ジノザキDay2014ジーノ編
【77054文字】
後半戦のジーノ視点バージョン。赤崎編はお題消化がテーマでしたが、こちらはすれ違いがテーマの意地悪?オマケ物語です。ラスト、ハッピーエンドではありますが途中えげつない(強姦未遂)描写がございます。R18設定としましたが人によってはR18Gかも?黒い展開が苦手な方は閲覧熟慮願います。10/17~10/31連載
Grand Finale
明るい朝の陽ざし。ボク達二人のチャームを机に並べた後、たっぷりとキスを堪能したボク達は極自然に再びベッドルームに足を運ぶ。
そこで過ごす時間は互いの気持ちが高まり過ぎて、まずは本当に言葉もないままただひたすらに。そして次第にお互いの全てを慈しみあうようなゆったりとした時間になっていった。
(はぁ、……けど、セックスってこんな気持ちいい事だったなんて……ボク全然知らなかった)
「ねぇ、ザッキー」
「王子?どうかしましたか?」
「あのさ……いいかな、今日も。暫くこのままでいたい」
「また…ッスか?」
ピークを迎えたその後、ボクが後ろ抱きにそう呟けば彼は僅かに体を震わせ返事をする。日の光の下で初めて素肌を晒したベッドの中の彼は、いつにも増して美的かつ官能的。ここはまるで澄んだ水辺。伸びやかな草花のある、明るくてすがすがしい、まるでキミそのもののような朝の世界だ。
ボクは彼とのセックスが一つ終わる度に、必ず離れてしまうのが惜しい気持ちになってしまう。ずっと二人で一緒に居たいと思う。いつまでも、いつまでも。だからボクは時々我慢しかねて、彼にこんなおねだりをする。その時の彼の返事はYESでもNOでもなんでもいい。ボクが心のままに彼にちょっと甘えてみる。その行為自体がとても楽しい事だからだ。結果を得るために逆算して謀る言動ではない、極自然な在り方で言葉を発する。彼に対してだけは当たり前の様にそれが出来る、そんな今を、ボクはとても幸せに感じる。
「だって今日はいつにも増してキミと一緒にいたいんだ」
「……は、……ぅ、う、ッ」
先程の獣じみた四つん這いの姿勢で与えた喜びがまだ完全に過ぎ去っていないのか、彼はこの返事をする際、残渣のような射精が起きたようだ。瞬間不随意的な締め付けが軽くボクを嬲る。
「ん、ボク、これ……好き」
「へ……変態が」
「フフ、どうとでも」
あの夜と同じに目の前には無防備なうなじがあって、太陽が彼の肩口の薄い産毛を光らせているのもよく見える。
(ザッキー、ってホント綺麗だなぁ)
彼の世界の中でそれを食めば、尚更その感触が唇に優しい。そして、ボクの指先は当たり前の様に彼の突起へ。
「くッ……」
まっさらだった彼の体は、積み重なるボク達の時間の中で変化が続いていた。ただの意味のない代物だったそれは、今では行為における快楽を促す上で重要な器官の一つだ。
「あ、あ……待っ……王子、ちょっ……」
夜毎ボクに弄りつくされたそこはあまりに過敏で、ゼイゼイと息の残るインターバル中の今の彼には少し強すぎる刺激となってしまう。
(おっと失礼)
夜のボクの世界で抱くのとはまた違う。明るいと彼の体の持つ本来のあどけなさとウブさが際立つおかげか、その中で赤裸々に性に濡れていくタブーの魅力はまた強烈だった。彼の魅惑的な反応にドキリとさせられ、ボクの中の凶暴性がゆらりともう一度目を覚ましかける。
(ああ、でもザッキーの事めちゃめちゃにしちゃいたいな。キミの全部が晒されたこの日差しの中で、淫らなままに理性を飛ばさせて、いやらしい事沢山沢山……気持ちいいってボクの名前一杯呼ばせて、卑猥な事一杯言わせて、もう助けてって泣かせたい。そんな風に、ボクにしか出来ない、嬉しくて壊れちゃうような強烈な喜びをキミにあげたい。そして光を吸う植物みたいにそれを全身で感じたい)
けれど、ボクの中には大切な彼の呪文が存在していて、それがまるで子守唄のような作用をもって獰猛な獣を眠らせていく。
――“本当”に人を好きになるって……
彼は上手にボクの中の獣を煽り、そして簡単に調教を済ませる。この本能的な猛りはボクの“好き”に深く食い込んでどうあっても切り離せない部分だ。それでも重く激しい欲を抱えたまま、ボクは愛故にその指先を優しく穏やかなタッチに変えていく。
(……そう、キミが今欲しいのはきっとこんな感じ?)
