お花結び

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ジノザキDay2014赤崎編

【69956文字】
両片思いの赤崎目線ジノザキ。少々ポエム調?乙女崎寄り。
ジーノ月間突入!ジノザキデー間近!という事で1日1追記を目標に15日まで30お題消化しました。10/1~10/15連載。お題の順番はバラバラ、無理強いな消化もアリ。ジーノの捏造彼女、赤崎の捏造仲間など出てきます注意。

20. Dancing/ダンシングする

 & 

15. In a different clothing style (Visual Kei, gyaru, lolita, ect. )/違うタイプの服にする(ビジュアル、ギャル、ロリータなど)

 ファン感のベテラン組の前座に椿達ルーキーの仮装だけでは、今じゃもうパンチが弱いとかなんとかかんとか。適当に今流行りの可愛いアイドルダンスでもすりゃあいいんじゃねぇの?とニヤついて提案すれば、言い出しっぺの法則として俺がリーダーとして参加することになってしまった。言う事聞かないと改めて俺の去年の秘蔵のコスプレ写真を舞台裏含めてサイトに特集するからとか、マジふざけんなと思う。ま、来年からは一切女装なし&今年はスカートが膝丈OKって事で最後は妥協する羽目になったのだけれど。第一、もうゴチャゴチャ言ってる時間がない。

「赤崎がやるなら俺もやるやる~♪」

 イベント大好きヒゲチビ先輩は誘ってもいないのに参加を申し出るわ、椿達は踊りのセンスが壊滅的だわ、俺は日数もないのに早速頭を抱える羽目になる。しかし、それ以上に俺の頭痛の種だったのは、あの忙しい王子が時々居残りダンス練習をニヤつきながら覗きに来るようになったこと。
 あの人が事ある毎に爆笑するので、その笑い声を聞きつけて、鵜の目鷹の目のギャラリー達がこれでもかと言う程集まってくる。全く最悪だ。ただでさえあの日からなんだか気持ちがザワザワと落ち着かなくて、この喧騒が俺を更にイラつかせてしまう。

「王子!そんなに人のことばっか笑ってっけど、あんた出来んのか!?」

 ブチ切れてこんな馬鹿げたことを言ってしまったがばっかりに、俺はかかなくてもいい恥をかくことになる。

「どうだろ、こんな感じ?」

 何をやらせても様になってしまううちの看板選手は、やっぱり王子の名にふさわしい男だった。ちょっとずつ元ネタに加えた男性的なアレンジがまたキザなくらいにきまっていて、練習場に思わず拍手と歓声が。何をどうすれば華やかになるか、そういうことがまるで呼吸をするかのように無意識にわかっている人なんだろう。
 正直こういう時にドヤ顔の一つでもしてくれれば溜飲が下がるというものだが、このさりげなさと続く配慮が俺に追い打ちをかけていく。

「大体これは上手に踊れればいいって企画じゃないんだろう?全くそういう意味ではキミは最高の指導者だと思うよ。当日が実に楽しみだな」

(これ、多分別に俺の悪口言ってるつもりでもないんだろうな。ったくそうだよ?何から何までごもっともで……こんな男しかいねぇ場所でまで無駄にカッコよさまき散らかして……マジどうなんだよ、生粋か)

「ん?何?」
「んでもねぇッス」

 呑気王子の満面の笑みがこれほど憎たらしいと思ったことはない。違いとその差をアリアリと見せつけられて、俺は勝手に打ちのめされてしまったのだった。

 本当はこうありたい、こうありたかった。俺が望む全てのものを持っている人。そして新しく知る彼の素顔。類稀なる美と才を手にしながらひけらかすでもなく、自慢するでなく。王子の、なんらキミ達と変わらないよボクは、と生きる気負う事ない自然な姿まで俺の理想のそれだった。

 今はもう、彼の眩しさが俺をどうしようもなく卑屈にさせる。

「ね、後でまたダンスの練習、するんでしょう?」
「……」
「ボク、今日も見に行っちゃうおうかな?予定ないし」
「……」
「あれ?どうしたの?」
「……」
「ザッキー?」

 無神経な王子は無神経なので、俺がどれだけ機嫌が悪くてもどれだけ王子を無視しても、まるで気にせず平気な顔して話しかけてくる。ニコニコと今日もご機嫌だ。

「大丈夫?具合でも悪いの?」
「王子、あの……」
「ん?」
「俺、もう無理です」
「……何が?」

 なるべく冷静に、さりげなく言ったつもりだった。王子自身になんら悪気がない事はわかるし、楽しい空気に水を差すことはよくないとも思ってる。間違ってるのは俺の方だし大人げないって自覚もある。
 でも、なんだかこのまま黙っていたら自分がおかしくなってしまいそうだったから。俺がマジギレしたところで王子は馬耳東風なんだろうけども。

