ジノザキDay2014赤崎編
【69956文字】
両片思いの赤崎目線ジノザキ。少々ポエム調?乙女崎寄り。
ジーノ月間突入!ジノザキデー間近!という事で1日1追記を目標に15日まで30お題消化しました。10/1~10/15連載。お題の順番はバラバラ、無理強いな消化もアリ。ジーノの捏造彼女、赤崎の捏造仲間など出てきます注意。
16. During their morning ritual(s)/朝の儀式的なもの
「おはよ、ザッキー」
チュ、と王子が当たり前の様にキスをする。そんな事が嬉しいくせに、やっぱり今日も戸惑ってしまう。その反応が面白い彼は、いつものようにクスクス笑う。
「キミはいつまでたっても、そうなんだから」
「だって、寝起きに王子とか何回やっても慣れるわけが」
「なんか失礼じゃない?その言い方。人の事お化けかなんかみたいに」
そう言ってまた彼はキスをする。朝の挨拶、啄む様な。それが次第に変化するので、俺は思わずまたこれを言う羽目になる。
「だから!……ったく凝りもせずに毎回毎回」
「もう、ケチ。朝のボクには特に慣れなくてもいいから、そろそろ、これには慣れて欲しいところなんだけど?」
「朝から不健康なんスよ!」
「どうして?せっかくのオフなのに。第一朝から体動かす事のどこが不健康なのさ」
「王子!」
「こわ」
「昨日だってあんなにしつこく……ったく、どんだけ元気なんだ」
「でも嬉しいデショ?」
「言ってろ」
「何それ全然可愛くない。せっかくの記念日の朝だって言うのに」
そう、記念日。
かなり前から王子はこの日の予定を開けておくように俺に言っていた。けれど彼はなんの記念日か肝心の事を口にせず、結局聞きそびれたままこうして当日を迎えてしまった。
でも口ぶりからすればおそらく彼の誕生日かなんかなんだと俺は思った。さすがの王子も自分の誕生日を祝えだなんてそんな事など言えないに違いないし、うろ覚えの選手名鑑のデータの記憶でもなんとなく、確かにこの頃だったような気がしたから。
27. On one of their birthdays/相手の誕生日に
「素敵な一日の始まりだね。だから今日はずっと一緒に、ん?」
「腹減りました王子。取敢えず起きましょ」
「もう」
最近は彼がどうして欲しいのかわかるようになってきた気がする。だから、口を尖らせ少し拗ねた王子の頬に、素早く軽いキスを一つ。物凄く恥ずかしいは恥ずかしい。けれど、こんな時の呆気にとられた彼の顔はなんとも間抜けで、いつも俺は嬉しくなって、ついつい笑ってしまうのだ。
俺は愛にとても不器用なので、こんな些細な事でさえ彼は大いに喜んでくれる。暫くするとすっかり機嫌の戻った王子は満面の笑みを浮かべ、やれやれ、と溜息交じりに照れ隠し。そしてサラリとその身を起こし、じゃ、行って来るね、と部屋を後にした。
寝乱れた朝はまず王子が先に風呂に入って次は俺。彼のいない間に俺はシーツをめくって、出てきた王子とバトンタッチ。俺が風呂から上がってくる頃には彼はベッドを綺麗にしたのち、二人分の簡単な朝食を作り終えている。
「ボクは流すだけだけど、キミは色々大変だからね」
嘯く王子に俺は何も言葉を返すことが出来ないけれど、なんだったら役割変わりましょうか、と片意地を張れば、キミ下手そうだもの御免こうむる、と彼は思い切り首を竦める。でも、確かに俺もそう思う。王子はとてもとても大事そうに俺に触れてくれるので、今のこの関係には何も、これっぽっちの不満もなかった。愛情に差はないと自信を持って言えるけれど、こういう事はそもそもセンスと適性の問題が大きい。
スタスタ歩いてシーツを運ぶと、隣接するランドリールームにまで小さく王子のシャワーの音が響く。やはり先程のキスが効いたのか、気持ち良さげに鼻歌なんぞを口ずさんで、その余りの簡単さに俺はまた吹き出してしまった。
「あれ?なんだ、居たのかい?」
「居ましたよ。さ、早く、交代交代」
「え?ちょ、ちょっと」
引き摺り出すように王子を連れ出し、かわりにスルリと俺が中へ。そして、シャワーの扉を閉めた後、テーブルの上に置いたものを見た時の彼を想像する。俺の給料だと王子に買える物等たかが知れてる。けれど、俺が用意したものならなんでも喜んでくれる事を知っている。本当はその顔をこの目で見ていたかったけれど、やっぱりその時の俺のドヤ顔を見られると思うと居た堪れない。
(なんて言うかな、王子)
気づかぬうちに俺も歌っていたようで、その事に自分で気が付いた俺は思わずさっきと同じように笑ってしまった。同じ歌だったせいもある。うつってしまったんだ。
