ジノザキDay2014ジーノ編
【77054文字】
後半戦のジーノ視点バージョン。赤崎編はお題消化がテーマでしたが、こちらはすれ違いがテーマの意地悪?オマケ物語です。ラスト、ハッピーエンドではありますが途中えげつない(強姦未遂)描写がございます。R18設定としましたが人によってはR18Gかも?黒い展開が苦手な方は閲覧熟慮願います。10/17~10/31連載
15. quindici/クインディチ
極当たり前の様に隣に眠る彼を見て、ボクがどれだけ幸せな思いに浸るか当の本人は全く理解をしていない。彼はあの夜ボクを捕まえたと言ったけれどその実、彼の方がボクの腕の中に勝手に飛び込んできてボクに捕まってしまったのだ。全く想像もしていない事だった。
(ボクがキミの虜になって、キミもボクの虜になったってことだね。フフ、なんて素敵なんだろう。今こうしてても信じられない。でもキミはちゃんとボクの横にいて……ボクはそんなキミから今でもこうして目が離せない)
彼の目はとても不思議だ。目を開けているとその存在が全く感じられない彼の睫毛は、眠る時その目元に繊細なその姿をこうしてひっそりとのぞかせる。クセのあるボクのとは違って、彼のそれは真っ直ぐで細い。健気な睫毛が玩具の兵隊のように、ワーワー塵と闘いながら毎日ボクの大好きな彼の瞳を警護しているのを想像する。
(フフ、可愛いなぁ)
そんな風にボクが寝起きの時を一人で過ごしていると、ようやく彼もお目覚めの時間。
「おはよ、ザッキー」
チュ、とボクが当たり前の様にキスをすると、彼はやっぱり今日も頓狂なリアクションをする。そんな姿がとても愛しい。ボク達が二人一緒に過ごす事は、ボクのみならず彼にとっても未だ信じられない話なのだろう。そんなところまで一緒な事がボクにはとても嬉しいのだ。
「キミはいつまでたっても、そうなんだから」
「だって、寝起きに王子とか何回やっても慣れるわけが」
「なんか失礼じゃない?その言い方。人の事お化けかなんかみたいに」
そう言ってまたボクはキスをする。朝の挨拶、啄む様な。徐々に物足りない思いになって素知らぬ顔で行為を深めみては、彼に怒鳴られるのもいつもの儀式。そんな戯れも当然楽しい。けれどたまには朝から甘い一時を、と勿論思わないでもないわけで。
(なんと言っても今日は記念日なんだからさ)
彼に出会ってボクは時々、疑似的に彼の目を通して世界を見ていた。なんて事のない空。どうって事のない偶然。彼は小さい幸せを見つけるのに長けており、その幸せの見つけ方を、ボクも今彼を真似る事で次々に学んでいるところなのだ。
例えば彼と一緒のドライブ。彼と一緒の散歩。彼と一緒の買い物に、彼と一緒の食事。そして、勿論、二人きりの夜もまた。過ごす相手が違うだけでその一つ一つがボクの中で代え難き宝物になっていく。
そう、今までそれらの行為の全ては暇つぶしの材料だったのだ。その中でも、ボク自身にとって無価値ながらも戦略上の重要な道具の一つとして活用していたのが所謂記念日というやつだ。
(楽しむ心は理解出来ないけれど、それを利用するのは楽しめる。まあ、そんな感じだったんだよね)
何気ない今回の数字遊びは、勿論最近彼と15がとても好きになったボクの単なる一つのお遊びだった。ふざけた事をやって、彼に笑ってもらえでもすればボクには十分なお話。思いついた当初はそんな感じだったのだ。
ところで15が好きになった理由の話だけれど、キッカケはこうだ。
彼の15の数字をモチーフにしたキーホルダーを見つけた時、ボクは初めて数字そのものを愛するという行為を彼の行動から学んだ。
(へー、15。そっか、キミは自分の番号を大事に思っているんだね)
ボクの10への執着とは違う。カルチョにおける10には10という数字以上の深い意味と重い歴史があるからだ。彼は15の、その数字のままを自分の記号として愛していて、それまでボクにとってこの手の他愛無くも子供じみた行為は嘲笑の種だったのだが、彼が同じ事をやると人としての本質的な美しさとしてとても好ましいものに思えた。捻くれたボクではとてもじゃないけど真似出来ない馬鹿げた事。でもその瞬間からは素敵な事。同じ事の見え方が変わる。
