係性は、チームの失速をキッカケにまるで玉虫色のようにつかみどころのない混沌とした様相を呈していた。

 だから勿論、今このようにジーノが達海を食事に誘うことにも様々な意味合いがあり、達海がジーノの誘いを断るのもまた様々な意味があった。

 次の日。ふと二人の目が合う。そこには言葉がない。でも、その目にはお互いが語りたい伝えあいたいすべてのものが詰まっていた。食事に行こうが行くまいがたいした話ではなかった。なんとなく言葉ではないもので現状のそれぞれの思いを伝えあっていた。

   *  *  *

「なぁ。俺ちょっと今度わがままやるわ。」
「そう?お手柔らかに、タッツミー。」

 練習中のインターバル。達海とジーノは二人並んでベンチに座っていた。隣に座る真剣な目でピッチを見つめる達海に、ジーノは横目で見ながら眩しそうな顔をした。

 達海はチームの自発的な成長を待つだけ待って、結局これ以上待つのは無理だと判断した。ジーノは達海を待たせるだけ待たせておきながら、結局期待に答えられなかったことを感じていた。そういう意味で、チームが次のステップに進むためには何か大きなキッカケが必要なことを二人揃って認識し合っていた。

 キャプテンシーやチームを背負うという意識が殆どないジーノは、達海の決意に対して珍しくも自責の念を抱えていた。リスペクトしている監督の失望が自身の無力感を積み上げていくこの状況に苦笑いを浮かべる。嘘が上手なジーノなのでそんなことはおくびにも出さなかったが、当然達海はそんなジーノの状態を把握していた。

 ジーノは達海のわがままが何か具体的にはわからなかったが、無理をすることだけはなんとなく感じていた。でなければわざわざ自分に一言添えてくるはずがないと知っていたからだ。ジーノはこの展開でチームを愛している達海がテコ入れに何か無理をすることは仕方がないとは理解していたが、とても辛いと感じていた。達海は自分がやることはジーノに負担がかかることを理解していたが、チームを次に進めていくためにやらねばならず、そのことが辛いと感じていた。

 二人とも、明日が大きな博打を行う日になることを互いが話し合わなくても理解しあっていたし、それに向かうにはその前に二人の中に何かが必要なこともわかっていた。

「ねぇ、今日は食事に…」

 二人はほぼ同時にそんな声掛けを行った。お互い顔を見合わせて、そして笑った。

 特に具体的な話をしあったわけでもない二人は、今日、食事をしながら久しぶりに大いに深い意味のある、全く意味のない日常会話を繰り返すことになる。二人に今、一番必要なのは、そういうものだった。一見無駄な時間を過ごす中で、選手と監督のプライドをぶつけあい、互いにエールを送りあう。兄のように相手を甘やかし、子猫のように相手の膝に乗る。二人にしかできない二人だけのコミュニケーションを充分行って、そうして二人はそれを明日への糧にすることにしたのだった。

 傷を負いながらも欲しいものを手に入れるために、相手の覚悟と愛を抱き締めるために。

 今日の二人にはそんな糧が必要なのだった。

      ジノタツ