鬼交譚1
【29150文字】
ジノザキデーですね(呼ばれてなくてもジャジャジャジャーン)。MEMOでも書きましたが以前書いてた中編?を今日から連載していきます。はい、まだ全然終わっていないんです。
鬼とか出てきますがオカルトというよりファンタジー寄りの転生ものです。環境は原作のものを使っていますがほぼ創作に近いくらい特殊・虚偽・ねつ造です。ご留意ください。
20200923
投稿単位を考え直しある程度まとめて再UPしてみました。これまでの投稿文は赤崎幼児期~再会、ジーノ幼児期~、新規分が初エチシーン含む今現在
結論から言えばジーノは鬼ではなかった。当たり前に赤崎を知らず、最近ようやく名前を覚えたくらいだ。
(ま、それすらまともには……なレベルだけど)
「ザッキーさぁ」
「あか『さ』きです」
それでも、錯覚するほどよく似ていた。
(なんだか本当に不思議な話だ。俺ですら、まるで信じられない)
赤崎の前には今まさに、懐かしい姿が立っている。
(すげぇ、当たり前だけど睫毛の先まで鮮明に……同じ『人間』なんだよな?)
感じた違和の空気はやはり色濃く、人外を思わせるその輝きは当時よりも強くさえ感じられた。
*
ぼんやりとロッカールームの端で赤崎が座る前に、立ちはだかる人の影。
「あのさぁ、ザッキー。一度聞こうと思ってたんだ」
物言いでそれがジーノだとわかる。
(あか“さ”き……)
そんな風に言いかけながらも、奇妙な圧が漂っていたため思わず言葉を飲み込んでしまう。
「何……スか」
「君、何か用があるよね」
「は?」
「あるでしょう?」
(あれ?俺、クラブからの伝達とか、なんか預かっていたっけか)
思い当たる節などなかった。
「いや、用ってそんな別に」
迷い目を泳がせる赤崎を逃さぬように、ジーノは懐柔するように優しく続ける。
「言いなよ」
「ありませんよ」
「あるよ」
「ないって言っ」
「今ちょうど誰もいないのに?」
人目を気にするジーノへの用事。一つだけ思い当たることが脳裏に浮かぶと、嫌な汗が背中に滲んだ。
「そ、それが?意味がわか」
「いつも凄い目で睨んでいるだろう?それも初日の挨拶から」
「!?」
「気付かないほど鈍感じゃないよ、僕は」
この男の聡さは既に知っていた。だが、素知らぬ顔で数年過ごして、何故それを今更言いだすのか?いきなり心に手を突っ込まれ、ぶしつけにかき回された気分だった。
「それ聞いてどうするつもりッスか?」
喧嘩腰を漂わせる口調であったが、ジーノは意にも介さない。
「どうって……んー、それを考えたくて聞いたんだけど」
「全然答えにもなってませんね」
「だって、そもそも何かを提示する必要なんてあるのかな?君に親切なだけのこの僕が?」
淡々と、そして冷徹に。ジーノには日頃の笑顔も物腰も仕草も紛い物に思えるような、人を突き放す情のなさがあった。
「この機会が不要なら取り上げてもう渡さない。つまりは、それでいいって判断かい?」
これは打診でも挑発でもない、即答出来ねばすぐに去る、そんなジーノの意思表示だった。ただ気まぐれが今を作り出して、意味がなければ単純にやめる。
(相手のことなんてお構いなしかよ)
何故ここまでデジタルたりえるのか。赤崎はジーノの行動原理に、人としての異様を感じていた。
「あんたって本当に勝手っスね」
「心外だな。こんなにも優しいのに、わからない?」
「……」
「優しいけどそんなには暇じゃない。単にそれだけの話だよ」
負けず嫌いの赤崎はだから、まじまじと見上げ男に噛みつく。
「焦れてんなら、素直に頭下げて頼めばいい」
そう、その目だと言いたげに、ジーノは黙って目を細めている。
「おや、用事というのは足元にでも落ちているのかな?」
クスクスとふざけて笑っていて、どうでもいいとそれを遮り赤崎は言った。
「ちゃんと説明してくれるなら言いますよ。あんたがそれを約束するなら」
二度とないチャンスをぶら下げられても、飛びつくことなく不敵に笑った。それでも心の奥底では、もしやとまさかの振り子が揺れた。
(正面切って言えば答えが出るか?にわかにはとても信じがたい)
*
「あの時は笑ってしまったよ」
クスクスと笑いながらジーノが言うので、赤崎は腐すように返事をした。
「いい加減、あんたもしつこいッス」
「だって、知人に似過ぎているから見てただなんて、そんなベタな作り話」
「別に作り話なんかじゃ」
「だって小さい頃の知り合いだろう?そうしたらその人は今いくつ?作り話じゃないとしても、同一人物の訳がない」
「……」
「そんな聞くまでもないことをあんな真顔で……ははは、本当にザッキーって面白い」
結局恥ずかしくて『鬼』の話は出来なかった。馬鹿にされるのも嫌だったし、気味悪がられるのも怖かったのだ。今こんなに笑う姿を見れば、言わないでよかったくらいの気持ちにもなる。
「それに、あんな滑稽な口説き方も初めてだ」
「は!?口説く?」
「え?違うのかい?」
「当たり前でしょう!?」
ジーノはひどく驚いて見せたうえで、さらりと気を取り直して赤崎に言った。
「なるほど、てっきり……知らなかった」
「し、知らなかった、じゃなくて勝手に勘違いをしてただけでしょうに」
「勘違い、ねぇ」
それを聞いたジーノは意味深に口角を僅かに上げて、肩を竦めておどけている。
「こういう勘は一度も外したことがないんだけどね」
「どこまでも自分が中心で世界が動いてると思ってンスね、あんたって人は」
「中心?この僕が?」
やや考えるそぶりをしてからジーノは意外な言葉を口にする。
「……んー、どうかな。結構そうでもない感じ?」
「は、またそんな」
「ううん、昔から時々おかしなことがあったりして……ザッキーは信じる?こういう話」