風呂から上がると、食事の支度を終えた王子が、テーブルの傍で佇んでいた。ジッとそれを眺めている。
(あ、まだ開けてない)
王子へ、と走り書きのメモと一緒にテーブルの上に置いたそれに、彼は触れる事も出来ないで立ち尽くしていた。失敗した、そう思った。一生懸命、顔のにやつきを抑えながら、なんとか一歩一歩俺は王子に近づいていく。
「それ、王子に。気に入るかどうか知らねぇけど」
不思議そうな顔をしながら怖々とそれを手に取って、彼は壊れ物のように大切に簡易な包装を解いていく。
「前に俺のを見て褒めてくれたッショ?」
取り出したのは、キラリと光る10の数字の、燻し銀の小さなチャーム。店で見つけた安物だ。それを目にしたのは俺が初めて15番をチームから背負うように言われた日の事で、出会ったタイミングもあって一目で気に入り、即断でそれを購入した。部屋の鍵のキーホルダーに繋げて持ち歩いていた誰も気にしない小さな小さな俺のこのお気に入りを、初めて、可愛いね、と褒めてくれたのが王子だった。彼が俺のように持ち歩くとは思えなかったけれど、部屋の片隅にでも飾ってもらえればと、そんな風に思って選んだ。
「わッ!」
駆け寄り抱きつく王子に面食らって、俺はヨタヨタよろけながら、結局王子ともども倒れてしまう。彼は時々こんな風に乱暴だ。それは、二人の時間が増えてから少しずつ俺がわかってきた事。彼は喜びの感情表現がとても直情的で、だからこそ、こんな風にぶしつけになる度に、俺は大きな幸せに包まれる。彼の身を覆うその幸せが、それ以上の大きさとなって俺を覆う。
「凄いね、お揃いだ」
「そ、そッスね」
「しかもこんな日に。ザッキー、嬉しいよ。大事にするからね?」
「……ま、なんにせよ、おめでとうございます、王子」
「嘘、そんな可愛い事まで言ってくれるのかい?」
「えぇ、まあそりゃ」
「ザッキーも、おめでとう!」
「は?」
おめでとうにおめでとうを返されて、パチパチと瞬きをしていたら王子が、
「ね、キミのも出して?並べてみようよ」
「あ、はぁ、ならちょっとどいてくれません?」
言われて初めて状況に気が付いたのか、あ、いけない、とウインクをして王子は少しだけ身を外した。
鞄の中から取り出したそれを、王子はウットリとしながら机に並べた。
「ね、見て?」
それを指さしながら嬉しそうに反対の腕で俺の腰を抱いて引き寄せる。こんな時、王子は本当に器用だな、と感心するような呆れるような。
綺麗に10と15が並んで、まるで今の俺達のよう。そんな事を思った拍子に、カッと頬に血が上る。
「今日だよ?10月15日」
「あぁ、まぁ……」
一瞬、それの何がそんなに楽しいのかと、俺には全然わからなかったのだけれど。
「フフ、ボク達の日だ……」
「え?」
「キミのおかげでなんて素敵な朝に……」
ウットリと呟く彼のふにゃけた顔で初めて、彼の言う記念日が何か、俺は理解することが出来たのだった。
彼は俺絡みの話になると途端に人柄が変化してしまって、どんなちっぽけな事でさえみるみる大切な宝物にしてしまう。二人の番号を並べた記念日、言わばくだらない数字遊びだ。しかもそれをやっているのが世にも名高いスター選手のイケメンハーフで。だからこそ、この陳腐なまでの彼の幼い喜びの在り方が、その一粒の砂も逃さないかのような愛の形が、恥ずかしくて恥ずかしくて、俺を即刻この場所から逃げ出したいような気分にさせた。こんなにも居た堪れないくらいに俺は愛されている。
「今日は一日中ずっとこうやってこの子達もくっつけて一緒にいさせてあげようか。ボク達みたいに」
「ば、馬鹿じゃねぇの?」
照れ隠しに俺がこう腐せば、王子は笑って、
「すぐ顔に出ちゃうんだから、真っ赤だよ?そんなに幸せなのかい?」
と返事をして、そうして続けてさも嬉しそうに、
「……ボクもだよ?今日はいつも以上にずっと一緒に、ね?ザッキー」
と囁きながら、朝に似合わない濃厚なキスを、それこそ全身で愛を語る様に俺に寄越したのだった。
12. Making out/いちゃいちゃする
グーッと色気のない俺の腹音が部屋に響くので、剥ぎ掛けた俺のシャツを持ったまま王子が固まった。
「うぅ、王子、ゴメン。取敢えず朝メシ食わしてください」
情けない俺の物言いに王子はクスリと笑って、チュ、とキスをした。
「色気より、食い気?ま、いいよ。キミらしい」
忍びないのは俺も同じ。けれどよく思いとどまってくれたと思う。部屋の中にはうまそうな匂いが立ち込めていて、湧き上がるこの食欲をどうにも我慢する事が出来なかったのだ。
