お花結び

GIANTKILLING二次創作小説同人サイト

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迷子の二人は・前編

【4008文字】
出来てない両片思いのジノザキがスタジアム観戦行きます。その昔「ザッキーが観戦してるシーンが見たい」というだけで書き始めた一場面ですが、その頃はまさか公式で来るなんて思いもよらず、呆気なく没箱へ。一応「前編」扱いで途中のままUPしますが、まあこの先はいつもどおりハピエンって事で脳内で補完願いますデス。
おなか一杯のお正月ムード満点!?花酔夜の間くらいの話だと思ってくださいマセ。

        ジノザキ ,

 群集の中、ボクは彼を見失った。その途端、自分が何をしているのかわからなくなった。

(大人げないね、ボクも)

 高架下にあるちっぽけなコーヒースタンドのチェーン店で、大嫌いな列に並ぶ。ともかく少し座りたく思った。さして美味くもないそれを飲みながら、身を屈めてまた、ボクは思った。

(大人げない。一体何をやっているんだ)

 ボクはスタジアムが大好きだった。でも好きなのはその舞台の上であって、それを眺める観客の席には少々屈辱の思いがあった。

(ザッキーってこういう事全然平気なんだよね。無神経というか、意外と鈍いというか)

 オールスターにも代表にも、ボクはさほど興味などありはしない。それでも、暇潰しのテレビ観戦とスタジアム観戦では、心理的ストレスは雲泥の差だ。

(なんで平気なの?自覚がないの?ボクはそんなキミを見ていられない)

 彼はボクと違って「選ばれる事を望む者」だ。ピッチを見つめるその瞳には、憧憬、嫉妬、とても複雑な色が浮かぶ。ボクはその濃過ぎるザッキーの激情にあてられ、ヘタヘタと座り込む程疲れてしまった。彼はボクには重た過ぎるのだ。それは常日頃感じていたことでもあった。

(こんな程度の事で……全くボクときたら……)

 何度も、何度も。ボクはザッキーのその激情に、こんなにもいつもやられてしまう。絶望の深さ、跳ね返す気力。目を閉じたまま暗闇を走り抜けるような、彼の勇気英気がボクには怖い。そしてそんな時こうも思うのだ。

(今、ボクはどんな目をしている?)

 そして、カウンター席の前のガラスを盗み見れば、彼とよく似た目のボクが居る。

(やめてよ、寒気がする)

 その目を覆って、溜息をつく。

(ザッキーはボクにとって毒過ぎる)

 彼を思うボクの瞳には、まるで彼の資質がうつったみたいに、憧憬、嫉妬、とても複雑な色が滲む。ボクにはとても耐えられなかった。心が意識無く動き、暴れ始める。彼の中の憤りに感かされて、心の自由が奪われてしまう。たかがこんな些細な事でも、弱いボクには無理だった。彼の苦しみは彼のものだ。ボクのものではない。知っている。そして。

(翻弄はするもので、されるものではない……なのに)

 ザッキーはその意図もないというのに、いつでもボクにそれをやる。

(やっぱり見るんじゃなかった。あんな姿。これなら一人で来させればよかった)

 そう思うほどに、今さっき見つめ続けたあの横顔が、脳裏に焼き付いて離れなかった。単なる他人事に過ぎない激情に、ボクはまかれ、溺れて、もう水底へ。

未完

      ジノザキ ,