少し物足りない焦らしのような戯れの指先が彼のお好み。そしてボク自身も性に汚れぬグルーミングのような、そんな優しい時も好きだった。刺激にならないよう細心の注意を払って、彼の割れた腹筋などを丹念に愛していくと、彼の呼吸は切迫からウットリとしたものに変化していく。
「ん……、ふぅ……」
(あー、可愛いなぁ……好き?こういうの)
鍛え上げられたそれは特に意識しないうちから綺麗にその形があらわになっていたそうで、まだまだ少年の体だった彼の姿を想像しながらゆっくりゆっくり指を這わす。これは性欲を煽る愛撫ではなく愛情そのものを交わす触れ合いであり、こんな時の彼はとても優しく、ゆったりとした口調でさまざまな寝物語をボクにしてくれる。時々その心地よさに眠ってしまう事もある可愛い彼が、ボクはやっぱり大好きだ。
「また、そこ触ってる」
「フフ、キミの腹筋ってさ、ホント綺麗な形してんだよねー。触ってて飽きない」
「王子のほうが俺なんかよりよっぽど……触り心地……いい、と思う」
「何?触ってみたいの?いいよ?いつでもどうぞ?」
(そうだよね、キミも他人の体を愛でたりするの楽しいよね?同じ男だもん、わかるよ)
「べ、別に……そういう意味じゃ」
「なんで?構わないよ?それにキミ、セリー達のは普通にロッカールームとかでシックスパックがどーのこーのって触ったりしているじゃない?ボクとキミの間柄なんだもん、今更遠慮する事なんてさぁ?」
素知らぬふりで少し意地悪を言えば、彼はボクに触れるのを想像する事で興奮してしまったようだった。ひくつく二人の繋がりからそれを感じる。
(ん、やっぱこれ気持ちいい……キミの事、凄くよくわかるもの)
恥ずかしがり屋の彼が本気で積極的になるのは深い快楽の中に埋没して意識が半分飛んだ時だけだ。常に言葉も反応も、理性に強く是正される。このボクをしても彼をあからさまな性の世界に連れていくのは未だナカナカ困難な作業で、だからその分ボクは彼の中に生じる細やかな欲情をいつも神経を張り巡らせて拾わねばならない。強引になり過ぎない程度に。
(ね、ザッキー、そんなにボクの体の事、好き?)
