お花結び

GIANTKILLING二次創作小説同人サイト

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愛の絶望、祈りの愛

【11173文字】
ジノザキデーの時にちょっと書きかけて没ったもの。割れ鍋に綴じ蓋系のビタースイート。当人たちがOKならという意味でのハッピーエンド。ジノ鬼、ザキつん、一応?ちゃんと?相思相愛です。暴力はないですが人によってはDVっぽく見える場面もあるので注意。(表面上はどうあれ心理的には完全同意のプレイです)

        ジノザキ

 色々王子に玩具にされて、俺はすっかり俺ではなかった。
「ねぇ、嘘でもいいんだよ」
「嫌です。なんでそんなこと。俺は嘘が嫌いです」
「だからこそお願いするんじゃないか」
『俺』をわざわざ装うことが、そもそもすでに嘘なのだ。とっくの昔に俺は嘘つき。王子も全部知っている。なのにこうしてからかうように白旗を上げろと更に言う。
「嘘もあんたも嫌いです」
「だからそれがいいんだよ」
「何スか……それ……」
理解不能なはずなのに、わかってしまうような気もする。王子は俺を見る時に、何でそういう顔をするのか。

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「恋人に悪いとかないンスか?」
「そういう次元の話じゃない。僕はこういう人間なんだし、それを含めての関係だから」
俺を作り変えてしまった王子は、とてもクズな男と思う。自分本位な考え方と、引くほど強い独占欲と。紙切れのように軽い言葉は時々ナイフのように危険だ。
「君はタイプが違うよね。なのにこうして来てしまう。自覚があるだけ君のが悪い。悪いと思ってしてるんだから」
「……」
「自分の価値観を裏切って、それでも自分は悪くないって、言い訳するのに僕を責め立て……そういうところ、嫌いじゃないよ」
弱さと脆さを甘やかされて、抱かれてイくのが怖くて怖くて、泣きじゃくる俺をなだめすかして、俺は抱かれてまたイッていた。
「ザッキー、君を愛しているよ。君の狡さも、弱さも全部。来てくれるならなんでもいい」
王子は生粋の嘘つきであり、本音すらも嘘の方便、なぎ倒す力を持っていながら、全てを冗談で包み込む。何をどうすればどうなるかなど、利発な彼は把握していて、だから色んな物事をわざわざこうして複雑にする。
「うぐっ、ぁあっ、」
「好きだよザッキー、大丈夫。いいよ、声も我慢しなくて」
意地も張れるし虚勢も可能で、けれど本音を形にするというのは俺にとっては難しい。無力で弱い、それが本性。本音の蓋を無理矢理こじ開け王子はこうして優しく微笑み、惨めに震える姿を見ながら、愛しているよと心を犯す。君の全てを理解するよと、俺の全てを溶かしてしまう。
「背徳スイッチ?すごいねザッキー。今日のイキ顔、いやらしかった」
「……、……」
「かなり良かったみたいだね。出したの顔まで飛んじゃって」
直視も出来ない弱さというのは、強者にとっては何だろう。飴玉のように俺を嬲って、いつも薄く微笑んで、そうして守っているかのような、庇護や慈愛を感じてしまう。
「……え?ちょっと王子」
「はは、せっかくだからもう一回」
「待っ……今日はもう俺……」
「アスリートでしょ。頑張って」
俺の片足を高く掲げて、王子はそこを見下ろしながら、自分を握って刺激を施す。あまりに下世話で即物的で、その欲望が生々しい。
「ひっ、」
俺と王子を液で濡らして、もう両足が肩の上、し過ぎてジンジンしているところに再び王子がやってくる。そこは王子のための性器で、もう限界であるはずなのにもっと奥へと飲み込んでいく。
「ザッキー」
はくはくと呼吸の乱れる俺に、早くかゆっくりどっちがいいかと蛇のようにヒソヒソ囁く。今がずっと続けばいいのに。そんなことしか思えなかった。
「あ、……あぁ、」
「ほんと、いい顔しちゃってまあ」
「はぁ、んぅっ!あぁっっ」
魅入られるように王子にそそられ、無意識に腰を持ち上げていた。王子は小さく顔を歪めて、残酷そうな微笑に変化し、その後は常より激しく強く、俺を弱さと直面させた。悲鳴を上げる体力もなく、ただただ目から涙が、口から涎が、大丈夫だよと繰り返されて、愛の言葉を強要された。
「ザッキー全然聞こえない」
枯れた喉からは音など出なくて、もしくは今のこの激しさが言わせぬためのわざとのものか。
「だったらかわりに僕でイってよ。さっきみたいにめちゃくちゃイって?」
言葉なんて不要だと、暗に言われているような。何も言えぬ自分から全てが届いている気までした。王子は言葉を信頼しない。自分の言葉も他者の言葉も。だからそれを信じぬ俺を?そんなことを考えた。
「ふふ、限界早いねぇ、そういう素直なところ好き」
言葉にしきれぬ願いのような、それが俺達の本音であるなら。それが俺達の真実ならば、そうならいいと俺は思った。

