お花結び

GIANTKILLING二次創作小説同人サイト

*

鬼交譚1

【29150文字】
ジノザキデーですね(呼ばれてなくてもジャジャジャジャーン)。MEMOでも書きましたが以前書いてた中編?を今日から連載していきます。はい、まだ全然終わっていないんです。
鬼とか出てきますがオカルトというよりファンタジー寄りの転生ものです。環境は原作のものを使っていますがほぼ創作に近いくらい特殊・虚偽・ねつ造です。ご留意ください。

20200923
投稿単位を考え直しある程度まとめて再UPしてみました。これまでの投稿文は赤崎幼児期~再会、ジーノ幼児期~、新規分が初エチシーン含む今現在

「王子」
「ん?」
 その人は赤崎が王子と呼べば、イラつくほどの笑顔を浮かべる。
「なに?ザッキー、どうしたかしたかい?」
(消えない……)
何度も何度も繰り返した儀式。今、この世界には声があり、そして消えない姿がある。
(ああ、あのアとイは、そうか、ザとキだったか。は、これはどうにも、なんとも……あぁ……)
何故あれが“愛”だと思ってきたのか。そう思いたい気持ちを抱えていたのか。鬼に心を求めていたのか。
(穴があったら入りたい……)
「どうかしたかい?顔が赤い」
「べ、別に赤くなんか」
「エッチなことでも考えて?」
「そんなわけ……あんたじゃあるまいし」
反逆的な態度などジーノは全く気にもしない。
「ザッキー」
「だから、あか『さ』き……ッス」
繰り返し見た夢と同じ表情、伸ばされる腕。頬を撫でてるソフトな感触。手先の体温に甘えてみせれば、ジーノは必ずキスを降らせる。
 いつしか二人はこういうことをする関係になっていった。口説き口説かれたの話は冗談と化して、それでも無邪気な犬猫のように、当たり前に常にじゃれあう。
「……ねぇ、まるで恋人同士みたいだね」
(まるで、か。そうッスね、似ているけれど確かに違うものだ)

*

 チームメイトとの昼食の約束が駄目になった日、
「それじゃあ、僕と食べに行くかい?」
と、ジーノはそんな風に声を掛けた。楽しげに笑う笑顔、歌うようなその声色、まるで赤の他人だというのに懐かしい存在の記憶が浮かんで、赤崎は戸惑ってしまう。
「楽しかったね」
別れ際には名残惜し気に、翌日の再開時には光零れるような挨拶、聞こえない音楽に合わせて踊るような仕草、プレイ、その足取り。姿がなければ無意識に追い、見つければ気持ちがふわふわする。
(違う、王子はあの幻じゃない)
頭では何度も繰り返すのに、心が求めてしがみつく。
 それでも惚れた腫れたとは違うキスが、ジーノと赤崎を淡く繋ぐ。はじける線香花火のように、儚く、か弱く、光って消える。これをされるたびに赤崎は思う。
(あの頃辛くて鬼を作り、それでも辛くて全部を消した。泣いてこの世に生まれてきて……辛いのが人生なんだと俺は)
今、声があり、熱があり、重みがあり、求めていた腕が体に絡んでいる。目を閉じ耳を塞いで暮らした心細い日々を、少しずつキスが思い出させる。
(ああ、本当にとても不思議だ)
 欠乏が満たされ、染み込んで、違うどこかがまた餓える。貪欲と充足が螺旋葉序のように、周りに繁茂し秘密と化す。赤崎はこれがなかった今までを想い、ジーノは何も言わぬままに。
「王子、擽ったい」
「ふふ」
鬼は夢で『大丈夫』と赤崎に笑い、『待っていて』とキスをした。その過去を知っているかのようにジーノは戯れる。仕草や感触、纏う空気が、赤崎を深く錯覚させる。
(来てくれたのだろうか?人になって)
あの夜の夢の続きのように、優しく指先が赤崎を撫でる。うっとりと目を閉じ思い出すは、奇妙で切ないぼやけた記憶。
(王子、教えて欲しい……近づいた理由は?こうする意味は?結局あんたは何者なんだ)
そんな赤崎をじっと見つめて、ジーノはその名をもう一度呼んだ。

