お花結び

GIANTKILLING二次創作小説同人サイト

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飼い主 1

ジーノ過去編。やりたい放題妄想捏造閲覧注意。1は小学~中学時代。2は高校時代前半、3は高校時代後半~入団まで(予定)です。ジノ→タツ(尊敬)、ジノ+モチ(肉体関係有のお友達)の話がメイン。ゴトタツもちらっと。少しだけどとても重要なシーン。イジメ表現あり。王子、後藤、達海、持田、彼女、大人達、コーチ達、同級生、ジーノ両親など、大人数。ジーノはバイ設定で性的にフランク。ゲイ設定のモッチーも彼女と軽く。

独り同志3~持田との自傷

 それから随分してから、ジーノのプレイが少しおかしくなってきた。ズレを感じているのは今のところ持田だけ。ミスをミスと思わせずに少しずつ無理をして力技で強引に結果を出していくジーノ。徐々に口数も減るジーノに今度は持田がガラにもないことを口にした。

「だからお前あの女と別れろよ。」

 そう持田に言われてもジーノは曖昧に微笑みを返すだけになっていた。二人の阿吽の関係は少しずつずれ始める。一度知ってしまった連携の快楽から二人は逃れられない関係にあったのに、ジーノの心理的な不調がそれを幻に変えていこうとしていた。持田はそれが許せなかった。

「今のお前、ろくでもねぇよ。もう忘れろ。もっといい女沢山いるだろ?」

 自分を自分として見てくれる。そんな気持ちで好きになった彼女。付き合ってしばらくして、ジーノは自分を全否定されるような言葉を受けることになった。いわく、“吉田君は王子様なんだから、そんな食べ物食べたり下品な服装をしたり乱暴な言葉遣いをしてはダメよ”。購買で買ったやきそばパンを食べようとしていた時の冗談めかした安易な彼女の一言。
 彼女はジーノを異邦の人とは扱わなかったが、その代わりにジーノを彼女の中にある偶像に投影をしていた。付き合いが深まっていくに従い、ジーノに彼女の理想の男になるようにと様々な要求をし、そして強要した。彼女が好きなのはジーノではなく王子様だった。持田との関係の深化の影響で、彼女にも同様の温かさを望んでいたジーノにとってはショックな出来事だった。彼女もまた、今までジーノの周りにいた単なる人肌の人達と全く同じ、ジーノをジーノそのものとして扱わない、ただの人形にしてしまう存在だった。
 それでも、悲しい現実を知ってしまった後でも、ジーノは彼女と別れなかった。彼女が願い事を口にするたび、ジーノは優しくその願いを叶えていった。一度信頼をしてしまった相手への気持ちを切ってしまうことは対人スキルの低いジーノにはとても難しい事だったのだ。人恋しさも相まって自ら離れることも出来ず、絡み取られるようにがんじがらめになっていった。身動きもとれない状態になりながら懸命に人形の役割を果たし続けた。

「ボクには彼女しかいない。彼女がボクじゃなくて王子が好きなんだとしても、それでも仕方がないんだ。ボクはもう一人には戻れない。人を知ってしまっては、もうそんなこと、とても恐ろしくて耐えられない。これでいいんだ。ボクは幸せだ。」
「情けねぇな。お前。」

 ジーノにとって持田は唯一の友達らしい友達だったが、持田にとっても同じようなものだった。二人の中にあったのは紛れもない友情で、そういう関係性に薄い二人にとっては互いがとても貴重な存在だった。だから持田はなんとかしてやりたいと思った。ジーノの不調はサッカー的にも心情的にも不快なものだったから持田自身のためにも見逃すわけにいかなかった。

 呼んでくれれば助けに行くよと言うジーノは自分で助けを呼ぶ力を持たなかった。だから持田は粛々と受け止め続けるジーノに無理矢理入り込んで心の傷に触れた。くだらない馬鹿げた選択を続けるジーノを軌道修正するにはもっと深い理解を必要としたからだ。だが、触れてみればジーノの傷は失恋のものというには、あまりに重傷だった。ジーノ本人が自分で見ることすら怖くて出来ない、そんな生きていくことに対する壮絶な孤独と不安の傷だった。はっきりと言葉で説明することすらできないジーノのそんな深い傷を理解できるのは、ジーノの周りでは持田だけだった。なぜなら持田もまた同じような傷を持っていたからだ。

