お花結び

GIANTKILLING二次創作小説同人サイト

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飼い犬

15日なのでザッキー過去編をば。沢山の人達に愛されながらサッカー一筋に生きてきたってイメージで書きました。家族設定がっつり捏造。登場人物は赤崎、王子、同級生、家族、チームメイト、彼女(H有)。変な時間にジーノがフラフラあらわれてたのは後藤氏と飲みに行く為。このシリーズの後藤さんはお母さんでタッツミーはお父さん的役割。

ジュニアユース~実現する力

 6年になった俺は、ジュニアユースのセレクションも家族の応援の中、当然受けるものとして準備を進めていた。

「だからね、2回目のテストなのだから同じようにこなしても意味がないって思うんだよ。」
「そうだな、遼。」

 朝食の時間。セレクションまであと数か月。毎日練習を続ける中、俺は家族とこうして何度もテストの日の話をしていた。

「ジュニアのセレクションの時は初めてで緊張してむっちゃ焦った。んで、全然思うようにやれなくて俺はとても惨めな思いをしたんだ。もう二度とあんな失敗は繰り返したくない。」
「まぁ、お前は昔からイベント事があると興奮しすぎて熱出したりするタイプだったからなぁ…そういう気質は元々あった。今考えると想定外でもなんでも…」
「あらお父さん、それってあなたに似ちゃったのよね?お義母さんがこの前もあなたが小さい頃に…」
「ちょっとうるさいよ?今はその話置いといてよ、赤面しちゃうだろ。」

 掛け合い漫才のような楽しい会話。この二人はとても気さくで馬鹿みたいな話ばっかりしているけれど、俺はとても尊敬している。いつも“ここ”という場面では俺が必要としている言葉をくれる。俺をとてもよく愛していて、そして十分理解してくれている。

「この前お前の考えた話は面白かったな。」

 ほら、そうやって。彼らはとてもよく俺の考えを受け入れてくれる。この前考えた話とは、今回のセレクションに対しては将来を見越してある想定をしながら受けてみたいと言った話のことだ。俺の両親は俺がどんな馬鹿げた話をしだしたとしても、一旦はそれを受け入れ、次に考察を行い、そして個人的な見解を述べてから、もう一度俺に選択のバトンを戻してくれる。これはもう何度も何度も繰り返された、彼ら流の子育てだ。

「スカウトの目が留まるようにならない場合は俺は何度も同じようにテストを受けなきゃいけない。だから毎回この前のような状態になってちゃ意味がないんだ。」
「そうだな。ましてやお前は海外で大活躍するような選手になるのが目標なんだから。大きなハードルにチャレンジする前には小さなハードルは簡単にこなせるようになっておかないといけない。」
「うん。」
「だから、俺はとても面白いと思ったんだ。お前の提案。今回のセレクションを海外移籍のためのトライアルのつもりで受けるってことな。」
「だって実際俺はもう小6で。もしかすると数年後に受けるチャンスがあるかもしれないし。」
「そうだ。いい考え方だ。お前がどこからもプロへの声掛けがなかった時。それをチャンスだと考えて直接海外に飛べるように気持ちを整理しておくことは大切だ。」
「…ま、万が一の話だけどね。」
「サッカーと同じだ。最適な動きが自然に出来るのは、沢山の選択肢を先に頭の中に入れておけた時。お前の体は一個しかないから歩ける道はひとつだけれど、常にいろんな道を用意しておくことはとても大事だからね。そのことでさらに強い一歩を踏み出すことが出来るわけだから。」
「うん、俺はすぐに考えなしに突っ走る性格だから。そういう部分に強い矯正が必要なのはわかる。」
「ま、心掛けておくことだけでも十分違うと思うから。結局はどんだけ矯正してもお前は結局その場になると突っ走るだろうしな。ほんと母さんにそっくり。ハハハ」
「何言ってんのよ、そのおかげでお父さんは私と結婚出来たんでしょ?理系の男って小理屈ばっかりこねて、てんで行動力ないんだから。直感って一番大事よ?結局のところ思考に乗らないレベルの微細な情報の積み重ねの上での選択っていうのが直感なんだからね。サッカーでもいいプレイをする時っていうのはそういう…」
「あ!いっけね、もうこんな時間だ。俺用意して行くわ。」
「おう、行ってこい。」
「いってらっしゃい、周りちゃんと見ながら行くのよ?」

   *  *  *

 学校に行く途中にも色々テストのことを考える。上の空になり過ぎない程度に気持ちをセレクション当日に、そして想像の中のトライアルの世界に入れていく。

   まだ今回は日本語が通じる
   それだけでも随分優しい環境だ

   家族みんなで調べた情報によれば
   トライアルは1週間準備期間があるようなものもあるらしい
   でも今回のはたった1時間しかないテストだ
   試合で言うなら前半だけしかないその短い時間で
   自分のすべてを出し切らねばならない

 どんなイレギュラーな環境の中でも、常に冷静になってしっかりと身に着けた実力が出せるように。そんな心の準備のために自分には今何が必要なのか沢山考える。過緊張からの脱出は今後何度も繰り返される大一番で必要とされる技術だ。何事にも激しやすい俺にとっては今このことがとても重要な取り組み内容の位置付けにあった。感情的になることと闘志を燃やすことは違う。この言葉は何度も何度も自分の中で繰り返している呪文の言葉。

 セレクション本番では事前に考えた手順にしたがって、冷静にやれるように一つ一つ緊張の種を消していくことを意識しながらやってみた。その結果、前回のセレクションの時とは違って自分でも上々の状態を保つことが出来た。

   俺はいろんなことを着実に未来に向けて進めている
   その都度その都度前に進んでいる

合格通知が来た時、前回とは全然違う充実感があった。やりきれたという思いがあって、その上で結果が出せたから。その満足感は日頃なんとなく試合をしている時とも全然違うものがあったので、これからはこの感覚をいろんなところで体感したいと思った。

 だから俺はいつもこういう気持ちでサッカーをすることを目指すことにした。そして、今回実際にやれたことで、新しいこの願望をちゃんと実現できるという自信と確信を持てた気がした。