お花結び

GIANTKILLING二次創作小説同人サイト

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飼い犬と飼い主 1

入団前から、出会い、現在、未来にいたるまでの超捏造妄想物語。ガチゲイはモッチーのみ。ジーノはバイ。あとは全員基本的にノンケです。ジーノ特殊設定で記述が多くなりますが私的にはザッキーが主役でヒーローみたいな気持ちで書いてます。酷い流れが多いですがすべて終盤のハッピーエンドを盛り上げるためです。

出会い1

   随分、鋭く尖った子が入ってきたものだな

 ジーノが初めて赤崎を見たときの印象はそういったものだった。

まず、その目。
 痛いとも感じるくらいの睨み付けるような細い目はまるで世の中すべてが敵であるかのような攻撃的なものを感じさせた。だが、それだけではない澄んだ幼い少年のような純潔ともいえる清らかさをその瞳の奥に秘めているように見えた。

次に、髪。
 潔く短く揃えられた彼の髪が単に無頓着からくるものではないことは薄く染めた頭頂の決して下品でもなく派手でもない髪色からも把握できた。彼の印象にぴったりとフィットする短い髪は、彼の頭の形の良さとうなじの美しさを強調させていた。
 そのシルエットは男性的でありながらボーイッシュな女性の醸し出す微妙な色気のようなものも同時に匂わせるものだった。

そして、肢体。
 シャープな清らかさを感じさせる源はまさに均整のとれたその細い体つきのせいだった。おそらく彼の体質は筋肉がつきにくいのだろう、それを懸命に鍛えながら体を作ってきたことを思わせた。細くてしっかりとした彼の筋肉は、全身を通しても不調和の一つもない美しいものだった。
 なによりも、彼自身が全く意識することなくサッカーのためだけに努力してきた結果であろうことが素晴らしかった。体が勝手にそうやってひっそりと美を作り上げてしまったので、心配した体が、彼に触れることをも許さないような美しい清純をも一緒に練りこませるようにしたのかもしれない。

なによりも印象的な、その声。
 耳につくのは声質のせいもあるし、わざわざ人の神経に触るように選んでいるかのようなぶしつけで遠慮のない率直な言葉選びのせいでもあった。人の心を突き刺す力を持っていた。簡単に想像がつく。彼の周りの彼自らが作り出す強い強い軋轢。

 この年齢になるまで丸く悪く年老うこともなく、おのれの力でその軋轢をすべて跳ね飛ばして一直線で生きてきたような、射抜く弓矢の先端の矢じりのようなその姿。それがあまり他人には興味を持たないジーノの目をいつのまにか引き寄せることとなった。

 観察していると、射抜く強さと鋭さの陰に、おそろしく不安定なむき身の傷のようなものが見え隠れしてるのに気付いた。あぁ、この子はきっと、こんなにも強いのにおそろしく脆い子だ。

 ジーノは自分の悪い癖がはじまりそうな予感に苦笑いをした。強くて脆いものを見つけるとなんでもそうだった。それが人であれ、物であれ、引き寄せて、抱き寄せて、そうしてその強さをズタズタにして脆さを存分に蹂躙する。彼の中ではそういうものはすべて消耗品であり、一過性の嗜好品のような楽しいおもちゃだった。

   うーん、いけないねぇ
   これはど真ん中すぎる

 チーム内のミスターETUは彼のそういった嗜好にフィットしていたが、屋台骨ともいえる彼を崩壊させる遊びはさすがに理性が働いた。だからほんの少しだけ弄びもしたがそれほど欲望のままに食い尽くすことなく済ませることができた。当の本人にもそれと気づかせない程度に、小さく軽く、もどかしく細かく、からかうくらいの遊びを彼が結婚した今でも時々楽しんでいた。

 でも、今回のこの子は。悪い遊びであることを意識し、理性で無視を決め込もうと思えば思うほど、自然に彼を意識してしまう。ただし、そのジレンマですら今のジーノには一種の楽しい遊びにもなっていた。

   おそらく…
   ほんの少しでは納得できないし
   本気で遊ぶには手を離した後が厄介だ
   うまく事後処理を…
   丸め込ませて黙らせる方法は…

 無意識に試行錯誤している自分にふと気付いたジーノは思わず笑う。

   ダメじゃないか、ジーノ
   もうすでにやめておくという選択が抜けている

 あんなに素直で真っ直ぐで。大きな挫折をして足を止めてしまった経験なんてなさそうだ。そういえば彼は自己紹介の時にここのプリマヴェーラだと言っていた。小さい頃からカルチョ一筋というわけだ。きっとサッカー少年のままこうして大人になってきたんだね。少しバカにするように、そして少し嫉妬するかのように赤崎のことを見る。

