お花結び

GIANTKILLING二次創作小説同人サイト

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ニワトリ、ヒヨコ、君と僕

【11444文字】
猛禽1作目。ぬくめ鳥のお話を何本か書いていますが、これは鷹が憐れなひな鳥に思いを寄せたら?というIF発想で書いたお話です。ジーノ視点版。猛禽の残酷的描写?が3ページ目に出現してます。飼い主は猛禽の自覚が殆どないためかなり困惑。世界観はプリズムの姉妹品? 偽バッドエンド気味な引きになりましたけど、次の赤崎視点版にてドタバタコメディ?寄りな形で完結予定。

        ジノザキ ,

 足の甲に口づけをする。彼の献身、僕への思い、いつも僕は感動していて、それをどうにか伝えたかった。彼は大きなニワトリヒヨコ、深い感謝はギブを生むので、堂々巡りに成り果てる。
(ザッキー、ザッキー、大好きだ)
わからぬようにどう捧げるか。素知らぬふりで何を祈るか。それが僕の命題だった。可愛い可愛い僕のヒヨコは、今日もぐちゃぐちゃに愛されて、腕の中で寛ぎ眠って、十分過ぎるほど満ち足りながらも、まだまだ抱き締め、暮らしたい。
(ねぇ、ザッキー。どうすればいい)
気まぐれないたずらでこの手に掛けて、日々信頼を重ねていって、彼はヒヨコで、目覚めを待って、僕は今彼をどうしたい。可愛い可愛い大きなヒヨコ、これがなければ息すら出来ない。

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 彼と一緒に眠りについて、とても切ない夢を見た。ヒヨコが一匹、風の中。おやおや今にも死んでしまう。
『王子、王子、こっちッス』
それはとても大きな手。見覚えのある僕の好きな手。それはヒヨコを風から守り、そのぬくもりが命を救った。良かった、良かった、何事もなく。それでも僕はそれが怖くて、必死になって目を閉じていた。風はいつまで吹きすさぶ?あの手はいつまでヒヨコを守る?これはただの夢だと祈った。夢の中で必死に思った。何の意味もない、ただの夢だと、死に掛けのヒヨコなど知りはしないと。

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 落下したみたいにガクンとなって、僕はいきなり目が覚めた。
(え?夢?……何?今の……)
なんだか急にとても不安で、でも腕の中にザッキーが居て、
(ああ、ここはいつものこの場所だった……)
と、そんなことにホッとした。
「……ん、」
もぞもぞ彼も起きかけたので、寝かしつけるのに背中をトントン。体越しの振動がとても心地よく僕にも響く。
(ザッキー、僕の可愛い子……)
庇護を知らない憐れなヒヨコ。感受性が鋭くて、ギブとテイクで、知恵が回って、論理が好きで、知ったような顔をする。
(僕の大事な、僕だけの……)
僕を守っている気で生きて、ともかく僕に献身で、エッチで、思いが純粋で、いつでも僕を考えている。いつしかそうしてこの僕までも、ヒヨコであるかのようにも扱う。ママゴト遊び。可愛い遊び。なのに時々調子が狂う。馬鹿げた話と、笑ってしまう。さっき見た夢、どんな夢。幸せな夢。恐ろしい夢。記憶力はない方なので、眠って起きれば忘れるだろう。
「……ううん、もう無理。もう勃たねぇ……」
(えー?何いやらしい夢見てるの?ザッキー)

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 ヒヨコ、ニワトリ、僕と君。瓢箪からはどんな駒。やがて、そのまま眠りについて、やっぱり目覚めた僕はもう。
「昨日、君寝言うるさくて」
「はぁ?それは王子でしょ?」
「なんで?夢とか見てないよ」
「嘘です、ゴニョゴニョ言ってたし」
「それこそ夢でも見たんじゃないの?なんか、寝ながら発情してた」
「なっ」
奉仕のターンじゃない時に、その手の話は厳禁で、時々わざとやらかして、怒鳴られることもよくあった。
「もう。昨日はあーんな可愛いかったのに」
「まだ言いますか!わかりましたよ!絶対、あんなの、もう着ねぇ!!!」
「まんざらでもない顔してたのに」
「いいから一回黙ってろ!」
僕のヒヨコは爪が凶器で、手痛い思いをするのも楽しい。彼の甘噛みはとても痛くて、それが僕を安心させる。可愛い可愛い僕のヒヨコは、僕でなければ手に負えないと。
「って。そう素直に黙られちまうと……なんか気持ちが悪いんスけど」
「そう?じゃあちょっと手、見せて?」
「いやだからなんであんたはそう話がコロコロと」
「いいから、見せてよ」
「嫌っスよ。なんでそんなこと」
「あ、じゃあいいや」
「はーー?なんだよ!ほら、どうぞ!?」
「いいってもう。引っ込めて」
ヒヨコの面倒は大変ながらも、その手間暇も嫌いじゃなくて、鳴き声だけはしっかりニワトリ、耳をつんざくけたたましさで、この喧騒が、賑やかが、とにもかくにも。
「さあ、とっとと用意しねぇと」
「あれ?もうそんな時間?」
「今日も別に待ちませんから」
「わかっているよ。いつもじゃないか」
「そう、あんたの支度はいっつも遅い!」
そうして怒鳴って、笑って、泣いて、痛々しいほど、ああ、本当に僕のこの胸まで痛い。
「はいはい、全部僕のせい」
「その言い方、全然自分のせいだと思ってねぇな」
「僕なりの自己管理の結果だし。然るべき時間には間に合わせるし」
「それ、間に合ってるうちに入りませんよ」
「ほらほら、喋っていると遅刻をするよ」
酸欠みたいに毛穴が開く。この頃、少し調子がおかしい。君と居ると、君がいないと。
「うるさいなぁ、わかってますよ!じゃあ!先に行きますからね!?」
「うん、寂しいけどまた後で」
可愛い可愛いうるさいヒヨコ。首から耳から、真っ赤に染めて、そのうち大きな音を立て、僕の家から出ていった。
「ふふ、ああいうのを、トサカに来る、とか言うんだっけ」
姿形は立派な雄鶏。そう考えて笑ってしまった。僕の愛するニワトリヒヨコは、空を飛ぶのか。羽ばたくか?青い空は彼の居場所か。それを思うと苦しくなった。ふらふら、ソファで少し休んだ。僕には翼があるのだろうか?導く者は誰なのか?眩暈までする。横になる。眠れはしない。彼は出掛けた。
(ザッキー、エンジンかけた頃かな……)
一人になるのが駄目になり、誰かじゃ何も意味がなく、これではあまりに本末転倒、僕は人知れず悪戦苦闘。
(あのヒヨコ、パワフル過ぎるよねぇ……腕の中だけじゃ窮屈そうで……)
それは祈りで、諦めで、思えば刹那をわかってはいて、引き寄せるように手に入れて、彼の優しさをこの身に受けた。論理の海に沈むのは僕。簡単なんかになりきれない。それでもまだまだ腕の中。だから僕もあやふやに、少しずつだよ、と笑って見せる。
(怠いな、練習……行きたくない……)
一人で、静かに生きてきたのに。静けさだけでは、もう物足りない。