 感覚が過敏なジーノが混血による異邦を常に感じてしまうように、持田は自分の性愛対象が男性であることに孤立感を抱えていた。10代前半の多感な時期にあって、鬼のようなメンタルを持つ彼にとってしても、このことはやはり誰にも相談できない深い悩みだった。最初は肉体関係からだけでもと女性と交際をしたりした時期もあったが、心がついてくることは決してなく、努力ではヘテロになれない現実に苦悩していた。持田はゲイである自分を自覚し始めたばかりで、まだまだその事実を受け入れがたかった。

 自分達がわかりあえるのは、こうした部分が同じだったからだと持田は知った。 ジーノと持田が他者に比べて選手として圧倒的にタフなメンタルを持ち得ていたのも、自分の抱える誰にも委ねることのできない傷を独力でなだめ続けることに比べれば全然大したものではなかったからだった。

   *  *  *

 ジーノの深い傷を知った持田の心には、同胞を認識した安心感と、慈愛と、孤独という感覚への本能的な拒絶反応と、嫌悪感が渦巻いた。ジーノは自分に触れることで持田に生まれた快と不快の入り混じった複雑な感情を簡単に察知した。自分を見る力はなくとも人を読む力に長けていたので、そのことを手掛かりにあっという間に相手の心の中に入り込んで持田の孤独を見つけた。そしてジーノの中にも持田同様、安心感、慈愛、拒絶反応、そして嫌悪感が生じた。
 相手を傷を癒したい、そして自分も癒されたい。そう思うのに。実際にそうやって接近し合うと、直視できない自分と同じような傷を、人の中にあっても見ることに耐えられなくなる。嫌悪感が本能的に攻撃性を生み、まるでそれをやっつけるがごとく、急所である相手の傷を弄び、あざ笑うようにズタズタにしていく。二人ともそういう行動をやりたくなくてもどうしてもやめることができなかった。

持田はジーノに繰り返す。

  混血など世の中に唸るほどいる。でもお前はそれで救われることはない。
  孤独なのはお前自身の本質が孤独そのものだからで混血かどうかは関係ない。
  お前の同胞など、どこを探しても見つかりはしない。と。

ジーノは持田に繰り返す。

  ゲイなど世の中に唸るほどいる。でもキミはそれで救われることはない。
  孤独なのはキミ自身の本質が孤独そのものだからでゲイかどうかは関係ない。
  キミの同胞など、どこを探しても見つかりはしない。と。

 互いが互いに向かって、「お前(キミ)は決してその孤独、その地獄からは抜け出せやしない」と、一番言いたくない、そして聞かされたくない言葉を繰り返す。それが出来るのはなによりも二人が互いの孤独を理解しあっていたからで、矛盾しているが苦しみながら相手の理解に喜びを感じた。不思議と思いやりを受け取った。そして、弱り切った相手に対して吐き出してしまう、容赦のない相手の切羽詰まった悪意が不健全性が、暗闇にいるのは自分一人ではないという奇妙な安心感を生んだ。トンネルから抜け出るには光明の一つもない真っ暗闇の中にいる若き悩める男達は、互いが救われる言葉を紡ぎだすことは到底できなかった。絶望の言葉だけが口からついて出る。そのことに関して、大丈夫だよ、いいんだよ、無理もないこと、間違ったことしかできなくとも、やりたいことは通じてる、とそんな風に互いが互いを受容しあった。

   だって、言われなくてもボクたちは、
   この世界から決して抜け出せないことを知っているんだ。
   見えてしまっているものを、言われてしまっても大差ないことさ。

 本人の心の中の願いと祈り、矛盾する行為。二人は互いをよく理解していたので、上手にその二つを受け入れ続けた。救われると同時にさらに傷つき深みに転げ落ちていくような、そんな奇妙な関係がここに成立した。相手を思いやるがあまり、結果的に互いが互いの負の部分を無意識に抉り出していくようなその関係性はぞっとするものだった。

   *  *  *

 受験期に入る3年に進級してようやくジーノと彼女は別れた。多忙による自然消滅に近い別れだった。それでも彼女のかけた呪いは解かれることもなく、この頃にはジーノは表面上の人格は無口で優しい笑顔の男から彼女の理想の王子像に変異していた。もうそんな必要性は一つもないのに、なぜか無意識に彼女の理想を追っていた。ジーノ本人にも自覚のない、いわゆる未練の産物だった。自分で上手に自分を騙すことも出来るようになってきていた弱い弱いジーノは簡単に本質的な自分を見失っていく。彼女の育て上げたジーノの新しいキャラクター性は皮肉なことに彼自身の本質的なものよりもジーノの外観にとてもよくフィットしていた。

