お花結び

GIANTKILLING二次創作小説同人サイト

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Beside you

【3098文字】
先日ラジオで「あ~よかった」が流れておりまして、懐かしいなーと思いつつ浮かんだ小さいお話。ざざーっとほぼ一発書きの雰囲気物です。タイトルも歌詞から。英語だ……絶対すぐ忘れそう……。飼い犬の背伸び頑張りストレス過多的なバッシバシ張りつめられた神経を、素知らぬ顔で緩ませ癒す策士の飼い主という感じ。

        ジノザキ

「やっぱり君、うちの子になりなよ」
王子の口癖はこれだった。あまりに何度も言い連ねるので、聞き流し方もこの頃雑だ。
「ザッキー、ねぇ、駄目かい?」
「はいはい、天気がいいですね」
「もう。随分冷たいなぁ」
口を尖らせながらもご機嫌で、いつも呆れて笑ってしまう。
「で、今日は何食わしてくれるんスか?」
「ふふ、何だと思う?」
俺達は二人で食事に行ったり、オフにも一緒に過ごしたりする。大きいテレビや面白い場所、美味しい料理に綺麗な景色、色んな餌をぶら下げて、こまめに誘ってくるからだ。
(何がそんなに……?)
仕事柄、親睦が深まることはいいことずくしの話でもある。王子は特殊な立ち位置の選手でもあり、利用しない手などもない。
「はは、今日の店、結構良かったね」
「そッスね。店主さんも面白かった」
王子はいわゆる中堅どころ。年齢的にもタイプ的にもセントラルにふさわしき実力者。けれどもかなりお気軽で、後輩どころか自分の犬も、面倒をみるようなタチじゃなかった。
(そうなんだよなー。甲斐甲斐しいように見えるけど、現実は好きにしているだけだしな)
支払いを自分でしてしまうのは、帰りのごちゃごちゃが嫌だから。連れていくのは、行きたいところ、自分が気になる食べたいお店。自分勝手のマイペース、それでも誰かと一緒に居たくて、俺は丁度いいのだろう。就労時間がほぼ同じ、用事があれば断る気性、そういう部分も楽なのだ。
「ね、寄っていくでしょう?」
当たり前にそう言う笑顔に、俺も普通に頷いた。
「ただいま。どうぞ?」
「おじゃまします」

 確かに気楽な関係だ。彼は周りが思うより、我儘というよりサバサバしている。言いたいことははっきりと言い、無下にされてもニコニコとして、喜怒哀楽は確かにあるが起伏自体はそれほどなかった。
「先、シャワー浴びちゃえば?」
「ああ、そうッスね」
灰汁が強いのに空気みたいで、邪魔にもならず、寧ろ便利で。
(……なんかマジで楽なんだよなぁー)
洗濯かごに服を投げ入れ、洗剤などをセットする。あとで王子が上がったら、まとめて回してしまう予定。
「おかえりー」
「じゃあ王子、次どうぞ。それ、あと俺がやっときます」
「ん、サンキュ」
タオルにパンツに靴下などなど。順に畳んで片付けていく。お風呂上がりの王子のためにコップに水も用意する。俺が飲むのとは別の種類の、右棚手前の常温のもの。
「おまたせ。ああ、ありがとう」
感謝の言葉が自然に出るのは、育ちの良さを表している。毒舌なのに愛されるのは、こういう資質によるのだろう。
「うちの子になっちゃえばいいのになぁ」
「嫌っスよ、ここ結構距離ありますもん」
「その分買い物は便利だよ?」
「この辺りじゃコンビニくらいッスよ。俺が行けるの」
「はは、一日でも早く大活躍して給料上げてもらいなよ」
コクリと水を飲み干しながら、意地悪そうに微笑んでいる。
「じゃあもっと点決められるパスくださいよ」
「いいよ?ここに来てくれるなら」
王子はいつもふざけてばかりで、堂々巡りの話もお得意。どこまで本気で、冗談なのか、笑って俺もお話半分。
「午後練の前日とかは来てるでしょ」
「週の半分もないじゃない」
「じゃあおまけで遠征も。あんたが追い出さなきゃ問題ねぇし」
「もう」
「ははは」
差し伸べられる両手も自然で、優しいキスにももう慣れた。王子に俺は丁度いい。それは俺にもよくわかる。
「もっと一緒に居たい」
「いや、十分じゃないッスか?」
「結構君って淡白だよねぇ」
「毎日会えてる。十分です」
「うん。まあ、そうだけど」
移り気な心を捕まえるのは、ほどほどの渇望と期待感。どうにかできると王子は考え、攻略タイムを楽しんでいる。
「待っ……王子」
「ん?」
「……あの、そんな、に、されたら……」
「じゃあもう、ベッド行く?」
彼の『丁度いい』であるために、俺は今を努力する。楽に流され、甘言に乗り、ゲームが終われば台無しだから。

