お花結び

GIANTKILLING二次創作小説同人サイト

*

ジノザキDay2014赤崎編

【69956文字】
両片思いの赤崎目線ジノザキ。少々ポエム調?乙女崎寄り。
ジーノ月間突入!ジノザキデー間近!という事で1日1追記を目標に15日まで30お題消化しました。10/1~10/15連載。お題の順番はバラバラ、無理強いな消化もアリ。ジーノの捏造彼女、赤崎の捏造仲間など出てきます注意。

6. Wearing each others’ clothes/お互いの服を着る

 貧乏だからしょうがないとは言わない。けれどうちのホペイロがホペイロ業専任ではないから、ところどころ多忙により至らない部分が出てきてしまっているのは事実だ。今日もまた。

 時々間違う、ロッカーに置かれる練習着。今日も今日とて、よりによって王子の練習着が俺のところに。洗濯後のものだと思ってはみても、あの王子のものだということが俺の心臓をドキドキさせる。誰もいない今なら。彼そのものでなく無機質なこれなら俺だって触ることくらい出来るはず。そんな気持ちで少し緊張しながら王子のそれを手に取った。俺だって同じ練習着を支給されてるし特に珍しいものでもないけれど、彼が身につけてるものだと思うだけで手が震えた。

 知らないうちに両手でくしゃりと握りしめながら俺は服に顔をうずめていた。襟がないと嫌だと言う彼は、この襟付きの白い練習着がお気に入りで、少しでも汚れが目立つようなら即交換を申し出る様な人だった。

“本来、試合用のは当然の事、練習着ですら再利用なんてありえない話なんだけどね”

 そんな風にビッグクラブのやり方を口にしては現状のうちのチームの経済状態を腐す王子。それでも彼が愛されるのはそれなりの素直さで袖を通し、作業に当たっているスタッフへの感謝を忘れないからだ。

“使い捨てなら楽なのに大変だよね?いつも綺麗にしてくれてありがとう”

と。

 そんな王子だから手にした服はいつも通り新品同様に仕上がっていて、いっそ王子の気配すら感じさせないくらい全く味気ないものになっていた。
 これはたかが布きれであり、あのサッカーの申し子のような王子ではない。そんな当たり前の事を思い、俺は日の光にかざすように両手で彼の練習着をキュッと空中に掲げて広げてみせた。

(あ、俺と同じサイズ?)

 確かに考えてみれば身長も体重も彼と俺とはさほど変わらない。

(じゃあこれ普通に着れるな、俺も)

とサイズのタグを見ながらそんな事を考えた。王子の使う物をこの身にこっそり?たかが服でも、握りしめているよりかは王子を近くに感じる事が出来るかもしれない。
 突然誰かがやってきて、ぶしつけにその姿を見られてしまったら?大丈夫だ。サイズも同じ。ロッカーに置かれていたんだから、気が付かなかったふりをしてればなんとか誤魔化せる。でも、そんなことを考えるだけで異様に興奮してしまう自分が怖かった。

「馬鹿馬鹿しい」

 何故か不思議なチームのルール。白い練習着は彼しか着ない暗黙の了解。間違えたなどと空々しい。
 俺は急に我に返って、忌々しげに彼の服を彼のロッカーに投げ入れた。それもことさら乱暴に。クシャクシャで王子が怒るって?知るかそんなこと。最初に間違えたのは俺じゃねぇんだから。

3. Gaming/watching a movie/ゲームする/映画を見る

 彼は気紛れで我儘が過ぎると言われることが多いけれど、日常生活の中で彼の発言を細かく聞いていけば気紛れでも我儘でもないことがよくわかる。彼は気分に左右されない、常にとてもフラットなメンタルを維持している選手だ。
 例えば映画評。彼は映画が好きなんだろうか、付き合いなんだろうか、ありとあらゆるジャンルのそれを見に行っているようだ。ロッカールームで話題になる映画は必ずと言っていい程王子も見ている。大ヒット映画も、マイナーで人を選ぶ映画も、そのジャンルは無頓着な程幅広い。

“〇〇が〇〇なシーンが印象的だった”

 端的な王子のトーク。それらはすぐに周りにも一瞬にしてイメージ出来るものであり、ああ、ああ、それそれ!などと盛り上がる。彼はそれを見て笑う。そんなことが常だった。

 好きとか、嫌いとか。面白かったとか、退屈だったとか。そういう言葉が出てくることはとても少ない。彼は映画を鑑賞するかのように観賞するので、心情より映像、ストーリーより音楽を口にすることが多かった。俺はそのことが兼ねてからとても気になっていた。だから今日はついこんなことを王子に。 

「で、その映画、面白かったンスか?」
「ん?」
「だから、面白かったンスか?って聞いてるんですよ」

 俺がそんなことを彼に質問した時、彼は少々意外だったのかくしゃりと目を細めてこう答えた。

「そんなあやふやな基準のないもの、みんなにもキミにもおよそどうだっていい話だろう?」

 今度は俺にとっての意外な言葉。冷たく切り捨てる様な距離感にドキリとする。確かに、思えば自身の事を口にする際の彼の言葉はどこか説明口調であることが多い。サッカー以外の事に関しては更に顕著な傾向な気がする。仲良く話に盛り上がっている光景は単に装いのそれであり、俺達の事全て、王子にとってはほぼ無関係な“どうだっていい”世界だという事なんだろうか。

 すると俺のそんな反応を気にしてか、

「ああ、ゴメンゴメン、変な言い方になっちゃったかな?さほど深い意味を持たない極私的な主観をイチイチ口にすることにあんまり意義を感じないタチなんだよボクは。だって思いなんてその時々で“振れるもの”だし」

 そして彼はツカツカと歩み寄って俺の耳元に囁くようにこう告げた。

「でも、それを知りたいって思われる事は嫌いじゃないよ」
「え?」
「ボクに興味がある、って証拠だからね」
「あ、いや俺、別にそんな意味で」
「フフ、他人の極私的な主観に触れるのはとても楽しい。意味のあるなしに関わらずね」

 そのまま彼はひっそりと盛り上がりの輪から外れて帰って行ってしまうので、結局俺は王子がその映画についてどう思っていたのかよくわからなかった。
 そして、意義を感じないと言いながら、極々私的な気持ちを吐露してくれていた事にマヌケな俺は気が付くこともなかったのだった。王子はこの時、俺に興味を持たれていることを好ましく感じていると、ポリシーを超えてハッキリと俺に告げていたのに。