こんなにも肌を合わせながら慣れる事なく、ただボクの体である、というだけで物理的な意味以外でも心理的にとても複雑な快楽を延々と彼に与え続けているらしい。つまりボクの体はある種の崇拝の対象となっていて、いくら直接的に愛でたくても心の快楽への刺激が強すぎて彼には無理というわけだ。彼の愛するボクの体を、ボクもまた今までになく誇らしく思う。
「……ッ」
その行為を想像しただけで自らの興奮によって切迫を呼び込み、思わず漏れた彼のその息もまた可愛い。こんな時好きが溢れてどうしようもなくなるボクは、少しの間だけ目を瞑る。頭がボーっとしてきてしまうのだ。多分彼の中にあるボクへの強い欲情を感じ、その中に丸ごと溺れてしまいたくなるのだと思う。
首筋に顔を寄せると頬に彼の肌が触れて、些細な彼の反応全てがボクに手に取る様に伝わってくる。目を閉じ視覚情報を失った分だけ周りの他の情報集めに画策し始める触感、嗅覚、そしてどんな小さい吐息をも掴む研ぎ澄まされていく鋭敏な聴覚。
「あ、あ……」
観察の中、彼の微細な反応がスタートするこの時間も好きだ。彼の頸動脈から動悸の高まりを察知したボクは、同時にそのテンションの緩やかな変化と同じように彼の体温も徐々に上がり始めている事を実感する。
彼は自身でもままならぬ体に戸惑っているけれど、ボクは無理のない程度に足を開く形で片膝を深く曲げさせてみた。だって彼の体がどうして欲しいのかちゃんとボクに知らせるからだ。
「コラ、おう、じ……なにす……」
「んー?」
(こうすれば足をそろえているよりも深く繋がり合えるよね?)
減らず口を無視しながら、ゆっくりと圧をかけていく。彼の体がもう少し、とボクの存在感を欲し始めているので、快楽に従順になりつつある彼の体の望みのまま、そっと彼の昂ぶりの先端に手を差し伸べる。
「……ッ」
熱帯びるそれは既にねっとりとした涎を垂らし始めているのか、刺激を、刺激を、とさも甘えるようにボクの指先をしとらせた。それと同時にボクとディープなキスを続けていた後孔もまた、キュウキュウとボクを煽り始める。ボクが思わずその快感にふるりと震えれば、彼は反射で僅かに腰を揺らし、もっと深くと要求する。
「……もういいの?休憩」
「ちが……」
やっぱり彼はとても恥ずかしがり屋で、こんな時の体の積極性に対して、理性が邪魔して心がナカナカついてこれない。彼が本能のまま素直にボクを欲し始めるのはもう少し先。欲望に正直過ぎる程のボクには理解しかねる、けれど愛おしい彼の特徴だ。
(ボク達は今こんなにも繋がり合っているというのにね?またあの日の夜のように心も体も裸になって、欲望も何もかも全部キミと繋がり合いたいなぁ)
予約した狩場でなく自宅に連れ込んだその日のボクの心を思い出す。彼はボクの獲物でなく、ボクが彼の獲物になった。彼は彼の夢の中にいて、だから未成熟な体のままながらボクの愛撫を心の底から喜んで、沢山の不器用なおねだりをボクにくれた。
(キミのいい場所がこんなに増えた今なら、あの日よりももっと素敵な事あげられるのに)
ギュウッと深く彼を抱き込んで奥を圧迫すれば、息をつめた彼の体がカタカタと再び震えだす。ドンドン固さを取り戻し始めているボクの与える快楽に耐えてる証拠だ。
「ま、だ……駄目……」
理性のタガが外れにくくて困惑している彼の姿は、それはそれでこんな風にとても可愛い。しょうがないなとボクは思う。
「そうだね、じゃあ今日はゆっくりだ」
そう、焦る必要はないのだ。今日は彼とゆっくり。深く深く、ボクはそのままじっと彼の全身を感じよう。それもまた二人で過ごす今しか出来ない素敵な時間なのだから。
(それにしても、ホント朝のエッチってすっごく興奮する。毎朝いつもこうならボクちゃんと起きられるのにな。まあ、無理なんだろうけど)
毎朝そうなら彼がボクと一緒に遅刻になってしまうだけだ。だから自分の想像にあきれて鼻で笑った。くすぐったがりの彼に、少し申し訳なかったかな?