*

 ある日。
「あっ……」
すっかり失われたあの夜の記憶が、胸に触れられてシンクロした。
(今までキスするだけだったのに)
同じ感覚、同じ表情。魂が震える鬼交の夜。浮かぶは不安と既知の欲望。忌まわしき服従のあの喜び。
「嫌?」
「なんか、ちょっと怖い……ス」
「やめておこうか」
「別に平気、ッスけど」
「そう、ならよかった」
這う指先はまるで歌のよう、服と意志をするする奪う。
(ああ、これだ……知ってる、俺……)
こうして胸に触れられることはなんとも奇妙な感覚だった。なのに、先への期待がどこかにあって、やはりその心地よさへと導かれる。
(こんなの弄られて感じるとか……恥ずかしい、けど……ああ、すげぇ……どんどん善くなっ……)
ぼやけた焦点があっていくように、体が感度を思い出す。
「もう少し続けても?」
囁きにおずおずと頷くと、優しく笑ってキスをしながら、爪を軽く立てられる。
「んっ」
「痛い?」
首を振る。
「そう」
途方もなく丁寧で、そして時々残酷に鋭い。蕩けて竦んでまた緩んで、落差は快楽の渦を育てるように大きくしていく。愛撫は少しずつ下に降りて、警戒と弛緩が激しくなる。
「すごいね、いいところがこんなに沢山」
もう自分の意志では体が動かせず、反射で不随に跳ねるだけだ。
「かわいい……ザッキー、じゃあ、ここも?」
(!?)
最初は入り口を這い回り、指は少しずつ粘膜に至る。未知なる感触が恐ろしく、でも体は普通に昂ぶりを増す。
(いやだ王子、なんでこんな……)
怯える子供を宥めるように指は異様な行為をじわじわ続けて、赤崎は無力に身悶えた。
「ねぇ、わかる?」
ゆっくりと入れたり出したりしているところを、見るように指示され見てしまう。
(なんか、あっ、すげぇこと、され……っ)
指が自分を犯す光景を目にして、じわりと涙が浮かんでくる。拒絶か恥辱かと問われれば、悦びとしかもう答えられない。
(あ、いやだ、俺……駄目になっ、……)
単調な動きが逆に予想を可能にするので、いいところを通過する期待に体が震えた。ジーノはそれを素直に楽しむ。
「ああ、この辺りが好きなんだね」
「ふ、……っ、ぁ」
増やされた指にまた慣れてきた頃、ジーノは念入りにそこを愛撫した。ややもすると痛くもある場所だったが、さじ加減は絶妙で、指は執拗にそこを攻めて、未知なる快楽を叩き込んだ。
(駄目だ……声、出る……ヤバい、クチュクチュ、なんか音がエロ過ぎて……)
ジーノの観察力はやはり異常で、心を読むように赤崎に言った。
「そんな聞き耳立てちゃって……いやらしいなぁ、好きなのかい?」
液を増やして音をわざと立てられて、堪えきれずに赤崎は喘いだ。ジーノは嬉しそうに微笑んで、貪欲に把握し理解を深め、傀儡のように赤崎を愛でた。
「さあ、一杯聞いてね、この音」
「王子……っ、駄目だ、もうイき、そう」
「いいよ」
「そんな、ことっ、あっ、音、や、すご……っ、あ、っ!」
先走りとローションでぐしょぐしょのそれを、ジーノがわざと音を鳴らしながら扱き始めた。何故ジーノがそれを望むのか。何故それを自分は受け入れるのか。疑問は沢山浮かびながらも、快楽がすべてを押し流す。
「や……無、理……っ、王、子っ、ヤバ、あっ、あぁあっ!」
導かれるままに堪え切れず吐精してしまった。
「いい子だザッキー、よく出来た」