朝あまり食欲のない王子は、それでもいつも俺にこうして付き合ってくれる。彼は素朴なプチパンを、俺は厚切りのトースト2枚。朝飲むと体にいいんだと必ず用意するのが柑橘系の生ジュース。当たり前の様に並ぶラズベリージャムとオレンジジュースを見ながら、俺はふとあの暑い夏の夢のような夜を思い出していた。
「ね、うち、来る?」
耳元で囁くその言葉に、コクコクと無心で頷いた事は今でもとてもよく覚えている。少しでも長く彼に触れていたかった俺が、初めてこの家に来た時はもう無我夢中で。その間も彼は俺が怖がる事のないようにと大切に俺を扱っていたと思う。丁寧な手つきで服を脱がされ、二人で一緒にシャワーを浴びて、そしてその少しぬるめの水しぶきの中、俺達は初めて互いの渇きを癒し合った。
その時の俺はやはり深酔いの中にいて、つまり全て事を自分が見ている夢だと頭から信じていて、彼の優しさと思わぬ激しさにただ息絶え絶え、必死になって幸せを感受した。体験してみたかった王子の性愛。俺はその夜初めて、男同士で愛を繋ぐという行為を知った。
あの日の朝。俺は夢で見たものと同じくらい大きな王子のベッドの中で目覚め、今朝と同じように王子に驚き、そしてその様子に慌てた彼は必死になって、ありとあらゆる言い訳をかました。
「本当さ、キミが酷く酔っていたから連れてきただけ、ただ、一緒に仲良く眠っただけだよ」
「ふ、服?いや、君が汚して自分で着替えて、え?嘘?なんでそんな」
「大丈夫。何もない、何もない!何もないってば、本当だよザッキー!信じて?」
前の日の晩のエントランスにて、悪い夢を全部消すと断言していた鼻息荒い王子は、その舌の根も乾かぬうちに俺に流され、求められるがままに優しく優しく俺に触れ続け、そして全部を丸ごと慈しむ様に大事に大事に俺を抱いた。
なのに彼はあの朝、語るに落ちる馬鹿げた嘘を、これでもかこれでもかと俺に投げていて、その惨めで、大層格好も悪い姿に俺は半分呆れてしまって。
「え?酔って?あぁ、確かに昨日はボクも飲み過ぎてしまってまだ抜けきってるとは言えないかもだけど……でも、本当だから」
ボロボロの突込み満載の酔っ払いのままの王子のつく嘘。けれど、それだけ愛してくれているのだな、と体の隅々にまでそれを感じた。あんなにも愛してくれていた彼が必死でその事実を隠そうとするその理由は、俺を傷つけまい、ただそれだけなのだと彼の全部を体で知った事で盲目的に信じる事が出来たから。
「何もないって、何がッスか?王子?」
「ボクはつまり、キミが怖がるような事なんて、何も……何も起きてないって、言いたくて」
寝乱れた長い前髪を、すっ、と掻き上げ、困り眉。でも、その姿は酔って抱いた過ちを悔いるモノではない事が明らかだった。彼はいつでも優しくて、あの日俺の為に己の思いに蓋までして、そうやって自分の全部で俺を守ってくれようとしていた。そして、今も尚。
「そッスね、何も起きてませんよね」
「……信じてくれる?」
その顔には未練。俺を騙したままでいたくて、けれど騙されて欲しくなくて。かつての俺と同じ心理、そして同じ感情がそこに。理性的な彼が処理しきれぬほどの、あまりの思いの激しさ、愛おしさに、自分の今の思い全部を彼に伝えたくなる。
「はい、信じます、王子」
「そう?よかっ」
「愛してる人に愛される。なんにも怖い事なんて起きてませんよね?」
「ザッ……」
思えば、最初のあの朝からだ。飛び付いて抱きつく王子に面食らって、俺はヨタヨタ押し倒されて。
「なあに?ザッキー」
クスクスと思い出し笑いが零れていたのか、その不審にパンを片手に一生懸命モクモク食べている王子が眉を寄せて不思議そうな顔をした。
「いえ、別に」
「何?言わないと酷いよ?」
酷い事など出来るわけもないくせに。優しい王子の減らず口に、俺はまた笑いが零れてしまう。
「そういや、あの日も俺の日だったのかなって」
「は?何それ、意味通じないんだけど」
夏のファン感、あの日も確かに15日。そんな偶然が今更ながらに、俺を一際楽しくさせる。10月15日を自分達の日だなんて指折り数えてこの人は、あの日の夜を一体何を思いながら俺を堪能した事だろう?
ゆっくりと二人で迎える穏やかな朝。テーブルの食器を片付けた後も、俺達のチャームは二つ仲良く寄り添っていて、王子とそれを見つめた後に、負けてられないと笑いながら寄り添い合う。そして全身を絡ませ合うようにお互いの全てを愛おしむ様な、沢山のエッチなキスをしたのだった。
おしまい
