飼い主 1
ジーノ過去編。やりたい放題妄想捏造閲覧注意。1は小学~中学時代。2は高校時代前半、3は高校時代後半~入団まで(予定)です。ジノ→タツ(尊敬)、ジノ+モチ(肉体関係有のお友達)の話がメイン。ゴトタツもちらっと。少しだけどとても重要なシーン。イジメ表現あり。王子、後藤、達海、持田、彼女、大人達、コーチ達、同級生、ジーノ両親など、大人数。ジーノはバイ設定で性的にフランク。ゲイ設定のモッチーも彼女と軽く。
独り同志2~持田との交流
東京トレセンに行くようになってしばらくしてから、日本に来て初めてジーノは充実した時を過ごせるようになっていった。恋しいと常にイタリアを求めていた心は目の前にあるサッカーの世界に夢中になり、日常生活の中の孤独も少しずつ忘れることができるようになっていった。ジーノの考えるミラクルにはまだまだ程遠かったが、それでも少し近づいてきている実感が湧いて、嬉しく感じた。
その実感の中心にいるのが持田の存在だった。少しずつサッカーを通して言葉を交わさないでも繋がる連携を積み重ねていくうちに、ジーノは次第に持田個人に対しても次第に心を開いていった。日本に来て初めてのまともに友達と呼べる相手だった。
「ボクね?この前、初めて恋人ができたんだよ。」
「へー、そりゃまた。吉田って周りに全然興味なさそうだからなんか変な気がするわ。」
東京V対ETUの試合観戦の帰り道。二人がそれぞれ応援している成田選手も達海選手も大活躍しながらドローで終わって。なんとなくリラックスしたムードで歩いていた。初めての日本の友達に初めての恋人の話をする。プライベートの話をするのを嫌うジーノが、ふとそんな気分になれたのも今日の試合結果が大きく影響していた。
「彼女はきっとボクを違うモノになんかしないと思うから。」
「違うモノ?」
「彼女はボクをボクのまま見てくれる。そういうことだよモッチー。彼女はボクの血筋を気にしない。ボクの風貌を気にしない。根掘り葉掘りボクを穿り出そうともしないし、二人でいるととてもリラックスできる。フフフ、ちょっと照れくさいんだけど、これがボクの初恋。美人ではないけれどとってもチャーミングな子なんだ。今度見せてあげるね?」
「血筋だぁ?バカバカしい。それに俺はお前の恋人なんかに興味ねぇよ。」
「えー?そうなの?なんか寂しい事言うじゃない?ボクはキミの恋人になら会ってみたいって思うのに。」
「会ってるけどね。」
「え?」
「ま、恋人じゃなくて片思いの相手だけどな。俺のは幸せになる道なんてないから。言ってなかったっけ?俺ゲイなんだ。相手ノンケだし絶望的。ま、いいんだけどね。それでも好きだから。」
「へー、そうなんだ?」
おもむろにいつものように持田がからかい半分に肩をぐいっと抱き寄せたので、ジーノは少しよたついた。かわそうと思えばかわせないこともないけれど、持田との触れ合いをジーノはとても気に入っていたから、いつでも避けずに笑ってこうして受け入れた。その嫌悪感を持たない、いつも通りの自然な態度を見て持田は内心ほっとした。さりげない風を装ったけれど、持田もまた他人に自分のコアな部分を話したのはこれが初めてのことだったから。ゲイと聞いて、ジーノがドン引きするんじゃないかと、ほんの少し心配だったから。
「あんま驚かないね。」
「うん、ボク人の性癖にあれこれ言う人間じゃないしね。それに男性に恋はしたことないけれど経験自体はあるから。そういう世界があることは知ってるし、あんまり意外性とかは感じないかなぁ。キミがゲイって言うなら、ボクはバイかな?男女の識別意識があんまりない。人肌は全部人肌だよ、全部あったかい。」
「へー!お前初めて恋人できたって言ってるくせにそっちは乱れてんのか、マジウケル!」
持田は腕をジーノから外して大げさに肩を竦めて言って見せる。誰にも言えない心の内を共有するのと同時に、ぶしつけで失礼な言葉をバンバン間に挟めていくのがこの二人の会話の方法だった。二人だけにわかる本質的に伝えたい言葉のふるい分け。なんの事前の取り決めもなく当たり前のように不思議に通じ合うその世界は、彼ら二人のサッカーのプレイの有り方ととてもよく似ていた。
「乱れてるってほどじゃ…。多少だよ多少。男だし普通に性欲なんてあるでしょ?だからある程度はね?」
「ま、そりゃそうだ。ハハハ!でも、俺はまだ男、経験ねぇよ。そんなにその辺普通にうろついてるもんなわけ?やっぱお前変わってるわ。」
「うん、いるよ?ボクなんかちょっと見てたらすぐわかっちゃうね。視線とか?結構わかりやすくない?」
「へー、そんなもんなんだ?お前エスパーじゃねーの?」