(嘘だろ……俺なんてことをさせちまっ……)
 大それたことをしてしまった思いが赤崎を苛立たせる。
「自分で拭きますから、王子もとっとと手ェ洗ってきてください」
八つ当たりに対し、珍しく無反応なジーノに気付いて、どっと嫌な汗が流れ落ちた。
「いや、なんつうか、別に嫌だったとかそういうことじゃなくて」
「……」
「ちょっと素に戻っちまったっていうか、だから……」
「……あ……ごめん、ね?」
「だから違っ」
静かにソファから立ち上がって、
「洗ってくるよ」
と行ってしまった。
「おう、じ……?」

*

 あの日からも二人は普通にキスをし、抱き合い。そして。
「王子、触って……」
「うん、どこを?教えてザッキー」
赤崎がそれを望む時だけ、ジーノはするようになっていった。
「ここ……?」
指を挿れたり握ったり、丹念に快楽を仕込まれて、射精を促される度ごとにそれへの欲求が強くなった。
(こういうのよくない……わかってんのに、また……)
ジーノとの行為の虜になるのに、それほど時間はかからなかった。

*

 繰り返される戯れの日々。
(ヤベ……もうイきそう……)
 感覚がどんどん研ぎ澄まされて、日々行為と欲望が進化していく。中に、奥に、もっと深くと、ジーノをとても求めていた。完全に抽挿に飼い慣らされて自分で何を望んでいるのか回を増す度、如実になる。
(王子……)
こわごわとそれを口にすると、ジーノは涼やかにただ笑った。
「どういう意味?」
「だからっ、!いいっつったら、いい、ってこと……っス」
「わからないよ」
あんたも男なら出したいだろ、そのための用意もしてんだろ。乱暴に怒鳴りつけるような物言いをジーノが穏やかに受け止める。
「ザッキーは誘い方に色気がないなぁ」
「悪かっ」
「ううん悪くないよ、全然いい」
天使のように笑うジーノをズタズタにしてやりたいほど、切迫が赤崎を追い詰めていた。暴れる欲望に涙が浮かぶ。
「ん、王子、っぁ、はや、くっぅ……」
「待って、今服を脱ぐから」
言われて頬が朱に染まる。ジーノがボタン一つもはずしてないのに、今まで気付きもしなかったのだ。悩まし気な目で赤崎を見下ろし、ゆっくりはだけていく胸元、ベルトを外す音が聞こえる、それが見える前に目を閉じた。直視出来ない淫靡だった。
「おや?急に静かになった」
体が熱いか怖気が走るか、震えで体が竦んでいる。
「全くいつも君は突然。始める前に言ってくれればそれなりの手順で出来たのに」
心臓の音がうるさいのに、耳は冴え冴えと室内の音を拾う。戸棚の開閉、淫らな水音、ジーノが何をどうしているのか、否が応でもわかってしまう。
(あ、早く……早く王子っ……)

