お花結び

GIANTKILLING二次創作小説同人サイト

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鬼交譚2

【7368文字】
続きです。どんどん長くなって手に負えないです!とりあえずハロウィーンなんでUPせねば!せっかくのプチオカルトものですから!

20200923
長いので投稿単位修正。ジーノと赤崎が生まれる前の過去生?の話。私の実年齢的な意味でさすがに転生もの?とか書くのはきつ過ぎました。でもちょっと挑戦してみたかったんだと思います当時。ルイジwithとかも書いてたし、そういう系のMyブームがあったんでしょう。それにしても盛大に滑っている感じで羞恥とても投稿しづらいし読み返せません((( ⊂⌒~⊃。Д。)⊃

 自分が存在していることを、ある日欠片は突然気付いた。目の前にも存在する者があり、自らの名前を知らないと言う。
「でも、皆は貴方を王子と呼ぶ。それはどういう意味ですか?」
存在はこう応えた。
「わからない。いつの間にかそうなっていた」
「……」
「昔過ぎて記憶が……まぁ、別にどう呼んでも構わない」
静かで抑揚のないその声を、聞くだけで欠片は悲しくなった。
(どうしてそんな言い方を?そんなに輝かんばかりに美しい姿をしているのに)
どこかで見たことがある気がした。生まれたばかりなのに変だと思った。
「すごいね。もう感情が芽生えたのか」
「……?」
「涙が虹色に光ってる。感受性が豊かな証拠だね」
変に思い、いつの間にか生えていた片腕で、指をさされたところに触れた。変哲もない液体だった。これが涙というものか。
「……いろんなことを知るといい。楽しいことも沢山見つかる」
言われて知るための心に気付き、見つけるための目を感じ、手を引かれてよろよろと、動いて初めて足を知る。
「さあ、行こう」
自分を担保し続ける、王子と呼ばれるある種の光に、こうして欠片は一生懸命、形を作って付き従った。

*

 その存在は色々な者の中でも、一種特異なタイプだった。
「またあれを眺めているんスか」
長寿な存在は嘘か誠か、時々青年に物語る。
「ねぇ、面白いと思わない?繁殖を面倒がらずにやるようにって神が仕組みをああしたのに」
何度も興味深げにそれを覗いて存在に、青年はいつでもこう言った。
「いくら『見える目』が取り柄だって、そんなのは酷く悪趣味ッスよ」
「そうかな」
存在がそうして見たがるのは、神の禁じる領域だった。
「……あの交わりにはきっと別の何かがあるんだよ」
生殖以外に、快楽以外に、そこに何かを見出していた。
「タブーは見つめちゃ駄目ッスよ。目から順に穢れてしまう」
「ふ、そういう意味ではもう遅い」
「え?」
「ううん」
青年は自らに無知なので、その微笑みの意味を理解しえない。
「ねぇ、君はあれを見て何も思わない?」
「いや、だからそういうのは」
「何故?必要だから発生するんだよ。彼らも、この僕の好奇心も」
「そういうのは駄目だって、周りのみんなは」
「みんな?そんなものどうだって」
「王子、神様に怒られる」
「だから?作為外から生まれるものにこそ意義があるのに、一体何がいけないの?理解すべきなのはむしろ君だと思うよ。神と自分のどっちが主体か」
いつもは静かで底なしの沼。でも秘めたる激流に息を飲んだ。
「まぁいい。とりあえず行こうよ」
「え?」
「おいで。大丈夫」

繋いだ手は下界に降りる前に離れてしまった。
「王子、どこッスか?」
『大丈夫、ちゃんといる』
「見えない、王子、真っ暗だ」
『駄目だよ、怖がるとドンドンほら、目を開けてこっちを見て、ねぇ、聞いてる?そっちじゃ……お願い僕の声を聞い……』

*

 組み伏せられている者は、すでに呻き声を上げるだけの生き物だった。時々少しだけ正気に戻って、苦し気に顔を歪めて涙を浮かべる。
「大丈夫だよ」
「あっ!」
その時、青年が鬼へと戻って、存在も本来の姿をしていた。
「平気。いいんだ、もっと……君なんかに僕を消せはしない」
苦しみと切望が飛び散る中で、存在は薄っすら微笑んでいた。
「……君はとても綺麗だねぇ」
些末で消えかけた亡霊が、それでも不器用に慈悲を吸い、闇夜の中で。
「どこ……嫌だ王子、行かないでっ」
青年の妖力は虹色で、見るだけで即死するような苛烈さだった。それはそのまま罪の重さで、かつて人の心を保ったまま鬼と化した欠片にとって、拷問のようなものだった。
「泣かないで、ほら、僕達こんなに」
蘇る度に壊れる記憶。存在は穢れにより課せられた破壊の仕組みを鼻で笑って輝いていた。
「そう、上手だよちゃんと出来てる。もっと君を愛させて」
食らわねば魂が霧散して、食らえば心が飛散する。存在は砕ける欠片の全てを拾って、息を吹きかけ蘇らせる。
「ただただ求めてしまうんだよね。情熱で生じた沢山の悲劇は、決して君の罪じゃない」
自らをも一緒に編み込んで、丁寧に、綿密に、繕っていく。そんな存在もまた虹色の光を湛え、欠片と同じようなものに見えていながら、その実、一切異なっていた。
「君は自然に出来たもの。だからこそ意義も意味もある。どれだけ君が否定しようと、僕はそういう君が好きだよ」
吹きかけるだけで花が咲くその息吹。触れるだけで癒える傷と病。その虹は恵みで創造で、対極でありながらも、それゆえに相似のような各々。
「逆らってでも、タブーでも。惹き合うことは真実だ。それ以外僕らは何も出来ない。諦めて消えることすらも」
自らの罪悪の圧に負けて欠片がまた砕ける。意識の回復にはもう少しかかる。存在は労わるように沢山撫でて、戻る瞬間をひたすら待った。
「矛盾と絶望の分だけ君にあげるよ。裁きが僕の記憶をどんなに破壊したって、もう、だから君も信じて」
大切なのは思うこと。
「いつか一緒に人になろう?慈しみ、喧嘩し、生活を営む。あの日の君はそれを望んだ。一緒に生きようって言ったんだ。きっと君が信じた夢は叶うよ。僕達忘れ続けても。だから時間もかかるだろうけど、それでも僕達、順調だよね?」
長い、長い、口づけをする。愛しい人は目覚めない。存在が持て余す自らの持ち得る光を、欠片が次々に食べていく。対極が交わり近づいていく。
「僕は無為。けれど君が心を植えた」
存在は出来た自我を愛していた。他者からの初めての贈り物。
「思いもよらないことこそ、とても楽しい。それを君が僕に教えた」
神のルールは絶対の掟で、存在自身も縛られていた。掟が自我を崩壊させていく中で、抗う術を学んでいった。苦しくもエキサイティングなその日々を、この上もなくエンジョイしていく努力を重ねた。
「またね」
蘇生する力は神の領域、それを使うと完全に記憶と自我が壊れる。
「大丈夫だよ、また会える。出来ないことは、何もない」
闇と虹が入り交じる、そんな形の愛だった。
「いつか二人で本物の『人』に。難しいクイズほど解ければ愉快。ねぇ、君もそう思うよね」