能ある猛禽の潜む草原
【11719文字】
猛禽3作目。赤崎入団4年目頃?オリンピックは離脱選手の代替召集、Aは対象外。海外移籍出遅れ組。国内では若手世代としてはそこそこ、中堅としてはまだ少し弱い、の位置づけ。ジーノは幸せ極楽とんぼ状態に拍車、インタビューでは以前にも増して面白おかしいことをペラペラと。サッカー芸人達からは「選手にあの顔であれやられたら」とちょっとした目の上のタンコブ扱いされています。
「王子ちょっといいッスか?」
後半開始のその直前、赤崎がジーノを呼び止めた。
「あの人交代なかったですね」
前半、ボールのない場所で、ほんの一瞬の仕草であった。でもそれをジーノはすぐに気付いて、ほぼ同じタイミングで赤崎も。
「んー、ベンチはわかってないのか、それとも本人の希望かねぇ?」
「……わかりませんね」
口元を隠しながらのヒソヒソ話。試合再開まで時間はない。
「少し言いにくい話ですけど」
「ん?」
「あれってやったの腿裏でしょう?だから注意して欲しくって」
「ふふ、なんだい?その言い方。わざとつっかけに行くとかなんとか、僕がそういうタイプに見える?」
絶対に勝たねばならない試合で、戦う術は色々あった。感じる力は、種類を増やす。秘匿はジーノの特性でもあり、可能性はなくはなかった。
「いや、俺が言いたいのはそういうことじゃ」
「じゃあ、わざわざなんだろう?」
ニヤニヤ笑ってジーノが言うので、憮然としながら呟いた。
「あの人、性質の悪いプレイはしないけど、怪我の影響で思わぬ感じで、危険な瞬間があるかもしれない。だから気を付けて欲しくって」
「……」
「変なファウル食らったら、王子の大事な……あの、人の話聞いてます?」
ジーノがお腹を押さえて笑っているので、周りがみんなこっちを見ていた。
「あれ?あ、いや、違くて」
「あはは」
「ちょっと王子!やめてくださいよ目立つでしょ!」
赤崎がギャンギャン言っている姿が、大型ビジョンに映し出された。解説者まで、『何の話をしているんでしょう?』とコメントなんかをする始末。そこまで注目を集めておいて、ジーノはけろりと笑い終わって、赤崎に淡々とこう言った。
「過保護だよねぇ、君ってば。ホント、いつも呆れるよ」
そうしてチョイチョイと指先で呼び、そっとその耳元に囁いた。
「それも僕にだけ。もう、大好き」
「!?」
赤崎が目を白黒させてる間に、後半戦が始まった。
*
「やめてくださいよね!ああいうの!」
「何をそんな怒っているの?」
うさぎのようにサラダを食べつつ、ニコニコしながらジーノが言った。
「わかってるでしょ!言わなくたって!」
「わからないよ。エスパーじゃない」
ニコニコがニヤニヤに変化して、赤崎は目を吊り上げて怒って言った。
「あんなのされたら、走れなくなる!」
「ええ?」
「男なんだからわかるでしょう!?走りにくくなって困るから!」
首から何から全部赤くて、ジーノは嬉しくて仕方がない。
「どうして?なんで?教えてくれる?」
「あんたは敵か!?味方でしょ!?」
「多分そうだと思うけど」
「じゃあ、マジああいうの勘弁しろよ!生理現象は止めらんねぇから!」
「?」
「スケベ振り撒く場所考えて!お願いだから!この通り!」
フォークを握ってフルフル震えて、とうとう下を向いてしまった。それをじーっとジーノが見つめて、やがて静かにこう呟いた。
「それは僕の台詞と思うよ?」
何が?と赤崎が顔をあげると。
「そういう……こんな御飯の最中……エッチな話、やめてよね」
そこには鋭い爪を持つ、発情寸前の猛禽がいた。
