お花結び

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ジノザキDay2014赤崎編

【69956文字】
両片思いの赤崎目線ジノザキ。少々ポエム調?乙女崎寄り。
ジーノ月間突入!ジノザキデー間近!という事で1日1追記を目標に15日まで30お題消化しました。10/1~10/15連載。お題の順番はバラバラ、無理強いな消化もアリ。ジーノの捏造彼女、赤崎の捏造仲間など出てきます注意。

8. Shopping/ショッピングする

 大騒ぎが始まって、準備でカリカリしていた広報を怒らせた俺はその罰としてイベントで使う雑貨を買いに行く羽目になった。キッカケはファン感の打ち合わせの最中、丹さんがコソコソ去年の俺の写真を椿達に見せようとしてたこと。最悪なことをされそうになった上に一番面倒臭い仕事を押し付けられそうになった俺はかなり不機嫌。

「今の俺が悪いのかよ!違うだろ!?」
「違うくないわよ!ほらこれ!現段階で思いつく欲しい物全部このメモに書いてるから!」
「なんで俺がそんな一番面倒臭い係やんなきゃいけねぇんだよ!椿らがガチャガチャうるせぇから俺が打ち合わせに邪魔だッつっただけだろ?この場合あんたは罰どころか感謝こそ」
「怒鳴らないで!いいから、さっさと買い出し行ってきてよ!」
「聞けよ!」
「ハイハイ、わかりましたから頭冷やしながらいってらっしゃい!」
「なんだよそれ、ちっとも聞いてねぇじゃな、おい!こら!」
「四の五の言わない!早く!」
「んだと?何様のつも……」

 その後あまりの剣幕で引き摺り出されるようにあの女から会議室を追い出されたので、俺は大きな溜息をついて買い出しに出かけることにした。

(このタイミングで追い出されたら丹さん達のやりたい放題じゃないか。あー、考えただけでもムシャクシャする)

 まるで言い負かされたみたいな気分になってしまったので、違うぞ?俺が大人なんだ、とか、女相手にガチでやりあう訳にいかないじゃないかこんなの全然フェアじゃない、とかなんとか。俺はそんな風にゴチャゴチャと言い訳がましい自分の脳内を宥め透かししながら廊下をノシノシ歩いていた。

 するとコツコツ特徴的なあの靴音が。どうやら、こういう雑務とは無縁の男が呑気な面して向こうから近づいてきているらしい。それもこんな間の抜けた時間に。

「王子、今頃どうしたンスか?」
「あれ?ザッキー?どうしたのさ、こんな時間にキミがまだ着替えてないなんて」
「あ、もしかして」

 そう、今日はファン感の準備が間に合わないとかで急遽打ち合わせと準備の作業をぶち込まれたおかげで、練習が午後から午前に変更となっていたのだ。

「なんだ。朝、なんか見かけないと思ってたらサボりじゃなくて連絡ミスだったのか……」

 毎年この時期になると“有志によるボランティア”と称してほぼ強制的にみんな準備の手伝いに参加させられるのは恒例の出来事だった。だが今回のように本当にギリギリになって練習のスケジュールを変更する程逼迫するのは初めてのことだったので、なるほど、そのドタバタでこの手の情報伝達がポッカリ抜けたのかもしれない、と俺は考えた。だってこの人は当日10分でも顔出ししてくれればいいからとかお願いされる、例外中の例外の立場だからだ。所謂チームで一番気楽な王子。打ち合わせなんて当然不参加に決まっているから、準備関連の情報伝達先として頭から除外されてても不思議はなかった。

 せっかく来たのに練習がない。こんな空振り、思いっきり腹を立てるに違いない。練習を自らサボる事はあっても、王子は自分を瑣末に扱うことを許さない人だから。
 そんな事を考えて思わず俺はやりたくもないフォローをする羽目になる。この人に今へそを曲げられてはファン感当日に押し寄せるであろう大量の王子サポのみんなに顔向け出来ない。

「なんか今年は結構凝り過ぎで大変らしくて……悪いんスけど、多少のバタバタは大目に見てやってくれませんかね。まあ、俺が王子に謝るのも変な話だけど」

 謝り慣れないたどたどしい俺の言葉を聞いた王子は、怒るより前にクスリと笑って、全くキミはお人好しだね、と言った。

「ねぇ、そんな風にかばってみせるなんて、もしかしてキミ、彼女のことが好きなの?」
「な!そんなわけねぇだろ!?」

 突然何を言い出すやらと驚いた俺が敬語も忘れて素っ頓狂な声を上げたので、王子は吃驚した顔をした後、知ってるよ、ただの冗談なのに、とまたクスリと笑った。

「ありがとう。キミをからかえたおかげで不愉快になるはずの午後がとてもいいものになったよ。本当にキミは面白いなぁ」
「……俺は面白くもなんともねぇッス」
「プッ」

 言葉では不機嫌を装いつつも、実は俺の方も楽しげな王子の姿を見ているのは満更でもなかった。

「それにしてもそっか……今日練習ないのか」
「はぁ、もう終わっちゃいました。みんないるけど打ち合わせ中ッスよ」
「成程ね。でもさ、なんでそんな忙しいのに、こんなところでキミがフラフラしてるの?」
「ああ、俺は今からイベント用の買い出しで……」
「ふーん」

 何処に行くの?何買いに行くの?珍しい王子の根掘り葉掘り。最後にこんな台詞を言い出した時、俺はさっきよりも頓狂な声を上げることになったのだった。

「ボクもついて行こうかな?」
「はぁ?」
「行ってみたいなそのお店。興味あるけど行ったことなくて」

 行った事がないというのは別に意外ではなかったけれど、王子が興味を示した事、そして一緒に行きたがった事について俺は大層驚いた。二人きりで外出?