「もう、来ないでくれませんか?」
「え?」
「そろそろ限界です」

 俺は遠い存在だった王子との関係が近づいてきている事が嬉しく感じ始めていた分だけ、今のこの自分の卑屈さが増長されていくような関係性が辛かった。気に入られている事を知った分だけ、幻滅して蔑みの目で見られる未来が思い浮かぶ。この笑顔が本当の意味での嘲笑のそれに変わる事なんて俺にはとっても耐えられない。
 そんな心のギクシャクが増え、このままでは他愛無い日常の連携プレイにすら再び支障が出始めてしまうのではないかというくらいに波風が立ち始めていた。

 そして今、一度口に出すととめどもなく溢れてくる、俺の理不尽。

「そりゃ王子からしたら俺は踊りも下手だし、馬鹿にしたくなるのもわからないでもないけど、」
「どういう意味?ボクがキミを馬鹿に?そんなわけないだろ?」
「ですよね」
「そうだよ。この前ちゃんと言ったろ?ボクキミの事」
「覚えてますけど……でも、王子は自覚なくても俺の事、いっつも馬鹿にしてんですよ」
「待ってよ。何言ってるの?そんなわけ」
「そんなわけがあろうとなかろうと。もう王子は出禁ですから」
「……」
「俺ね?頼まれた事って嫌でもなんでも、やるからにはふざけないで真面目にやりたいクチなんスよ。こんな事言ってもおふざけ大好きなあんたにゃわかんねぇだろうけど」

 案の定王子はパチパチと瞬きをしながら首を傾げてこちらを見ている。その姿にイライラが増す。常に勝者であり自信に満ち溢れた男と小さい俺とではこんなにも違う。その綺麗な屈託のない顔が自分の卑屈さを赤裸々にしていく。

「ぶっちゃけ、練習に邪魔なんス。あんたがいると集中できない」

 王子のやっていることは何らおかしいことではない。彼のこの行動や態度は、一緒に楽しもうという俺への親しみの延長線上にあることは間違いなく、だから、俺が不機嫌になる理由など何一つ理解出来るわけがない。理解出来ても馬鹿馬鹿しくて更に笑ってしまうだけの話だろう。

「ハ……」

 ほら実際そうだ。今もそうして俺の隣で今の馬鹿げた話を冗談にしようと笑っている。それでいいのに、助かるのに、そんな適切な対応が出来る王子がまた堪らなかった。カチンと来る。

「笑い事じゃねぇんスけど」
「ねぇ……嘘でしょ?」
「本当です」

 筋の通らないイライラを、こんな風に他人に、しかもあの王子にぶつけている自分。恥ずかしいことをしている。墓穴を掘っているような気もするし、でも、この人なら俺のこんなガキくさいあり方をさらりと窘めて鎮火させるだろうと奇妙な形で安心を感じている気もする。
 王子にわかってはもらえない。わかって欲しくもない。でも、少しくらいは伝わっていてほしい。どうしてこんな事にならなきゃいけなかったのかという事を。なんだか、自分でも一体何をどうしたいのか意味がわからなかった。多分何かが掛け違えているだけなのだ。でも、俺には今それがどうにも出来なくて、苦しくて。
 だからともかく、王子、笑って。そして俺のこの腹立ちを消して欲しい。多分貴方ならあの日からどうしようもなくなってしまった俺の中のグチャグチャを、あっという間に綺麗さっぱり片付けてしまえるはずだから。抉り出すように俺の悪い部分を指摘して、変な事を考えている小さい俺を笑い飛ばして、目を覚まさせて、そうしていつものように俺の右肩にポンと貴方の左手を置いて、しょうがない子だなぁ、大丈夫、さ、行こうよ、なんて背中を。見晴らしの良いあの場所で同じ空を見たようにそっと後押ししながら。

 なのに、王子はそれをしなかった。

「王子?」
「……」

 ボクはやりたいことをやりたいようにやる。

 そんなことを断言していた王子。意味不明に盾突く俺に対して、こうしてなんの反論もなく彼が黙ってしまうなんて思わなかった。何か物言うかわりに、困ったような笑顔を浮かべて、肩を竦め、王子はそのままその場を後にした。

「な……」

 自分が今言ったこと、今やったこと。そんなものがぶわっと己に実感を呼ぶ。本当に追い払う気持ちなんて微塵もなかった。ちょっとひねて見せただけのつもりで。王子の去りゆく背中を眺めながらはっきりと自分が調子に乗っていた事を自覚する。王子は嘘かと確認し、俺は本当だと彼に告げた。やり過ぎたんだ。

(馬鹿な事を……最悪だ……こんなの単なる依存で、一番嫌いな事を俺は王子にしつこく……)

 ボクはやりたいことをやりたいようにやる。
 そして皆自由だと。

 確かにあの日王子はそんなことを断言していた。見学に行きたいと思えばあの人は誰に何を言われようが気にせずやってくる。俺は頭からそう信じて疑いもしなかった。

 確かに王子は、やりたいことをやりたいようにやる。

 つまり、ヘソを曲げた俺の一言で俺に幻滅を感じ、呆れ、そうして、その心の思うがままにもう俺にかかわりたくないと思ってこの場を去ったのに違いなかった。
 ちっぽけな俺は身の程知らず、恥知らずなことをしてしまったのだ、あの人に。

 何てこと。もう、時、既に遅し。だ。