 それでもしばらくはいつものように体中を弄られた。焦れて、焦れて、懇願し、やがてようやく。
「あっ!、っ、ふ……ぁ、あ、あ!」
(う……なんだこれ、痛くて……熱くて……どうにか、なっ……)
拒絶する体をジーノは上手に手懐けながら、願いを二人で叶えていく。
「ねぇ、乱暴したくなってしまう。かわいいもほどほどに頼むよザッキー」
じわじわ入れては腰を引かれ、追えば少しまた入れてくれる。
「痛いよね、ゆっくり、しよう」
「、ぁあ……、あ」
「ねぇ、僕の話聞こえてる?」
鬼交とは、快楽に自我を失い陽気を吸われ、やがて枯渇して死ぬ呪いだ。ならば今まさに蘇りつつあるこの感覚は、つまりはそれかと赤崎は思う。
(眩暈がして、耳鳴りが酷い。五感が狂っていくような……)
他者に犯されるという事実。欲望をこの身に受ける現実。嘘のような二人の秘密、溢れ零れる幸福感。
「あ、……お、うじっ……」
「うん、焦らないで、そう……少しずつ僕を感じて」
「あ、ぁ……っ、あ、うぅ」
「そう、上手だザッキー、そのまま、深くゆっくり息をして」
耐えながら徐々に飲み込んでいけば、それを讃えるようにジーノが囁く。中が形に馴染んでいけば、また少し挿入を深めてくれる。
「……ん、あぁ、っ、そこ、いっ」
固いながら弾力のある熱いものが赤崎の弱点を通過した時、あられもない声が部屋に響いた。
「うん、君の好きなとこだ」
「あ、あ……っ」
絶妙な指の加減とは異なる、強烈な刺激が全身を貫く。再び形に馴染むまで、圧をかけられた状態で動かずそのまましばらく過ごした。
「いっ、あぁ……ふぁ!あ、ああ……」
時々快楽で体が引き攣って、その振動でまた体がまた跳ねる。
「ザッキー、それ駄目……優しく出来なくなっちゃうよ」
痛く苦しく、とても切ない。とまらないほど気持ちがいい。
「ね、聞いて」
「……ん、あっ、」
「お願い、無茶はさせたくない。急には君が壊れてしまう」
快楽を追う腰がベッドから完全に浮いて、ジーノが手を添えてそれを支える。両サイドの骨盤のくぼみに親指が食い込むと、内臓が捩れるような快楽が生まれた。
「待ってザッキー、気持ちいい」
ジーノもまた耐えられないのか、時々抽挿がやや強くなる。
(ヤバい……絶対、俺、今、あ、あっっ、!そこ、もう……限界……っ)
もう駄目だと思った瞬間、引き攣り動けぬ体の中で熱い何かが弾け散る。零れるほどの絶頂に満たされ、内臓がジーノを飲み込む大蛇のようにぎゅうぎゅうと締め付け収縮していた。
(いやっ……これ、どうなっ……?)
羞恥と呼ぶにはあまりに過激な、絶望に近い淫らさだった。
「あ、あっ、何っ、や、ぁっ」
「大丈夫?ザッキー目を開けて」
固く抱くジーノの両腕が、絶頂の恐怖ごと赤崎を包む。もちろん、それでも波は静まらず耐えきれるものでもない。

「かわいそうに、止まらないのかい?」
(や……助けて、怖い、王子っ)
「大丈夫だよ泣かないで」
(……熱い、体、変……俺、変……っ)
「いきなりは流石に怖かったね」
(おう、じ……お願い俺を見ないで……)
「ねぇ、僕の声聞こえてる?」
(お願い、目ぇ、閉じて……)

 ぼんやりと意識を取り戻した時、赤崎は抱き締められていたことに気付いた。その間もとりとめもない思いが浮かんでは消えていく。
(なんか俺、変……だ……一瞬、意識が飛ん……で?)
赤崎は恍惚漂う弛緩の中で、意味もわからず呆然としていた。
「よかった。ちょっと慌てちゃったよ」
「……?」
「平気?どこもなんともない?」
そう、赤崎は変だと思っていたが、ジーノの言動も奇妙であった。
「平気……って?」
ぎこちなくジーノに問いかけると、本人も首を傾げて苦笑を浮かべる。
「さぁ?僕にもよくわからない」
奇妙な沈黙が少しあって、まあいいじゃない、と笑顔は無邪気なものになった。
「それより……痛くなければ、もう少しいい?もっとゆっくり、乱暴じゃなく」
その声には快楽を求める欲望があって、埋められたままの小さな疼きに、緩んだ体がヒクンとなった。

