愛の絶望、祈りの愛
【11173文字】
ジノザキデーの時にちょっと書きかけて没ったもの。割れ鍋に綴じ蓋系のビタースイート。当人たちがOKならという意味でのハッピーエンド。ジノ鬼、ザキつん、一応?ちゃんと?相思相愛です。暴力はないですが人によってはDVっぽく見える場面もあるので注意。(表面上はどうあれ心理的には完全同意のプレイです)
「あんたのことが嫌いです」
ある日呼び出しこう言った時、王子はいつものように笑った。
「そういうところも嫌いです」
「あいもかわらず威勢がいいねぇ」
「色々嫌で、嫌だから、あらためて文句を言おうと思って」
「はは、手短にとはいかなさそうだ」
まるで子供をあやすみたいに、とても優しい顔をしている。悪者にされるのを受け入れて、俺を甘やかしてしまうのだ。別れたあの日の電話口でもきっと同じであったのだろう。
「どうぞ?なんでも言えばいい」
こうされるのを知っていた。でもこうされるとは思わなかった。本来王子はこういう真似を受け入れる人ではないからだ。
*
「僕と一緒に自分も憎んで、随分苦しそうだねザッキー」
まるで心を手に取るように。遊ぶみたいに、からかように。それでも俺はわかってしまう。王子が思っていることを。
「僕が一杯虐めたせいだ。君はそうなるほかはなかった」
逃げ出す前から知っていた。知らないふりをしていただけだ。こんなの全然王子ではない、信じることなど無理だった。
「ごめんねザッキー。嫌だよね。君は何も悪くない」
切ないほどのその優しさで、瞳が、おいで、と言っていて、俺は耐えきれなくなって王子の肩に頭を乗せた。それを静かに受け入れられて、やっぱり王子じゃないと思った。人の心を理解して、情に流されることもなく、合理的で、利己的で、例えば自分で潰したとして、こうなることなどあり得ないのだ。
「王子……」
激しさのない穏やかなキス。顛末の全てを理解していて、今のこの辛さを理解していて、かわいそうに、と王子は言う。
「ごめんね。こういう人間で」
償うみたいに頬ずりされて、俺の胸は張り裂けそうで、それを堪えて口から出るのは。
「クズだ、あんたは」
いつでも俺は悪態ばかりだ。その度自分が嫌になる。もうやめたいと考えていた。考えているだけだった。
「うん」
と返事をする人は、そうさせていると言わんばかりに、まじないのように甘く囁く。
「そうだよ、僕はクズだよザッキー。ちゃんと僕もわかっているよ」
何が悲しくて俺達二人は、そんな話は俺らはしない。本当は、なんてことも言わない。言いたくないのに文句を言って、聞きたくないのにそれを聞く。
「まごうことなきクズだよ僕は。君の言うことが全て正しい」
言葉なんて、行動なんて、俺らを表現し切れもしない。俺が王子に思うこと。王子が俺を思うこと。
「欲しいものをあげるよザッキー。それが欲しくて来たんでしょう?」
すでにその指先は少し熱くて、そのことが何より王子を伝える。
「うんと憎んでいいんだよ。僕は手段を選『べ』ない。君がどんなに辛くても、自分が良ければそれでいいんだ」
静かで冷たく、なのに熱い。俺も自分も引き裂くような。
「逃げ出せなくて気の毒に。君をとても憐れに思う」
*
「僕を忘れるの早いねここは。こんなにきつくなっちゃって」
俺は王子を求めてしまう。王子に俺を求めて欲しい。
「ほら2本しか。全然だ」
憎んでいいと王子は言って、思い知らせるように俺の体を。それでも王子の吐息が熱くて、俺の心は今日もまた。
「おや、こういうのも好きなのかい?こんなガチガチに、出そうじゃない」
痛い。やめろ。ふざけるな。口では何でも言えること。こんなめちゃくちゃにされながら、それでも体はあっという間に王子のものに変化していく。愛とかどうとか、気持ちとか、そういうことよりただ欲しい。壊れてもいい、捧げたい。
「ええ?乱暴?してないよ。乱暴っていうのは、こういう感じ」
俺は王子に抑えつけられ、半ば無理矢理犯された。手足も体も自由を奪われ、ねじ込むように挿れられた。焼かれるような痛みと快楽、こういうことは初めてだった。
「カラカラになるまで出させてあげる。随分溜まっているよねきっと」
強く握られ擦られて、同時に中も激しく突かれた。まるきりレイプのようだったのに、俺は嬉しくて泣いていた。言葉に乗らない王子の心が痛みとなって体に伝わる。こんなに『俺ら』は寂しくて、苦しみの中にいるのだと。