「んッ」
「ああ、ゴメンそういうつもりでは」
固い耳介を唇でスリスリ楽しみながら囁きを続ける。
「ねぇ、ザッキー。なんかこういうのもいいねぇ、気持ちいい……ずっとこうしてよっか?」
ボクが彼を抱く時にその快感を口にすれば、彼の体はいつもこうして喜びを示してくれる。もっと気持ちよくなって欲しい、もっと気持ちよくなりたいとでも言うように体が、来て、来て、とボクを呼ぶのだ。
彼は次第に荒くなり始める息のせいだと言わんばかりに、ひっそり体を揺らし無意識に快楽を追い始める。だからボクも素知らぬ顔をして呼吸を合わせ、そうとは悟られぬようにと誤魔化しながら彼の内部を刺激する。
「う、うぅ……ッ」
もうそれをすっかり覚えてしまっている彼の体は、無意識に肘を立て、ボクがしたよりも大きく足を開いて腰を持ち上げ、必要な場所に必要な刺激がくるようにと徐々に体勢が変化する。それに合わせて沿わすように体を寄せ、ハッキリとそれとは分からない程度の微細な動きで刺激を与え、弄びやすくしてくれた上半身の蕾を片手で優しくなぞれば、彼は甘い喜びの声を上げ始める。
(でもやっぱ、もう少しかかる、かな……?)
ボクに抱かれる事は彼の喜びでありながらも屈辱である事をボクは知ってる。いくらこの行為が互いの愛情表現の一環であるとはいえ、そこには未だ多大な肉体的心理的負担が存在していて、その高いハードルを超える為には彼のボクへの強い思いとそれを待つボクの忍耐が必要不可欠だった。彼の感じているであろう肉体を蹂躙される屈辱を知らないボクは、獣の欲望のまま抱くでなく、少しでも人間的で優しくありたいといつも強く願っていた。
「お、おう、じ、……」
例えば挿入されるという男としてイレギュラーな形式で性的な快楽を得る事は清廉な彼にとって明らかに罪悪だ。だからボクは手とり足とりその壁をきちんと乗り越えて楽しんでもらうべくその度最善を尽くすようにしている。多分、それが彼の言うところの“本物”の好き、だから。
(楽しいけど大変なんだよ?……こういうのホント苦手でさ)
己に枷するような抑制の日々は当然の事ながらボクにとってかなりの苦痛を強いるものだった。それでも、彼の“本物”になる為に今日も甘いデザートのお預けを食らった犬のようにただひたすら彼のGOの一言を待ち続ける。
(よく躾けられたいい犬だろ?でも、言っとくけどこんなのキミにだけだからね?わかってる?)
切なげな顔をして半身に振り向く彼の頬は上気していて、もの言いたげなその唇がすっかりその渇きを言い表していた。繋がりはそのままに身をもたげボクが渇きを癒すキスをすると、深く曲げていた足にグッと力が入りだす。
(上、向きたい?)
彼の意を汲みそのまま足を持ち上げ抱えてやる。
「くぅ……ッ、あぅ!」
「こういうの、初めてだっけね」
サッカー選手というのは股関節の柔軟さが重要であり、日ごろ入念にストレッチされたそこは簡単に大きく開く事が出来る。だからボクは、彼の左足に跨る形で浮いた右足を抱きかかえたまま、いつもとは異なる角度でインサートを続けた。体が柔らかい彼が相手ならその分深くまで挿入出来る。お互い十分楽しめることだろう。
「大丈夫?苦しくない?」
正常位に慣れている彼が中途半端に横臥の姿勢で、足を開いてボクを根元まで受け入れる。しかも全てのカーテンが開いたままの明るい部屋で、赤裸々な自分を晒されて。それでも彼はやった事のない淫らな姿勢に戸惑いながらも、やがて肘付く手がシーツを掴んでぎゅっと握り込むようになっていく。
