お花結び

GIANTKILLING二次創作小説同人サイト

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飼い主 2

2は高校時代前半。高校時代に起ったタッツミーの「あの出来事」とその前後の話が中心になります。今回のシーンはジノザキ長編の極初期に思いついたプロットで過去編の一番コアな部分。王子、達海、持田、モブ女、平泉、ジーノ両親、トレセン関係者、部活顧問、部の仲間などセリフない人も含めて大人数。ジノ→タツ、ジノ+モチ。

明朝

 玄関の鍵が開く音が聞こえて持田は同居の女性が帰宅したことに気付いた。

「ただいま!持田君はじめまして、この子にあなたみたいな友達がいるなんてなんだか驚きだわ」

 彼女はリビングまで入って来るなり、持田に向かって明るく笑った。その明るさに持田は少しホッとした。彼女はまるで明るい日差し、明るい朝そのものだった。

「やだなぁー、それどういう意味?」

 突然隣から声がしたので持田は驚いてジーノのほうに目を向けると、そこにはいつもの少しキザな王子そのままの男がいた。突然王子の姿に戻ったその男は帰宅した彼女に向かって両手を広げて、おいで、という仕草をしていた。女はそれを見て笑い、彼に歩み寄ってメイクの崩れも気にせずにディープで甘い口づけを交わした。もう、いやね、この子ったら甘えっ子、と言いながら彼女は自分とジーノの唇についた乱れたルージュの痕をティッシュで拭う。その最中にもじゃれるようにジーノが唇を寄せようとするので、こら、やめて、ダメよ、と女が笑う。

 女が着替えるのに部屋を立ち去ると、ジーノはまた元の通りうつろな瞳に戻っていた。自分がこんな状態になっていても他者に対して演技とサービスを忘れない男が痛々しくて見ていられない。辛くなって思わず、ジーノ、と持田が再び声を掛けてみると何とも言えない力のない笑顔を浮かべていた。

   おんなじだ、こいつも俺も

   不必要に人との距離を開けすぎる

   俺も出来ないけれど、
   本当はこんなときは
   他人の胸を借りて
   大いに泣くべきなんだよ

 持田はジーノの笑顔を見てとても悲しくなった。沢山いるであろうジーノの周りの女性たちに対して彼がいつもどんな顔で接しているのか。想像はしていたけれどあまりに想像通りすぎて、持田は悲しくて不愉快で、憤りすら覚えた。

   プライドが邪魔をして常に高圧的にはったりを続けてしまう俺
   優しすぎて脆弱過ぎていつも人に合わせてしまうこいつ
   二人とも全然平気じゃないのに、
   こうして延々と平気だ平気だと嘘を吐き続ける

   俺はもうこんなことやりたくないし、
   こいつにもやらせたくない
   なのにやっぱりやめられない

   どうやったらこの暗闇から
   俺達は自分の力で出ていくことが出来るんだろう
   もう、沢山だ!

 着替えから戻ってきた女は、朝食、食べていくでしょう?と持田に話しかけてキッチンに向かう。ジーノは立ち上がり小さい雛のように彼女の後を追った。

「ありがと、でもモッチーね?もう帰らなきゃいけないんだって…」

ジーノは彼女の傍でそう言って、さらに持田にも聞こえるような声で恥ずかしげもなくこう続けて抱きついた。

「それに朝食前にボクも食べたいものもあるし、ね?いいよね?」
「ちょっと!こら…」

甘えた仕草でジーノは首筋にキスを落としている。友人の目の前でも平気で欲情を煽ってくる男に、女はとても困ったような笑顔を浮かべていた。

「はいはい、ごちそうさま。お邪魔しました、ごゆっくり」

 そんな二人の姿を尻目に、持田は淡々とこう返事をして立ち上がった。持田はジーノが受けた傷を人肌で癒そうとする癖があるのを知っていたからだ。それを必要としているなら今すぐでもどうぞ、と彼の願いに従って素直に帰ることにしたのだった。

 ジーノは、ごめんね、ありがとう、とでもいうように持田に寂しげな力ない笑顔を送った。

   *  *  *

 テクテクと駅まで持田は一人歩く。

 最後に見た寂しげなジーノの笑顔が頭から離れなかった。あいつ大丈夫かな?と心配ながらも、持田は気持ちを切り替える努力をした。今はジーノは自分といるのも辛いかもしれないと考えたから。

   自分達は傍にいても結局お互いを救うことができないし、
   この状況下であいつが俺を遠ざけたがるのも仕方がない

   確かにこんな時には離れた方がいいだろう
   悪いものを映し合う、俺みたいな合鏡からは

 こんな大事な時にお互いがお互いに対してなんの役にも立たない現実を目の当たりにして、持田はどうしようもない無力感に苛まれていた。そうした中にあって切々と祈らざるを得なかった。

   太陽のような彼女があの恐ろしい暗闇を照らし
   あいつをあの中から救い出してくれますように