「ねぇ、やっぱりおいでよ、ここに」
抱き締められて、キスされて。
「もっとシンプルでいいんだよ。いいこと、いっぱいしてあげられる」
身包み剥がされ、肌と肌。
「いいことされるの、好きでしょう?」
ぬくもりはすぐにも汗ばむ熱さへ。
「おや、もう?なんか今日、すごいねぇ」
もう色々無駄とは思う。思うけれど、それでも俺は。
「毎晩こうしていられるよ?」
耳介をくちゅくちゅ舐められながら、暗示のように囁かれ、くたくたになるほど愛されて。
「君のいない夜は寂しいよ」
早くイってと懇願するのに、逆に更にまたイかされた。
「ねぇ、ザッキー。寂しいよ」
何がそんなに、と何度も思い、それならこのまま閉じ込めて、なんて馬鹿げたことすら考える。
「君と……ずっと、こうしていたい」
何より後戯が一番甘く、いつもとろとろにされてしまう。そうして更に王子は言うのだ。
「僕のになって、お願いザッキー」
知っててわざとか、天然なのか。すでにこの腕の中が俺の居場所で、どこからどこまで冗談本気、王子は戯れを繰り返す。
「ずっと、ずっと、一緒に居たい」

*

「ふふ、いっぱいしちゃったねぇ」
俺の髪を指でクルクル遊びつつ。
「あのですね、王子?」
「ん?」
「ぶっちゃけた話しますとね?どんなおしどり夫婦でも、これ以上のペースでガンガンやってりゃ体のひとつも壊しますって」
「そう?」
「と思います」
「うんと優しくしてるのに」
「まあ、でも心掛け程度じゃないですか?」
「んー、それなら僕も言わせてもらうけど」
「はい?」
「それもこれも君がうちの子じゃないからじゃない?毎日一緒が当たり前なら、逆に今より落ち着くよ」
「そうッスか?」
「うーん、多分……じゃない、かなぁ」
「……うわぁ、歯切れ悪っ。全然あてになんねぇわ……」
「とりあえず試してみればいいんじゃない?」
「駄目駄目、その手には乗りませんから」
「えー」
この部屋の隣の収納ルームの、一角はほぼほぼ俺の私物で、それでなくても歯ブラシ、髭剃り、専用の食器、下駄箱の靴に充電器、すでに俺のものだらけのこの家。
(つか、十分住んでいるようなもん……)
だらだらとしたピロートークで、取り留めもない王子の画策。口を尖らせて、ふふふと笑って、時々欠伸で、一緒にふんわり眠たくなって、抱き合いながら今を楽しむ。
「じゃあ、仮に一緒に住むとして、週一程度で納得します?」
「週一!?わぁ、それはどうかなぁ……」
「今は泊まる度がっつりですもんねぇ」
「やめてよ言い方!そりゃあ、たまにはあれだけど、基本ほどほどな感じじゃない?」
「寂しいだとかなんとか言って、どうせやりたいだけでしょ王子」
「違うよ、違うっ」
子供みたいに頬を摺り寄せ、文句ありげに唸ってる。
「どうだか?」
「もう、ザッキー!」
「はは、嫌いになりました?」
悔しそうな顔をするので、笑って頬にキスをした。
「さあ、さあ、そろそろ寝ましょう、王子。めちゃくちゃされて俺もヘトヘト……」
髪を撫で、にっこり笑って、その胸元へ顔を埋める。
「ふふ、じゃあ、説得の続きはまた明日だ」
「はい、また明日」
「見てなよ?寝ながらいい案思いつくから」
「いいの見つかるといいですね」

*

 普段は毒舌紙一重。二人でいるとベタ甘で、大切そうに俺を抱き締め、幸せに浸り王子は眠る。大好きなんだ、愛しているよ、そんな言葉は少ないけれど、手放しにじゃれつくこの物言いが俺の心を包み込む。
 もはや意味などほとんどないこの会話は、俺ら固有の表現であり、面白くってとても楽しく、このまましばらくこうしていたい。
「ふざけないでよ、僕本気だよ?」
今日も今日とて、明日も同じに、この距離感が当然の、俺らの日々はまだまだ続く。今だけこうしてと思う俺に、何度も王子はずっとと囁く。

      ジノザキ