「いいじゃない、連れてってよ。キミと一緒ならボクがそういう変なお店にいても違和感ないし」
「変な店って、何気に失礼でしょそれ。っていうか別に大したところじゃないですよ、そんな……」
「あ、そういうのはどうでもいいの。なんてったって、ぽっかり空いた午後の時間を一人で暇に過ごすなんてつまんないからさー?急だし、平日だし、今からじゃ簡単には遊び相手見つからないもの。だからさ、別にいいでしょ?道案内よろしくね?ザッキー」

 そんなに暇なら猫の手も借りたい奴らの集まる会議室行って何か手伝ってやれよ、と突っ込みたかったが、うっかり王子の物見遊山な表情に騙されるところだった。彼の自発的なこの申し出はまさに俺の手伝いを買って出たという事だ。まるで本物のお城の王子様のように殆ど労働と奉仕を知らぬ人がだ。
 
「……ガラにもないことを……」
「なんか言った?」
「いえ、別に」

 そうとは簡単に認識しにくい言い方を選ぶのは彼のへそ曲がりと、同じようにへそ曲がりな俺に対するある種の配慮の賜物だったのだろう。二人で街に買い物に出掛ける。こんな日が来るなんて一度も考えたことがなかった俺は、思いがけないこの王子の優しい提案に触れてとても嬉しかった。だからこのビックサプライズに免じて、俺は丹さんと広報の仕打ちを許してやることにした。

 くそったれな午後になるはずだったのは俺の方。王子のおかげでいい一日で終わりそうだ。そう思った。

10. With animal ears/動物耳(猫耳とか)をつける

 & 

11. Wearing kigurumis/きぐるみを着る

 優しい王子の配慮の賜物。その言葉は即刻訂正させてもらう。何故なら、王子が俺についてきたのは紛れもなく暇つぶしの物見遊山だったということがわかったからだ。
 全国チェーンの大型激安雑貨店。二人でそこに到着した途端浮かべた王子の興奮した表情ったらなかった。あの瞬間から多少嫌な予感はしていたんだ。

「ねぇ、何?あれ何?行ってみようよ!」

 買い物の手伝い?まさか!邪魔こそすれだ。

「これ何に使うの?えー?ナニソレ、わざわざ買う人いるの?」
「シッ!ちょっとは静かにしててくださいよッ」
「ハハハ!見てよこれ、くっだらなーい!」
「ちょ、やめろって!ただでさえあんた目立ちやすいのに!大人しくしてねぇと王子はっ、て聞けよ!」

 ヒソヒソ話しかけてる俺の事など全く以っておかまいなし。自由気ままに歩き回る王子は勝手気ままな我儘王子。あちらこちらに置かれている奇妙な商品を見つけては、大層上機嫌に手招きして俺を呼ぶ。遠くからもよく通る彼の声は平日昼間の人影まばらな店内に響き渡り、黙らせるためにいち早く駆けつけようにも否が応でも、ほら。

「ねぇ、あの人恰好よくない?」
「あ、マジイケメンじゃん!日本人じゃないのかな?鼻高ーい」
「色んなものが珍しいみたいだね、あれかな、初めてのお遣い?ローマの休日みたい。かわいー」

「ちょっと、ね、ほら!」
「嘘、もしかしてあれ、王子ジャン」

 見ろよ。周りの女どもが王子を知る人知らない人全く関係なしに、全員貴方を見始める。それに気付かない男じゃなかろうに、どうして今日のあの人はこんなにも?まるで子供みたいだ。今日の王子。

 簡単にマークを外される俺も俺だが、心底目立つこの男が俺を振り切る時だけは一切の気配を絶つからタチが悪い。見つけてもスルスル客の間をすり抜けていくあの足取りは彼のドリブル時の姿のように華麗で、そんな場合でもないのに呆け顔でその後ろ姿を見送ってしまう。

 けれど、プライベートを楽しんでいる芸能人のような彼を、ぶしつけに声かけて邪魔するド心臓な人間は今のところいないらしい。はしゃいでいるように見えて、ここなら大丈夫だと王子なりに冷静に状況を判断しているなら大したものだ。つけ耳のおもちゃを玩ぶ男を見ながら溜息交じりに俺がこんな事を考えていたら、満面の笑みで彼が言った。

「ザッキー、ねぇ、こういうのキミもつけてたよね、去年。違った?」
「だああああ!ちょっと黙っててくんねぇかな!王子!」

 当然、店員に怒られたのははしゃいでいた王子ではなく、不運なこの俺だった。なんて事だ全く。

「これ意外にさぁ」
「うっせぇよ!!!!」
「そんな怒らなくても……ボク犬派だけどあの猫のコスプレは凄く良く似合ってたってキミのこと褒めてあげようと」
「あああああ!! 褒め言葉でもなんでもねぇよ! 今すぐ記憶から消せ!! 音速で消せ、光速で消せ!! 頼む! 黙れ! 忘れろ!!」

 スイマセン、わかってるんです。騒ぐつもりはなくて、ホント、この人が悪いんです。会議室でやった大騒ぎをこんなところでもまたやる羽目になるとは。

(あぁ勘弁してほしい、最悪だ)

 俺は泣きたい気持ちになってしまったのだった。