お花結び

GIANTKILLING二次創作小説同人サイト

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飼い犬と飼い主 1

入団前から、出会い、現在、未来にいたるまでの超捏造妄想物語。ガチゲイはモッチーのみ。ジーノはバイ。あとは全員基本的にノンケです。ジーノ特殊設定で記述が多くなりますが私的にはザッキーが主役でヒーローみたいな気持ちで書いてます。酷い流れが多いですがすべて終盤のハッピーエンドを盛り上げるためです。

出会い3

   やめるんだよ?ジーノ
   彼はボクのおもちゃではない

 最初に会ったあの日以来、毎日のように自分の心に言い聞かせていたジーノであったが、ここ最近はその言葉の意味が少しずつ別の意味を帯びてくるようになってきていた。トップチームでの生活に慣れてきたのか、最近動き方が変化しはじめている赤崎のプレイスタイルについて、評価が少し肯定的なものになりつつあったのだ。

 今日は体調不良を言い訳に、軽いアップのみ合流して試合方式の練習はさぼってベンチで休んでいた。いつもは監督の怒鳴り声も無視しながら本でも持ちこんで読んでいるか、とっととロッカールームに退散して帰るかそんなところだった。だが今日はピッチの外から赤崎の動きをチェックしていた。

 甘い部分は相変わらず甘い。だけど時々…ボクの想定している効果的なサイドの動きをしている時がある。このチャンスメイクの発想は偶然?意図的に?でも本当に稀にそういうタイミングがある。もしワンタッチでボクが供給するならばあのタイミングでギリギリ届くか届かないかという感じだろう。出し手がボールを手にするかなり前に動き出す必要がある。オフザボールの状態で、受け手と出し手の双方が常に互いの意識と動きを認識しあってないと繋がらない。誰にも通じない、いつもボクにだけ見えていたような敵陣の中にある小さい穴の数々。観客も読めない意表を突くジーノの中にあるイマジネーション。
 ジーノ本人ももはやすっかり忘れていたような朧げで些末なビジョンが赤崎の動きに覆いかぶさる。通っていなければ客観的には無駄にスタミナを消耗しているだけのバカらしい動き。受け手と出し手の直感がつながったときのみに実現するファンタジックなプレイ。

 キミのやりたいことと、今キミが体力的にできることはとてもアンマッチではないかい?それに、残念ながらその動きを欲しがるパサーは、キミを理解できるパサーはそんなには沢山いない。そう、例えば昨日見たリーガのあの選手とかそういうことならば別だけど。彼の意図を見つけることが出来るボクは、今ここでこうして見ているだけ。なのにずっとそんな動きをやり続けるなんて、なんの意味があるんだ?
 座ってみているだけだったがジーノがこうして勝手に走る連想の波のままにカルチョを楽しんでいるのは久しぶりのことだった。それに気づいてなんだか笑ってしまったが、同時に不愉快な気持ちにもなった。この後彼がどうなるのかも含めて全部見えてしまったから。

   ほら、バカで未熟な監督が
   キミの不安定なその動きを叱責するよ。
   なんにもわかっちゃいない彼の手にかかれば
   蛹になりかけた芋虫をひねりつぶしてしまうことなど
   とても簡単なことだろう。

   全く気に入らないね。

 そう、本当に全く気に入らない。人としてはいい人なのかもしれない。けれど、この人は日本式の精神論、根性論をかざすことしか出来ない、愚かで些末な監督だ。そりゃ、あの子は未熟でまだまだ退屈な選手だけれど。監督がこの彼のきざしを見抜けないマヌケだなんて呆れてものも言えない。それにやっぱりこんな男がボクのいるこのチームを采配していることなど全くもって納得できない。一から十までボクの話など何一つ通じやしないんだもの。いい選手がどれだけ大量にいたとしても、指揮を振るう人間が凡人なら、その世界からは何も生み出すことはできないだろう。

 またピッチで監督を張ろうと頑張っている、キャプテンマークを巻いた彼の負担が大きくなる。彼は重みで選手としてもはや一歩も動けやしないようになってしまった。ねぇ、監督。あなたの大好きな精神論だけで捉えてみても、あなたよりあのルーキーの方がはるかに崇高なものを持っているよ?自分のすべてを投げ出すようにカルチョに身を捧げ、あなたの無理解にも素直に返事をして、常に努力を怠らない。
 あなたは彼に向かって、本当に自分はカルチョが好きなのだと、目を逸らさずに話をすることができるのかい?
   こんなことで彼がつぶされていくくらいなら
   ボクが悪い遊びのおもちゃにした方が
   どれだけマシかもわからない

   コーチはFW出身ではなかったかい?
   一体何を見ているんだい?
   これでは今季も降格候補どころか
   そのラインも簡単に踏み外してしまうじゃないか

 自分でも自分の中にある彼への思いがなんなのか、ジーノはうまく解釈できなかった。大事な非常食を思うがあまり、情が移ってしまったかな?そんな程度を落としどころにしておいた。そうして、ふと自分の疲れ切った内面に戻っていった。

   そりゃボクだって頑張るさ、プロなんだもの
   でもさすがに、さすがにこんな…

   ボクがこのチームの為に
   一体なにがやれるのかすら、
   もうわからなくなってきてしまったよ

   ボクの声はここの誰にも届かない

   カルチョは一人ではできないんだ
   一人じゃミラクルは起せない

 今日は特に残っている理由もないけれどなんだかロッカールームをふらついていた。体調不良と言った手前周りのメンバーからも帰らないのかと声をかけられる。けれどいつものように無視した。楽しく観戦した後に、マヌケな監督のせいで上々だった気分が台無しで、なんだかすっきりしなかった。こういう気持ちを抱えたままデートに向かうのは気が乗らなかった。

 無駄にうろつきながら、今日もひそやかに自主トレの準備をしている赤崎を見つめる。いつにもまして苦々しい顔をしているのがジーノにも苦々しかった。彼をこんな顔にさせていいのはボクだけだ、勝手な言い分を胸に抱く。
 そうしながら出会った当初から比べてさらに磨きがかかってきた彼の肢体の美を堪能する。
 勝気な彼のことだから、なにもわかっていないと監督に噛みつくかのような思いでいるかと思えば。どうやら今日はそうでもなかったらしい。思い通りに進まない彼の夢が、現実の苦悩が。今日の監督の叱責をきっかけに、剥き身で守備を知らない彼の脆い心を直撃して、ユラユラと揺れてしまっているかのようだった。

   本当に気に入らない
   なんにもわかっちゃいないくせに
   無神経に彼をこんな顔にさせて放っておくなんて

   嬲りものにする意図があるならまだしも
   ノープランで事後のケアもなく
   なんにも考えないで
   簡単にこんなに傷つけてしまうようなことをするなんて

   まったく、調教のノウハウもしらない愚かな素人

 居残り練習をしていたメンバーもあらかた帰り、今はトレーニングルームには多分今は赤崎だけ。ジーノはもう我慢している自分が馬鹿馬鹿しくなって、気が付いたら彼の元に向かっていた。