(気持ちはわかるけど、キミが目を閉じてもボクからは丸見えなんだけどね)
それはつまり徐々に今を受け入れていく姿そのもの。目を閉じシーツを掴むという耐えるような仕草は、障壁を乗り越える際の彼の癖のようなものだった。理性の枷をボクの腕の中で少しずつ外していく従順さがボクの目にとても卑猥に映った。彼の居た堪れなさはこうして、常にボクの欲情をどうしようもなく煽り続ける。けれど彼が羞恥を捨てて欲望にまかれるまでは、もう少し時間が必要だろう。
(もう、いやらしい恥ずかしがり屋さんってホント困っちゃうよね)
その頃になると体位の変化で引き攣っていた場所が次第に慣れてきていて、彼は徐々にボクのささやかなリズムとともに素直に快楽を追い始めていた。でも、急ぐのはなし。彼のテンポに合わせて、ゆっくり、ゆっくり。
おずおずと震えながらボクの名を呼んでいるので、指先で露わなった内腿をスルスルと撫でてやれば、ひ、と小さな悲鳴を上げる。
「嫌ッ……」
触れてもいないそれがすっかり固くなっているのを目にしながら、じっくりと彼の反応を観察する。彼にはボクの成す罪の快楽をもっともっと感じ続けていて欲しい。ボクの我儘な彼への愛情を、余すことなく受け入れて欲しい。彼の純粋な信頼と同じ形でボクを無条件に愛してほしい。
沢山の誤魔化しで塗り込められた体の揺さぶりが彼の興奮を示す男性器をも揺らし、それらに攻められ苦悶に似た快楽を彼に呼び込んでいるようだった。
「ん?ここもまだ駄目?じゃ、どこならいいの?」
「……」
「言ってごらん?どこを、どんな風にして欲しい?キミがして欲しい通りにしてあげるから、ボクに教えて?」
ボク達は行為で心を繋ぐ事が出来るようになっても、言葉で心を繋ぎ合う事は未だ少々不得手と言えた。チグハグも楽しいけれど、言葉でもちゃんと繋がり合いたいボクはこうして、時々彼に言葉を乞うた。ボクは臆病者だから、分かり合っているつもり、というものが怖かったのだ。
「キミの事うんと気持ちよくさせてあげたいんだよ」
(彼は今理性を掴みながら行為してる。心と体が矛盾してる状態だからね。ちゃんと確認してあげないと。無理強いはしたくない。してみたいけど、我慢するよ)
そこじゃないと今しがた否定した内腿への愛撫は、実は焦らされ好きな彼がいつもは好むものだった。頑張るのが好きな彼はこんな我慢もまた好きなのだろうか?では、今の彼の心境は?
「ね、指先で擽るみたいのがいいか、手のひら全体で包み込んで摩るみたいのがいいか。ね、言ってよザッキー」
「は、はぁ……、んッ……」
「それに、こっちの方は、まだゆっくりがいい?それとももう少し激しく?」
「ん、……あぁッ、あ!」
ゆるゆると腰を引いて、やんわりと再び挿入すれば、真っ赤な顔をしながら耐えている彼の口元から甘い声が漏れてしまう。それと同時にクプリと卑猥な音を立てて、穴から精液も僅かに漏れた。
「お、王子、王子……」
「なあに?」
「……」
「ザッキー、どうしたの?言ってみて?」
ボクの与える僅かな快感にさえ震えて恨みがましく睨む彼もとても可愛い。
(この顔いいなぁ、すっごく。でもまだ我慢だ。彼が心から欲しがる前に始めちゃ“本当”の好きにならないもんね?)
