ベターハーフ
【8446文字】
昔ジノザキデー用に書いていて、いくらなんでもお祝いにこれは特殊過ぎるとボツにしてお蔵入りしていたお話。個人的には大好きな雨ネタを設定に入れた気に入っている話です。雨ネタはもう多分書きやめるまでこすり続けるゾ!
以下、みもふたもないネタバレ閲覧注意事項
飼い主が人外で途中で死にます。何年かしたら番犬も死にます。飼い主も悲惨なら飼い犬も気の毒。大いに人を選ぶお話。悪趣味な人以外読まないほうがいいです。
朝帰りかよとからかわれ、俺は来たなり不機嫌だった。
「そういう言いがかりつまんねぇッス」
昨日と同じ服だと言われて、そんなわけがあるかと怒った。
「ったく、なんだよ。服がどうとかみんな暇かよ」
俺はイライラしもしたが、なんだかやけに気分は良かった。頭がジンと痺れるようなねっとりとしたベリーの甘さ。それでいてふわふわ浮くような酩酊に似た心地の良さと、ガーゼ?に包まれているような眠さとだるさとぼんやり感。
「あ、王子」
彼の姿を見かけた俺は、小走りで近づきこう言った。
「あれから昨日、平気でしたか?」
小首をかしげて苦笑するので、
「いやだから、王子昨日具合悪くて、運転無理そうだったから」
そこまで言って、あれ?と思った。声を掛けてその後俺は?
「大丈夫だよ。ちゃんと帰った」
甘い感覚に気を取られつつ、再び俺は、あれ?と思った。意識が遠のくような気がした。
「ザッキー?」
名前を呼ばれてはっと気づくと、練習の片づけが始まっていた。
(は?なんで……?俺って今までどうしていたっけ……)
なんだか少し変だと思った。時間の感覚が少しおかしい。そしてこんなに雨降りなのに、王子が帰らずまだここにいる。
(……?)
「早く帰って眠るがいいよ。少し疲れているようだから」
言われてみればそんな気がした。急に体が鉛みたいで、立っているのも辛く感じる。
「ほら。何も考えず寝るのが一番」
言われた通りに帰ろうとして、俺は目覚ましで目が覚めた。
(……は?)
今日は一体何日だろう?外はまだまだ雨続き。なんだか頭がぼんやりしている。痺れるようにねっとりしていて、それが
「……なんだっけ。そうだ家出る用意しねぇと」
きっと王子の機嫌も悪いと、のん気なことが頭に浮かんだ。早く天気になればいいのに。そんなことを考えた。
*
それは夢。甘い、甘い、幸せな夢。
「なんだか全然くっつかないね」
執拗な愛撫とキスの感覚。誰かに自由にされているのに、それがとても気持ち良かった。
「んー、これってどうすればいいんだろう」
誰かが俺に入り込み、弄り倒して微笑んでいる。俺で遊んでいるのだろう。色んな秘密も覗かれた。小さい頃におねしょをしたこと。迷子で泣いてしまった夕方。上手くなれなくて暴れた日。自慰を初めて知った思春期。女性を知らない体なことも、彼への不可思議な感情も。褒めて欲しくて、笑って欲しくて、もっと言うなら。でもどうするべきかわからないこと。興味深げにしげしげ見られて、まるで検印するかのようにいちいち触られキスされた。
「やっぱり食べてしまおうか……」
軽く甘噛みされた時、いっそ全部と切に願った。
「そんなことしたら死んじゃうよ」
全然いいと思うのに彼は俺を窘めた。
「駄目だよ、それを願っては駄目。君の意思ではないんだそれは」
だったら半分だけでもいいから、俺は心の底から願って、でも彼はそれも許してくれず、
「やめて、戻してあげたいんだよ」
と、しくしく泣いて雨を降らせた。俺も一緒に悲しくなった。ごめんなさい、と一緒に泣いた。
