お花結び

GIANTKILLING二次創作小説同人サイト

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だから、つまり、そのことは

超鈍感なザッキーと、奥手(というより酔狂?)なジーノ。
そんな出来てないジノザキが二人で食事に出掛けてダラダラしゃべっている話。系統としてはシリアスでもコメディでも甘々でもない、淡々とした微糖?こんな風になんの起伏もない日常の姿を妄想しているのすっごく好きです。

        ジノザキ

Cioe’(チョエ)~つまり

「しかし困ったなぁ」
「プレゼントの事?」
「はい」
「なんか適当でいいよ。こういうのは気持ちが大切なんだから」
「そりゃそうなんだけど。せっかくならって」
「そう?じゃあ贅沢言っていいんなら……ボクが欲しいものおねだりしちゃってもいいかな?」
「?」
「ん?」
「いや、さすがに恋のキューピッドとか荷が重いっすよ?」
「あ、それは全然期待してないよ」
「じゃあ、なんですか?俺らあんま金ねぇし。服とかとても……買えても小物くらいしか。でもそういうのって好き好きがあるしなぁ」
「そうだね。いらないね。キミら趣味悪そうだし」
「悪かったな」
「冗談冗談。キミらに用意してもらうならそれなりにその意味がないと」
「また俺らのことパシリに使う“パシリ券”寄越せとか……馬鹿な事を」
「それこそいらないよ。そんなのなくてもどうせやってくれるもの」
「俺はもうやんねぇぞ!今年からは椿担当だ!」
「フフフ、口ばっかり」
「ったくタチ悪!」
「否定しないんだ。ホントいい子だね」

「ねぇ。じゃあさ?ボクに捧げてくれる?ザッキー」
「え?」
「プレゼント」
「だからそれが何かを聞いてるんだけど」
「何って……キミがそういうこと、きっと凄く恥ずかしくて、きっと苦手なことはよくわかってる。でも言っていい?」
「な、なんですか?」
「ボクへの気持ち、なんだよね?だからありったけのその気持ちを込めてボクに」
「あの……急に手、握らないでくれませんか?」

 ジーノがやんわりと右手を掴むので、振り払うわけにもいかずにドギマギしながら赤崎は言った。日頃からジーノはベタベタと人に触りがちで、赤崎は男のこういう部分を苦手としていた。

「王子?」

 両手で赤崎の右手を弄り人差指を一本立てさせて、それからジーノはそれをゆっくりと握り込んだ。そしてそのまま右手を自分の目の前に高く掲げる。

 空間に天井を指す赤崎の人差指。ジーノはその手を両手で大切そうに包みながらうっとりとした視線でそれを眺めていた。その表情があまりにも端正で美しく、そしていやらしさすら漂わせていたので赤崎の鼓動はドンドン激しくなっていった。赤崎がベタベタされるのが苦手なのはこのせいだ。チームメイト達とならどれだけだって抱き付いたりなんだり平気なのに、ジーノには妙に性的なものを感じさせられる瞬間がある。なんというか、仕草というか、ムードというか、今のしていることとかも指を握り込んだり、変に意味深に感じてしまう。つい、そういうものをこの男の中に見てしまう自分の疚しい様な感覚も不快だった。この人はみんなと同じチームメイト!女ではないし、今は恋愛相談に乗ってる友人みたいなものですらある。赤崎はジーノに触れられる度にちょっとした混乱に陥ってしまう。

「取りあえず……」

 頭の中で余計なことを考えていたのと、ジーノの声があまりに小さいものだったので聞きとることができなかった。

「え?」

 思わず赤崎は聞き返す。

「だから、ゴール」
「ゴール?」
「うん。取りあえず一人一本ずつ?だから2点?」
「……」

 もう、赤崎は自分の今の頭の中の妄想が恥ずかしくて恥ずかしくて、どうにかなってしまいそうだった。なんて自分は馬鹿だ!と殴りたくなってしまう心境ですらあった。でもジーノは淡々と自分の話を続けている。

「ボクも嬉しいし、キミ達も勿論嬉しいだろう?当然それで勝ち点3取れればチームもサポーターもみんな喜ぶ」
「あの……」
「簡単、でしょう?お金かからないし」
「い、いや!簡単って!マジかよ」

 ボンヤリしていてやっとジーノの言っている意味がわかってきて赤崎はビックリする。今さりげなく言ったジーノの望んだものは確かに素晴らしいものではあったが、椿はともかくスタメンを確約されているわけでもない自分からしてみれば一体いつ実現できることやら。

「難しい?じゃあ、達成できたらボクへの気持ちがそれだけ強いんだって思う様にするよ、フフフ」
「難しいわけねぇだろ?そんなことくらい楽勝に決まってんじゃねーか!いいンスかね?後悔しても知りませんよ?そんな程度の……」
「そう?じゃ、もっと?」
「あ、いや!まあ、椿はチキンだし無理かもしれねぇから!取りあえず最初は……そんなもんで、うん」
「フフ、じゃ、よろしくね?二人とも」

 茶目っ気たっぷりにジーノは笑い、ポンポンと赤崎の頭に触れて立ち上がる。伝票は当然既に彼の手の中にあり、赤崎はそのことに更に慌ててしまうことになる。

「駄目だって!王子、今日は俺の番だろ?」
「あれ?そうだった?」
「そう!」

 お会計は順番交代。これは赤崎の提案した二人の中のルールだ。年俸に差はあれど、この会食は先輩後輩のそれではなく、あくまでも対等なチームメイトとしてのもの。そういうことにしておきたかった赤崎の、この時間を心地よく過ごすための最低限の譲れない約束だ。

「なんかわかんなくなっちゃうんだよねー。このルール」
「誤魔化そうとしても絶対駄目だから!」
「わかってるよ、忘れちゃうだけだってば」
「こういうことは忘れちゃ駄目なとこなんだよ!ったく、好きな女にもどうしてもこれだけはっていう大切な部分があるだろ?ちゃんと気を付けないと」
「それ言われると返す言葉もないよ」
「物事にはいい加減にしていいところと駄目なとこがあんだよ!」
「わかったから許して?」
「わかればよろしい」
「フフ、ありがと。大好きザッキー」
「だから!」
「おっと」
「先が思いやられるわ」
「気長によろしく」
「ったくしょーがねぇなあ王子は。サッカーはあんだけ器用なのに」
「そうだね、ボクも自分の事こんなに不器用とは思ってなかった」
「ま、完璧な人間なんていないから。居てもキモいし多少なら人間らしくていいッスよ」
「ホント?嬉しい」
「多少ならね!」
「うん、気を付けるね。美味しかった。今日は御馳走様」
「はいはい、出て出て」

 レジの前で会計を済ませて店を出る。ほんの少し雨が降っていた。傘を持たない二人は一緒に肩を竦め、笑ってそのまま走り出す。駅まで数分。赤崎は次の試合のゴールのことで頭が一杯で、そしてジーノの頭の中はそんな赤崎で一杯で。

 街行く人々は傘の中で、穏やかな幸せに包まれている二人に気づく者は誰もいなかった。

      ジノザキ