「……」
「ん?」
「い、い加減に……」
“いい加減にしろよ、くそったれ”
「え?何が?」
思わぬ乱暴な怒鳴り声の前にボクは急に素面に戻ってキョトンとしてしまう。それと同時に、ああ、言いたくもないけれど……本当に男って繊細な生き物だ。
「あ」
突然のボクの休戦のリアクションに気付いたザッキーとの、この後のやり取りは本当に傑作だった。
言葉のやりとりはやっぱり楽しい。ボク達はいつもチグハグで噛みあわない事ばっかりで。でも少しずつ少しずつ。ボク達は二人の間にある長い距離が近づいていく日々が楽しかった。
「誰だってそう思うだろ!あんたの根性悪な性格知ってたら!」
「失礼だなー、ボクの愛情を全然理解してないんだから。怒られてすっかり萎えちゃったじゃないか」
「だって、ややこしいだんだよ、あんたのやってる事!高みの見物みたいにジロジロ人の事変態みたいにやられてたらそれが親切だなんて誰も思うわけが」
「酷い!ザッキー、あんまりだよ」
「だっていくらなんでもあんたいつも冷静過ぎで」
「どういう意味?ボクに乱暴して欲しいってそういう事?キミそういう趣味が」
「違う!そんな事言ってねぇだろ?なんつーかねちっこいしイチイチ話しかけてくる内容が変態過ぎんだよ」
「聞かないとわかんないからじゃないか」
「そりゃそうだけども!」
「言っとくけどボクの優しい行為を言葉責めだって受け止めるほうが変態性高いよ?」
「うるせぇ!黙れ!」
「またそんな事可愛げのない事……」
「どうせ可愛くねぇよ!」
「いや、キミは可愛いよ?可愛げがないって言ったの。わかる?可愛げのない事言うザッキー、可愛いよ?」
「やめろそういうの!嬉しくない!」
「はー。まあ、よくわかんないけど、つまり何?余計な事くっちゃべってないでモクモクと抱けって?なんかそういうのってボクさぁ」
「そうとも言ってない!」
その瞬間の彼の表情、彼の言葉。あんなに素敵なものが見られるならボクは何回だって誤解し合いたいとまで思ってしまった。彼の何もかもが、ボクの心を潤していく。
「成程、つまりボクが思うようにキミを抱けばいいってわけ」
「俺の反応見ながら計算ずくでやられんのなんて、いっつも俺の負けみたいで嫌なんだよ!」
自分を削って相手を守る、その心情を持つ彼だから。そう、言われてみれば当たり前。つまり、自分を優先される事は苦手?
「へー、そーいうことぉ?そうかー、自分だけが気持ちよくなっちゃってる気がして悔しかったんだ?へー?」
「!」
ボクは彼の王子様になりたかったけれども、だからって彼をお姫様にしたかったわけでもなかったわけで。お姫様でない彼にとって、自制心を働かせたボクの献身は大層居心地の悪い椅子となってしまったようだ。
「いいよぉ?ザッキー、お望みのままに。キミの願い、ボクが全部叶えてあげる」
彼の愛はボクを守る愛なので、ボクの望みの全てを彼は叶えてくれるのだ。我儘で、凄く不誠実で、高慢で。そんな最低なボクの事を、彼は丸ごと受け止める。ボクはニヤリと笑って獣を呼び出し、彼に一言こう言ってやった。
「やりたいようにやるのは、ボク、一番得意だからね」
その夜、彼が快感のあまり喘いで叫んでへとへとになって、ボク達二人お楽しみの最後の最後に彼がボクに、
「どっちにしろ同じじゃねぇか!この鬼畜!」
こう怒鳴りつけたのは、ここだけの秘密だ。ま、結局のところ、需要と供給の趣味がピッタリ合わさる、最高のカップルっていう事なわけね。
「えー、同じ?」
「いや、同じどころか……はぁ……」
「ザッキー?」
「……んとに、マジかこの人……ったく……」
「?」
「……(変態め……)」
「……フフフ、ザッキー、大好き」
「うぇ、こら、終わりじゃ……もう無理だっつっ……」
「何言ってるの、ボク達に終わりなんてあるわけないだろ?」
「違う、そういう意味じゃ……いい加減にしろよ、くそったれ……、あッ……」
「永遠に一緒さ、ね?ザッキー?」
――ずっとね
……
La Dolce Vita. Tutti felici e contenti. めでたしめでたし
