お花結び

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文学妄想お題ったー詰め 8

【16289文字】
文学妄想お題ったーで一日一ジノザキ。2017年8月の4本分。実際にはお題ったーのお題が重複ばかりなので、日本語用例検索とかから適当な単語を入力してチョイスしています。

あなたは梶井基次郎作「ある心の風景」より「視ること、それはもうなにかなのだ。自分の魂の一部分あるひは全部がそれに乗り移ることなのだ」でジノザキの妄想をしてください

モロッコの青い街「シャウエン」
テレビCM 「ハワイはおまかせ」

<SS>

 ある日、玄関を開けると、外が青い街になっていた。
「ちょ……」
驚いてドアを閉めて、家の中を見回してみる。
「いや、ほら。普通にここ、俺の家だろ?」
今から自主練に行くつもりだった。シャワーを浴び、朝食を済ませ、着替え、カバンをひっつかんで。いつものように玄関を開けて、そして今それを閉め、動悸の胸を押さえ、眉をひそめて佇んでいる。
(あれか?俺まだ寝ぼけてんのか……?)
首をかしげて、恐る恐るもう一度ドアを開ける。やはりそこには異国の青い不思議な街。ドア向こうに続く人の気配のない一本道はとても細く、階段があり左右に曲がりくねって見通せない。路地の建物のそそり立つ壁には、掛けられた植木鉢からツタが茂る。そよそよと風がそれを穏やかに揺らし、高く澄んだ空から降り注ぐ日の光が、路地に濃い葉影を作る。美し過ぎるその光景に、思わずふるりと身震いをした。

*

(あれ?)
一瞬、青空に浮かぶ一筋の雲のような、真っ白い服の人影を見た。見覚えがあるような、懐かしいような、それでいて不可解な胸騒ぎのするそれを、見た途端すぐに見失った。
「おい、ちょっと待っ……!」
自分で大声で叫びながら、あれはなんという名前だったか考えていた。知らず駆け出し、辺りを見渡す。
「……?」
出ると、気の遠くなるような空から注ぐ日差しの強さが思った以上に目に突き刺さる。ぎらつく太陽には温度がなくて、さらさらの肌がまた心細い。沢山のドアに、数えきれない窓。時々風にそよぐ蔦の葉が腕に触れて、ドキリと体を竦ませる。
(どこだ……?まだその辺にいるはずなのに)
路地を曲がり、坂道を下り、階段を上がり。また下りて、曲がれば、行き止まる。
「……!っと、あっぶね」
街並みはそこを境に、広がる途方もない海の中に没していた。壁もなく、柵もなく、急激に深海へと続くそれを見てぞっとする。下り坂というよりもむしろ落下に近い。ここはおそらく街の外れで、この世の終わりのようなところだった。
「……なんだよここ」
陸と海を分ける波打ち際には、小さい波の子供が生まれては消えて、おいでおいでよと足先を誘う。目からの刺激がこれほど強いのに、音は目の前の波のものですら聞こえてこない。潮風の匂いも感じられない。
 呼吸の苦しさに、鼓動の乱れを感知した。怖くなって後ずさりして、再び紆余曲折の街を歩きだす。
「おーい、どこにいるンスかー?」
それでも、目印すらみつけられない似たような街並み、アップダウンの多い見通せない道。人影はあれきり見当たらない。
「おーい、おーい」
そうして、ようやく現状に気がついたのだ。いや、気付いていたことから目を逸らしていた。
「……つか、俺の家どこだよ」
自分はどのドアからこの街に来たのか。自分がそれを見失った以上、どうすることも出来なかった。
「これ、すっげぇヤバくないか?どうすんだよマジで」

*

トントン
「ごめんくださーい、ちょっといいっスか?」
ガチャ、ガチャ
「……ッチ、きりがねぇな」
どのドアも当然のように開かなかった。もう何時間もこうしているはずなのに、太陽は書き割りのように動かない。
「……疲れた」
下りの階段を見通す場所で、へたりこむように腰をおろす。気にすべき人目もここにはないので、道の中央に陣取った。
「せめて、あの時カバンだけでも持って出てりゃあな……」
両腕を後ろについて足を放り出し、空を見上げて独り言。
「連絡手段も財布も水分も何一つ手元にないっつう……まあ、金があったからってここで意味があるのかはわかんねぇけど」
そんな時、ふと後ろに何かの気配がして、思わず振り向き目を見開く。
「!?」
そこには全身白い服の男。強い日差しの逆光のおかげで、冗談みたいに顔が見えない。
「――、―――?」
身振り手振りがやたら大きいおかげで、光の角度がやや変わる。その際、口元だけチラリと確認できた。何かを言いながら笑っているようだが、この音のない街の中では聞き取ることなど出来なかった。
「……あの、あんたは一体」
こちらの言葉も聞こえないようで、首をかしげ、ちらりと手を振って立ち去っていく。
「いや、ちょっと!行くなよ、まだ話が!」
慌てて立ち上がりそれを追っても、すぐそこの路地を曲がった途端また見失った。今、手掛かりはあの男しかおらず、再び必死に駆け回る。足は棒のようだったが、よろめきながらも捜索を続けた。名前もわからないその人を、大声で呼びながら泣いていた。
(待っ……行かないでください……)
すっかり枯れてしまった声。
「どこだよ、ここ……どうすんだ、俺……」
太陽は未だ沈む気配がなく、波の音は聞こえない。

*

 電話の振動音で目を覚ました俺は、半分以上話が頭に届いていなかった。
『でね、すっごく驚いちゃって』
「……」
『ザッキー、聞いてる?』
「……聞いてないっス。王子、時差考えてくださいよ、時・差」
『あんまりそっくりだったからね』
(さらっと話無視してんじゃねぇっつうの……)
『――、――、……かなって』
「……」
『――、……、ともかくこっちは、~~』
(ねみぃ……)
『ねぇ、……ッキー、~てよ、ひどいなぁ』
(……、――ってマジでめんどくせぇ……)
『―っちゃったの?仕方ない、―……たらまた、……って、~~~?』
「……ッス……」
『またね、チャオ』
「……」

(話したいなら電話じゃなくてちゃんとこっちに来いっつうの)

 あれは、会いたいと思う気持ちが見せた夢。

 そうして、おそらくこの電話もまた、声が聞きたいと思う気持ちが俺に見せた夢なのだろう。

 夏の中断期はとても短い。

 それでも、気の遠くなるような日々だった。


「ただいま!楽しかった」ってジーノがお土産話をした際に「いや、そんな馬鹿な」とビックリする崎。付き合っていないので一緒にバカンスに行けないの、ちょっと寂しくてかわいそうですね。「今度一緒に行こうか。同じ顔の人に会うと何かが起こるというじゃない?」「……俺を殺す気ッスか(ドッペルゲンガーと顔を合わせると死ぬ伝説を信じているマン)」