   ボクは王子なんだ、多分そうだ。
   だってみんながボクを見てそう言うのだもの
   そうじゃないボクなんて、もともといないし、みんなもいらない
   ボクもそんなもの必要ない

 持田もまた外部からの大きすぎる期待とプレッシャーから王様である自分と本質的に繊細で脆弱な少年である自分との乖離が進んでいた。そしてゲイである自分の本質を押し込めてヘテロを偽装し続けることを選択し、自身の苦悩を自分で増やしていた。二人は周りから求められるものを瞬時にして察知してしまうし、それをピースとして当てはめた場合のビジョンが未来に向けてどう展開していくのかも見通すことが出来た。二人の中にある類稀なるゲームメーカーとしての資質が、良くも悪くも彼らの生き方をも変えていくことになってしまった。自分の芯の部分がぶれなければ全く問題がなかったが、人並み以上に過敏な感覚とその未熟なまでの若さが、彼らを少しも安定させてくれなかった。

   *  *  *

 もう王様と王子様から降りることもできなくなった二人が自然体でいられる瞬間というのは二人でダービー観戦をして熱狂している時など極々限られた場合のみになっていった。互いの傷を発見したことによって、互いの傷を抉りあうことによって、二人の友人関係はすっかり変異してしまった。似た傷を抱える友達であり、鏡写しに似た傷を映し出して己の傷の痛みを強制的に再認識させる天敵のような存在でもあった。

 なんとも言いようのない関係性の中で互いの体を道具にして、慰め合うようになるまでそれほど時間はかからなかった。

「ねぇ、モッチー。キミ、ゲイなんでしょ?ボクにその体使わせてよ。いいよね。」
「なんだよそれ。」
「男と寝たことないんでしょ。色々教えてあげるよ、暇だし。キミもボクをヴァージンを捨てるための道具にすればいい。お世話になってるお礼さ。」
「お前自分から誘わねーんじゃなかったのかよ。」
「これは誘いなんかじゃない。憐れな二人の慰め合いさ。やろうよ、気持ちいい事。いい気晴らしになる。」
「ハッ、お前出鱈目な奴だな。」
「いいじゃない?出鱈目。今うっとおしいのは面倒なんだ。キミならドライにボクに付き合ってくれるだろ?自慰行為の延長さ。そう難しく考える必要なんてない。」

 たまたま始まった自虐にも似た出鱈目な暴力的な行為は、やってみればやっぱりなんの救いにも癒しにもなりえなかった。だが、他に支えるものを何も持たない繊細な二人にとって、それでもなんにもないよりは少しましな人との繋がりで、そして次第にはなくてはならない抜け出せない魅惑的な袋小路のようなものになっていった。

 行為の中で、肉体的精神的に相手を非情なまでに攻撃して陥れることによって、辛いのは自分一人ではないことを確認する。そして、その相手に感じさせた痛みをすべて自分のモノとして受け入れ受容し、自らも同じ場所に落ちていく。こんなことは他の誰とも構築しえない、特殊な関係性だった。そんなある種の相手への信頼感と労わりの生みだす負のスパイラルは、痛みを忘れるための強い痛みであり、繰り返せば繰り返すほどに互いをズタズタに切り裂いていくものだった。

 二人は近づけば近づくほどに、どこまでいっても一人と一人同志である孤独を痛感した。

「ボク達はまるであの三日月のようだ。まるで自分が光っているかのように偽装しながら、尖った部分で互いに傷つけあって血を吹き出して泣きながら笑いあう。本当に滑稽な姿。バカバカしい。あんないらないもの、この世からなくなってしまえばいいんだ。」
「そうかもしんねぇけど。でも、存在しちゃったもんはいくら罵声を浴びせても消えやしないよ。月はどんだけ努力しても太陽にはなれない。まるで太陽になったつもりで満月になったり、現実に気付いて新月になったりして、動けなくなるまで馬鹿騒ぎを繰り返し繰り返し続ける他ないんだ。」
「…そう…だけど。そんなの虚しい。」
「言うなよ。」
「言わせるんでしょ。」

 そうして二人同時に思う。

   虚しさなんて、他人に言われなくてもとっくに

   でも、どうやればここから抜け出せるのか
   どれだけ考えてもわからない