 再び赤崎の欲望は滾って、それからギリギリの高みに連れて行かれる。
「飛んじゃ駄目だよ、こっち見て」
言葉のリフレインが快楽の中枢をねっとりと愛撫し、怖いながらもジーノに縋る。
(頭……おかしくな……、もう、なって……る……?)
「そう……ゆっくり……慣れればずっとこうしていられる」
「ん、ずっ……と?」
達するたびに崩れ果てて、その度ぐじゅぐじゅと少しずつ意識が芽生える。なのにむしり取られるみたいに引き千切られて、もう一度羽化のように正気に戻る。
(駄目……気持ち、いい……)
「ザッキーは本当にいい子だね。もう少しこのまま?それともくたびれちゃったかな」
(よすぎて……もう全然わけが、わからな……)
「そう……じゃあ、そろそろもう……我慢はしなくていいからね、そのまま、そう、」
赤崎はただ子どものように小さく頷き、甘えるように抱きついた。
「いいよ、ザッキー、もっと、そうもっと」
繰り返し快楽に浸った後の激しさは、また格別なものだった。突かれるたびに嬌声は漏れて、赤崎はみるみるそれに溺れる。
(気持ちいい……、王子……どうしよう……)
「そうだよ、もっと僕を……その分だけうんと善くしてあげられる」
強く奥まで犯された。ジーノの欲望はそっくりそのまま、赤崎の願望でもあった。もはや戻れないくらいの高みに連れて行かれて、なお強引に手を引かれた。
「大丈夫だよ、全部晒して」
聞いたことのあるような優しい声。何を恐れているのかすらわからないまま、赤崎は昇りつめるとともに世界が真っ暗になった。
(あ……堕ち、る……?)
覚悟したその瞬間、掴んで強くしごかれた。激しく精を吐き出した時、手先、足先、髪の先、快感が隅々に行き渡って、それらが溢れて、また溢れた。
(……すご……、また中、熱、いっぱ、い……)
意識が再び朦朧となりながらも零れるほど注がれる充実を感じていた。各々をぐちゅぐちゅに混ぜ合わせて二人で分けあった不思議な感覚。鬼に憑かれた人間は鬼交の虜になるという。人の陽気が鬼の糧なら、鬼から受けるのは麻薬によく似た毒かもしれない。赤崎は意識を手放したまま、この罪の魅力に溺れ、浸った。

*

 目覚めた時、体は異様に重かった。理由は肉体的なことばかりではない。なんとなくそんな感じがした。
「ああ、ザッキーやっと起きた」
今までどうやって話していたのか、そんなことすら思い出せない。赤崎は焦点の合わない目で、ジーノを静かに見つめている。
「平気、じゃない……ね。ごめん、やっぱりきつかったか」
そんな風に言われると心細くなった。体は抱き締めて欲しがっていて、でもそれをお願いする言葉も出ない。
(王子、王子……とても不安だ)
運よく思いは伝わり、ジーノは赤崎を胸元に引き寄せて、ふんわりと包み込んで温もりを与えた。
(あぁ……あったかい)
いつものとても良い香りがする。呼吸の起伏が心地よい。腕枕をしている反対の手で、トントンと背中を叩いている。

「怖かったね」

「ごめんね、でもありがとう」

春のように穏やかに囁きながら、赤崎を寝かしつけている。まるで子守歌のような心地よさで、鋭敏な感覚を遮断するような重い睡魔がやってくる。

「おやすみ。眠って深く」
(王子……)
「深くだザッキー。もっと深く」

*

目を閉じて見える世界がある。
(何……?これ、俺?)
身を守る貝殻のようなものが、ひび割れて中身がとろけ出ていた。外気に触れると灰のように変化し、ほろほろと崩れて消えていく。
(ああ、あんなに手が汚れて)
ジーノは裂け目を両手で覆い、やがて祈るように額を寄せた。暗闇にほんのり虹が輝き、何をしているのかが照らし出される。
(あれ、きっと鬼が食うっていう陽気だ多分。せっかく穴を開けたというのに、なんで王子、俺を閉じる……?)
晒せと言われた記憶はあって、無理をするなと言われた気もする。
「ごめんね、ザッキー。怖かったね」
手や顔の汚れさえ美しく見える。優しく、罪な、心ある鬼。意味も分からず涙が浮かぶ。
(本当だ王子……そうか……俺、こんなに無理、してた……のか)
思えば、寂しい時にはいつも、寄り添うように『鬼』がいた。半眼半口、神々しく、今すぐ抱き締めたく思う。
「……」
薄っすらと両目を開けてみると、本物のジーノが微笑んでいる。
「こら……ザッキー、ちゃんと寝て」
額を寄せようとして鼻がぶつかり、クスクスと笑ってキスをした。
「駄目だよ、ザッキーゆっくりおやすみ」
動けぬ体を僅かに捩れば、ぎゅっと強く抱き抱き締められた。腕の中のこの安らぎに、やっぱり少し涙が浮かんだ。
(王子、俺を全部食べないつもりで……?なんで……?全然わからない……)