お花結び

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ジノザキDay2014ジーノ編

【77054文字】
後半戦のジーノ視点バージョン。赤崎編はお題消化がテーマでしたが、こちらはすれ違いがテーマの意地悪?オマケ物語です。ラスト、ハッピーエンドではありますが途中えげつない(強姦未遂)描写がございます。R18設定としましたが人によってはR18Gかも?黒い展開が苦手な方は閲覧熟慮願います。10/17~10/31連載

3. tre/トレ

 注文していた品が届いたというので、女性に優しいボクは一人愛車の中。つまりはこの後の退屈しのぎのお楽しみの為に健気に待ちぼうけをしているってわけ。
 街行く人の鞄のデザインなんかを眺めていれば、鏡越しにボクの愛犬達ががん首揃えて歩く姿を見つけてしまった。

(ふぅん、私生活でも一緒に過ごす程懇意な関係にあるって事かい?知らなかった)

 なんだかちょっと気に入らない。飼い主に黙って、なんて話はやはり少し横暴な話かな?そりゃあ連携を強める意味でも彼らみたいな人間にとっては悪い事でもないだろうけど、そんな明るい笑顔になる程までは、楽しむ必要もないと思う。

 こんな時厄介なのが視界の広いボクと同じに駄犬もボクの存在にとても過敏な事で、こちらだけが見物していたい場合にあってもナカナカそれがかなわない。ボクは彼らにパートナーを披露するような下品な趣味を持たないので、見ぬふりをして通り過ぎろ、と睨んで犬に指示をする。
 なのに駄犬に気を取られていたら、もう一匹が空気も読まずにやってきた。

(ボクとした事が少し脇が甘かったね。でもザッキー、この場合は)

 駄犬がなんとかすべきだったのだ。でも彼はボクが思うほどボクを理解してくれていないので、素知らぬ顔のままにボクはギリギリと奥歯を噛みしめる事しか出来なかった。いや、でも、繰り返し失望する方が馬鹿なんだねきっと。しなくてもいい期待をして。
 でもボク個人の不快は兎も角、咄嗟の場面で機転が利かないっていうのは選手としても憂慮すべき欠点かと思う。ユース育ちは呑気だね。子供のままで大人になった。それで世界レベルで戦いたいとか、ボクにはちゃんちゃら可笑しい話。

(しかし、キミがそんな顔も出来る子だったなんてねぇ?)

 飼い主との偶然の再会にはしゃぐバッキーを眺める駄犬。先輩顔して優しそうに少し頼もしさすら感じられた。そしてフワリとした一抹の。

(一端の騎士気取りが滑稽だ。キミはボクに憧れ怯える、びしょ濡れの憐れな子犬のはずだろう?)

 ボクの犬はボクの命令に従えなかったばかりか、ボクではないものの番をしていたというわけだ。

(誰がそんな事していいって言った?キミは本当にボクをわかっていないんだね。ボクがキミから目を逸らしても、キミはボクを見てなきゃいけない。そういうものじゃない?)

 これ見よがしにキスして見せれば、犬はようやくいつもの顔に。人恋しくて悲しい顔。クーンクーンしょんぼりと、ボクを必死に慕う顔。

(そうそう、この顔。それでいい。犬同士でじゃれてないで、常にボクの事を考えておいで?)

 きっと今彼の頭は今のシーンで一杯で、多分この後も暫く一杯。今日初めてボクの私生活の一部を知った事で、この少ないけれど刺激的な情報を片手に、ボクとボクの彼女の事を考えるだろう。キスをする関係なんだとか。それ以上の事をする関係なのかとか。エッチな事を考えるのって、嫌いな男はいないよね。

(ピッチの外にもボクはいる。だから外でも忘れないで?)

 彼が上手に任務を果たせそうだったので、害した気分が回復した。今まで以上に彼の時間をボクの事で占有して削り取れそうな事に満足したのだ。

– – – – –

 あの日から絡みつく目線が少し変化した気がする。今まで存在しなかった微細な熱を感じる。

(甘えたければキミが自らの意思で歩いてこっちに来ればいいのに)

 同じように視線を返しても、やはり少し反応が違う。憧れの中にある小さな種火。やれやれ、からかいがてら変なもの(キスシーン)を見せてしまったおかげで少し予想とは違う展開になってしまったようだ。子犬は子犬のままでいい。純粋で、清廉で。でもボクは扱い方を間違えてしまった。
 別にボクの事を日の下に似合わない疚しい目をして、そうやって見つめて欲しかったわけではない。そりゃどんな男にも性欲はあるよね。ボクにも、そしてあの子にも。でもボクはキミにあんな日々を暮らすボクのルーズさにいら立ちを感じて欲しかっただけだ。思いがけないスパイス味にドッキリして、子供みたいに崇拝の目のまま、

“王子はそういうんじゃないでしょう?”

と、そんな風に思って欲しかっただけなんだ。おっかなびっくり水を欲しがり、訝る滑稽さを期待していた。ほら。ね?それは逆なんだザッキー、とても残念だよ。こんなものを気に入ってしまったのかい?まだガキには早すぎる味だよ。またボクはしなくてもいい期待をして、彼のふしだらに失望の傷を負う。

(キミはそんな子じゃなかったはずなのに)

 昔、ペットを飼うのはつまり命を扱い引き受ける事だと言われた事を思い出す。可愛いボクの捨て犬は、少しずつ子犬の面影が消えていく。親と慕ってボクを見上げ、自身の成長を願う。そこにあるのはただひたすらの忠誠と信望と羨望と。それだけの存在のはずが、時間が彼を成犬に導いていく。成長期の子供はあやふやで、大人なのか子供なのか、はっきりと線引きできないところがボクは嫌い。
 ボクのやろうとしているあの子への躾、所謂“意地悪な遊び”というのは、彼が子犬だからこそじゃれ合うホビーの一環足りうるわけで、彼が子犬ではなく本気で男としてボクと座する高さを同じにしようと考えるならば、遊びは途端にゲーム(勝負)となる。競争心と闘争心という種類のスパイスは、生き抜くに重要な役割でありながら劇薬で、味を壊しさえする可能性のあるそれらについて、ボクは多すぎる事を望まない。事なかれ主義?平和が好きなんだ。嘘だって?本当だよ。
 でも、ボクは先日間違えて、あの子の中にある綺麗なものを少し汚した。あれは失態であったと思う。色々やってはみたものの、同じ対応では彼は元には戻らない。ミスで灯したあの火が消えない。明らかに間違った火、彼の取り違えはボクのせい。羨望に汚らしいセクシャルな思いが混じるだなんて馬鹿げてる。そんな処理のお相手なんて御免こうむるに決まってる。
 ミスはミス、反省は反省。けれど、ボクに責任感など存在しない。女性関係でも、友人関係でも、そして主従関係でも。いつもトラブルに関する嗅覚だけは抜群で、ボクは今回もまたこんな事を考え始めていたのだった。

(撤退すべき、かな?なんか面倒くさいもの)