「可愛いね(キミが)」
ボクが言葉を省略した事で、彼はキーホルダー自体を褒められたのだと喜んだようだった。まあ、あれからもう何度も目にする事になった彼の鍵の15のモチーフは、結局ボクのお気に入りになった。わざわざギラギラと輝かずとも、その飾らなさの中にある端的なまでの造形上の美しさは、まるでボクの思う彼そのもの。
そしてキーホルダーによって15に意識を留める事になったボクは、15にまつわる日にボク達二人にハッピーが生じる事に気が付いていくようになる。
(勿論ジンクス的なものを担ぐ趣味なんてボクにはない。けれど、そんな遊びが楽しくなったんだ)
あれから15日の試合には負けが付かないし、時にはどちらかがゴールを決めて、そして、そして何を隠そう、ボク達の初めての夜も15日。
だから数字遊びのネタばらしの前に、彼がキラリと光る10の数字の燻し銀の小さなチャームを取り出した時には、ボクは本当に驚いた。今日をボクの誕生日か何かだと錯覚したのだろう。
(なんて可愛いんだ、健気に贈り物を考えてくれていただなんて!)
その瞬間、ボクの中に初めての大切な記念日が誕生した。だって彼はボクにチャームの形をした彼の愛をボクにくれたのだ。ボクを思い、ボクの喜びを想像し、足を運び、購入し、そしてボクにこうしてプレゼントを。それもまた他愛無くも子供じみた、つまり本質的な美しさを持つ彼にしか出来ない行為だ。
(あの不器用で照れ屋な子がってね。キミっていうタイプの子がやるから凄いんだ、こういう事。なんていうかギャップ?きっと用意して渡すまでずっと恥ずかしかったんだろうなぁ。キミの時間、どれだけこのチャームに、つまりボクに盗まれちゃったのかな?フフフ、可愛いったら)
数多の贈り物をしてきたボクはその実、彼女達の心を理解出来ないしする気もなかった。反対にプレゼントを受け取ってもそのこと自体を嬉しいと感じた事が殆どない。自分の欲しいものが手に入るか入らないかが焦点で、基本的には自分で選んで買うのが合理的だったし、もらうからこそ意味があるなぞ、ついぞ。そう、微塵も。
(なんか今、ボクやっと彼女達の気持ちがわかった気がする)
日々些末なものにさえ幸せを見出す生活に慣れ始めるにつれ、くだらないと思ってきた事の数々が、実は重大な意味を持つものだったという事実に気付いていく。なるほどこうして自分は沢山のハッピーを取り逃してきたのだ。今の幸せは全部全部彼のおかげ。彼はボクにとってなんでもなかったものを次々に素敵なものに変える力を持っている。
「今日は一日中ずっとこうやってこの子達もくっつけて一緒にいさせてあげようか。ボク達みたいに」
遊びの記念日が特別の記念日へ。
ボクが捕まえて彼が捕まって、そうやって二人、ずっとずっと一緒に居たい。
上手に自分の喜びを表現できた時は、必ず彼がそれを知る。ボクの幸せに照れ笑う表情がたまらないボクは、思いの丈を全部込めて、ありったけのキスを彼にしたのだった。
後日ボクは彼に言われた。
「王子ってホントしょーもない事でそんなにはしゃいで。マジ子供みたいッスね」
一瞬唖然とした。けれど彼はボクの知らないボクを知る男なので、
(ああ、そうか。彼から学んだと思っていたけど、自分で気が付かなかっただけで元々そういうところあったのかな?)
と素直に思った。だからニッコリ笑って、子供だよ?と彼の言った通り背後から抱きつきやんわりと甘えてみせれば、
「ホント、あんたは俺の前だといっつもそうだ」
と彼も顔だけこちらに向けながらまた笑って、いつもの通りボクに大人しく抱き締められてくれたのだった。
(ん?なんかこのやり取り、既視感が)
(もしかして、蛇の巣でじゃれ合ったあの時の事、ザッキー憶えて……?)
フフ、まさかね。