 なのに不思議とその思いとは裏腹に一途なまなざしがまぶしくも見えて、思わず目を細める。赤崎のまぶしさの中に、カルチョの国のイタリアを感じた。
 カルチョに身を預けるように熱狂する彼の眼差しが、強い日差しと青い空、白い石壁、そして歓声が轟音のように渦巻くスタジアムのあのイタリアの熱風を思い起こさせ、背筋を不思議ななにかが駆け上がっていった。

    *  *  *

   目線を感じる

 ジーノの広い視野が、自分を追っている鋭い赤崎の目を見つける。苦笑いを浮かべる。一日中飽きもせずに。本当に困った坊やだ。

   気が付いたら王子を見てしまっているなぁ

 赤崎は知らぬ間にジーノを追っている自分に気付いて違うことを考える努力をしていた。でも、また見てしまう。

 生え抜きの赤崎がトップチームでやりたいことをイメージするときに必ず出てくるのがトップ下のジーノであった。スタジアムに出向き、録画で後から何度も再生し、もう思い出すだけで目の前でライブのように音まで聞こえるように再現される記憶。ジーノから供給される絶妙で華麗なパスについては、赤崎の目に焼き付いているものがいくつもあった。

 あの時あの場に俺がピッチにいれば、あの人はもっと沢山のアシストを量産していたはずだ、俺が彼の力をすべてゴールに結びつけることさえ出来れば簡単にチーム成績はあがっていくだろうに、などと思いながら暮らしてきた。今もまたその延長として同じ思いを心に描いては練習に打ち込んでいた。

 赤崎の夢の一歩目が、すぐそこまで手に届くところまで来ていて、その夢と同じものが同じ空間にいる。ジーノとの連携のビジョンを常に心から離さない彼がすぐ目の前にいるジーノを見ないことなどできるわけもなかった。

 早くもっと成長して彼に名前を覚えてもらわなければ、俺という選手を認めてもらわなければ。そうして今から俺は彼との連携でゴールとアシストという明確な実績をこれからドンドン積み上げていくんだ。そうして彼にとっての人生で最高の右サイドの選手になってそして世界へ飛んでいく。赤崎はそんなことしか全く頭になかった。

 ETUの絶対的な司令塔は実はすでに彼を認知していた。それも自分の思い描いているものとは全く違う形で。勿論そんなことは本当に思いもよらない事だった。

   何を見てるの?カルチョ坊や
   ボクからのボールを欲しがってるのかい?
   やれやれボクからキミにあげられるものなどなんにもないよ?
   あるのはあげてはいけないものばかり
   そういう目をしちゃいけない、
   ボクの気をひくことをしては
   思いの他、大きな怪我をしてしまうことになるよ?
    *  *  *

 攻撃性が高く、守備の意識があまりないプレイスタイルは、彼の性質を体現しているね…とジーノは思う。前のめりでそこばかりみていると容易に裏を取られて崩されてしまうよ?今日もジーノは赤崎とSBの連携の不備から空いた裏のスペースをそれこそものの見事にズタズタにしていた。

 センスそのものは感じられるけれど現段階ではプレイヤーとしてまるで手ごたえを感じない。簡単すぎるのは退屈だ。この子はもう少し試練がないと成長できないのでは?こんな程度じゃ悪い遊びもそれほど楽しいものにはならなさそう。自分勝手な思考を片手にあくびをしながら退屈な練習試合を終える。
 監督が話す終わりのミーティングの内容など何一つ耳に入れないままに過ごしていた。

 寝乱れた夜の痕が肌に残る日はジーノは練習後最後まで時間を潰してシャワーを浴びることに決めていた。退屈だった待ち時間が、最近は少し楽しいものになっていた。目の前で無造作に着替える赤崎を本人には気づかれないように雑誌越しに見つめる。

   フフ、くやしそうだね

 上気する頬、汗をはじく肌。守備意識の薄さをズタズタにからかわれ自慢だったはずの攻撃も全然通用しない日々を過ごす赤崎は、今日も苦虫をかみつぶしたかのような顔をしながら居残り練習の準備をする。自主トレ時の苦悩の彼の姿をこうしてそっと眺めることは、ジーノにとってはサッカーを利用したちょっとした加虐の遊びにおける簡単なデザートみたいなものだった。

 ジーノにとっては自身の不調とチームの不調、退屈で且つ思うに任せないぎくしゃくとした不愉快な環境の中で、赤崎の存在はいいスパイスになっていた。プレイは未熟でもつぶしてもつぶしても立ち上がるその気性が、エネルギーが。ジーノに翻弄されて苦悩し立ち上がるその一連の姿が。退屈な時間の中の暇つぶしにちょうど良かった。

 苦悩するほどに赤崎は魅惑的に見えてしまうので少しずつ悪い遊びへの欲求も強まり心を支配する。やってはいけない遊びを熱望するそのジレンマとの戦いがジーノを楽しく練習に向かわせていた。

 サッカーを楽しむことが命題になっていた彼にとって願った叶ったりの存在だった。