「なんかバカにしてない?まあ、キミがそうかそうでないかは微妙なところだったけれど。ボクを見る目、普通な感じだったし。あれかな?ボクはタイプじゃなかったってことかな?」
「まあな?お前をそんな目で見たこと、一度もねーよ、お前って男っていうか女っていうか、単にお前じゃん。ハハハ」
「フフフ、そんな感じなんだ?それもっと早く言ってくれてたらボクキミに恋しちゃったかもしれないのに、フフフ」
「何?お前そんな節操ないタイプなの?マジうけるんですけど。」
「そうなるのかな?でも、今みたいな感じの方がずっといい。ボク、キミのこと結構好きだから。なんかラッキーだったよね、思わない?」
「うん、俺もお前のこと気に入ってる。それとこれとは違うのがラッキーだって言うのもわかるわ。」
「フフフ、ね?でもそっか…絶望的な片思いかぁ。王様のモッチーにも思い通りにならない事ってあるんだね。ゲイなのはともかく、そっちはなんか意外性ある。意外と権力もってないんだね、フフフ」
「ケッ、言ってろよ。何不自由なさそうなお前がそういうこと言ってたら角立つぞ?ま、お前の場合は俺と違って余裕ぶっこいてるの表ッ面だけだけどな。器が違うよ、器が。」
「待ってよモッチー、余裕だって?そんな顔してるつもりなんて全然ないよ?ボクはいつでも精一杯で健気な男さ。キミみたいに可愛げない人間とは違うもの。」
「そんな言い方をシレッと出来るからお前はタチ悪いんだよ。大概だな。」
痛烈に否定的な言葉を選択しながらも相手を思いやる気持ちを感じさせる持田と、優しい言葉遣いをしながら相手を試して詰め寄るように会話をするジーノ。不思議な阿吽の呼吸の二人の会話は二人だけのものだった。表面では互いに気に食わないような噛みつきあうようなムードを漂わせながら、実際には互いが互いに好意を寄せている。そんな互いに確かめ合うこともない暗黙の了解の数々。
やりとりの中で今日のジーノは持田の目の光に陰りを見つけ、今日はなにかあったのかな?と察し、思わずガラにもないことを口にした。
「ボクは自分から誘ったりはしないけれど、キミが泣いて泣いて眠れない夜は呼んでくれれば助けに行ってあげるからね?わかった?これ、ちゃんと覚えておいて?」
「なんだよそれ、ハハハ。お前節操ないねー、結局俺のこと口説こうっての?誘わないっていいながら、俺と寝たいって言ってるのとおんなじじゃね?」
「んー、まあ、それもアリかもしんないけれど、そういう意味じゃないから。そんなのわかるでしょ?」
持田にはちゃんと口説いているわけでもないことが通じているのを理解しながら、わざと不貞腐れた顔を演出してジーノが言う。持田はそんなジーノを見て笑う。トリッキーなことが好きな二人の、トリッキーな言葉のやりとりとシンプルな心の交流だった。
「恋人のいる男のセリフじゃねーな。」
「なに?意外とストイックなんだね?だってボク達、一人と一人。同じものじゃない?体を寄せ合う形でお互い寄り添う必要がある時もあるかもよ?大丈夫、色恋沙汰とか関係ないから、浮気でも不道徳でも何でもないよ。フフフ」
「アホらし。」
意識的に踏み越えた線を思った通り簡単に持田がかわしたが、それは決して否定ではないことをジーノは感じて満足した。持田はジーノが線を超えるという、絶対にやりそうにないことをしてまで、自分への思いを示してくれたことに十分救われた。そして相手がどう受け止めたかということすら、言葉もないまま通じ合った。この二人は一緒にいると、おしゃべりでとてもよく会話をしたが、そのコミュニケーションの本質的なものはこの暗黙の了解のところが大部分を占めていた。
「フフフ、キミはいつもそうしてドンドン崖っぷちに踏み出していくんだね。ボクとはまるで違う。」
「お前は臆病モンだからな。」
「おっこっちゃってもいいの?」
「なわけねーだろ。お前は目ぇ瞑って崖の方向一直線じゃねーか。ちゃんと目開けろよ。」
「怖くない?そういうの。それにどっちかって言うと足がすくんで動けないタイプかも。」
「なんだよ、たまには俺からポジション奪うぞ!みたいな気概くらい感じさせてくれよ。つまんね。」
「無理だよモッチー。今はキミに使われるのがとても楽しい。いつも感謝しているよ。」
「ハッ、嘘つけ!中流れてきたり右からも俺のことこき使ったりしてるくせによく言うよ!言ってることやってること全部中途半端なんだよ。」
「えー、心外。」
二人ご機嫌な帰り道。本気なんだか冗談なんだか、確信なんだか戯言なんだか。二人だけの阿吽の会話を繰り返す。関係がまた一歩近づき、ジーノは人が傍にいることを感じることができた。