*

「王子」
「ん?」
ただ呼んでみただけだった。まるでいちゃつく恋人同士だ。けれど俺達はそうではない。愛を願う素振りをしながらそれはしがない刹那であって、意味などないと足を止め、ただ諦めるように佇んでいる。

 俺は王子に作り変えられ、けれどそこにある真実は。

――本気で嫌ならしないよ別に

これが今あるこの日々の、本当の意味の真実だ。彼は他者を理解し過ぎる。そして容易に姿を変える。だからこれ(今の王子)は俺の形だ。多分そういうことだと思う。

――ねぇザッキー、そんな好き?

求められているというより、求めに応じられているのか。俺のものではない人を、俺が望んでしまうから。

「来たねザッキー。嬉しいよ」
「……」
「そんな顔しても、嬉しいよ」
足先が冷たくなるような不安が俺を食い荒らす。すると、馬鹿だね、なんて耳にヒソヒソ、大丈夫だよと抱き締めてくる。何一つ大丈夫なんかではない、俺達の日々がしばらく続いた。

*

 今ある世界にもう耐えられず、俺はその日逃げ出した。
「来ないの?わかった。じゃあいいよ」
王子はわかり過ぎていたので、引き留めることもしなかった。

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 昔王子が言ったこと。

――君には__があるからね、でも

それは何だと問うても王子は、そのまま笑うだけだった。

(なんだっけ、グリット、GRIT?えーっと何々?なるほど「やり抜く力」、「気概」「気骨」「勇気」「根性」?)
意味のわからぬ王子の言葉は、調べればお褒めのものばかり。いたたまれない気持ちになって一人でベッドで暴れたりした。
「んだよ、こういう……ああ、もう!」
王子はとても心得ている。今の俺には痛過ぎて受け止めきれない言葉であるのも。
「もう、マジで……なんなんだ……」
自分の矜持のようなもの。誇りとしたい意思と在り方。そういうところをしっかり見ていて、そこに俺は傷つけられる。
「泣くだろ、情けなさ過ぎて……」
王子はいつでも言葉を選んで、時々さらりと本質を突き、失言だったと黙ってしまう。紙の言葉をペラペラやるのは、届かぬように言おうとするから。あの鋭さを、その眼差しを、俺は既に知っていた。気概も気骨も根性も、もはや俺は失っていて、流されていると王子のせいに、付き合い切れぬと王子のせいに。昔は自分が好きだったのに。俺は随分汚れてしまった。

*

(王子……)
王子のことを考えてする。同じようには出来ないまでも、教えてもらったいい場所を彼に習って刺激する。
(寂しい、怖い……すごく痛い……)
自慰は体の仕組みの上で、ある意味仕方がないことだった。けれど今俺がしていることは、それとは全く意味が違う。自分の胸をいじくりまわし、あらぬところに指を挿し込み、シャワーのお湯を愛撫に見立てて、惨めな自分を慰めるのだ。俺は王子が好きだった。誇れる自分で居たかった。なのに俺は王子を責めて、逃げ出し一人で泣いている。馬鹿なことしかしてきていない。あんなに一緒に居てくれたのに。

      ジノザキ