飼い犬と飼い主 2
ジーノがザッキーの自主トレに時々付き合うようになって体調管理と称して色々からかい始めます。ザッキー入団からしばらくした頃のお話。今回の登場人物は二人だけ。ほとんどトレーニングルームで二人ワイワイやってる描写。
体調管理3
「ねぇ、たまってたらまた出すの手伝ってあげようか?」
「!」
いつものように練習後のトレーニングルーム。前屈のストレッチをする赤崎の背中をゆっくりと押しながらジーノが囁いた。時々こうして赤崎の手淫を手伝うことを申し出る。赤崎は最初の時は口車に乗せられてさせてしまったが、もう二度と乗せられるつもりはなかった。なのにジーノは断っても断ってもこんな形で何度も何度も声をかけてくるので、本当に困っていた。この口のうまい男相手では毎回断る度に大変な目にあうからだ。
「だって万が一キミの出番があったらって思ったら。明後日でしょ試合。あんまり直前にやったら、体によくないよ?」
ジーノの今日の口実は、性行為は試合前日は避けること、というパターンのようだった。まだまだ監督からの評価が低いであろう赤崎からすれば、悔しいし認めたくないけれど、実際に次の試合に出場する可能性などほとんどないものと捉えていた。出れるかもよ?という言い回しをして自尊心をくすぐってくるジーノの言葉には少し嬉しさも感じるものの、その反面、嫌味かよ、と不貞腐れてしまいそうな感情もあった。だが、赤崎はそういう複雑な感情を持ってしまうことを、ジーノは見越していながらこういうことを言ってきているはずだと考えていた。
なんでこんなに俺にかまってくるんだ
ジーノが色々と知識を与えてくれることはありがたいと感謝の気持ちがあったが、赤崎は未だに彼が何を思ってそれをしているのか理解できなかった。かわいい後輩の面倒をみたいからだよ、という彼の言葉はなんとも腑に落ちないものを感じていた。なんというかジーノはプレイスタイルもさることながら通常持ちうる感覚そのものが、あまりにも凡人とかけ離れている人間という気がしたからだ。
「い、いや、いいッス!お気持ちだけで!」
「なんかいつも断ってばっかりだね。」
「当然ッスよ。もうああいうのは別に俺…」
あの時のことは、赤崎はもうすっかり忘れてしまいたかった。なのに、事ある毎にこうしてジーノはその話をしてきては絶対忘れさせてくれはしない。こっちが困ってるのは見りゃわかるだろうに、この人は意地悪な性格だ。赤崎はそう思った。
彼のトラッシュトークには乗せられないぞ!なんて思うものの今日はいよいよ言い負かされてしまう感じがした。特にジーノに、これって普通にボクの善意なんだよ?とあれの申し出をされてしまうと、どうにもこうにも対応の困ってしまって。
「キミ、彼女いないんでしょ?生理現象なんだから遠慮する必要なんてないのに。」
「遠慮とかそんなんじゃ…」
「自分でやるのが好きなの?なんかそういうのって暗いし不健康だと思わない?どうせなら人にしてもらうほうが気持ちいいでしょ?この前、気持ちよさそうにしてたじゃない?ねぇ、ボク下手だった?」
「…いや…あの…」
「前にも言ったけどスポーツ感覚でセックス楽しんでくれる女の子とか紹介してもいいんだけどさ。キミそういうのいやだっていうし。好きな子もいないっていうから、じゃ好きになりそうな子紹介しようかっていってもそれも断るし。なんか結構我儘だよね。」
「わ…我儘って…俺、まだトップにあがったばっかでそんな余裕ないッスよ」
「恋愛っていいよ?ヤル気と快感はどこかで繋がっているっていうしね?サッカーのためにもいろんなものを楽しめるようになることはトレーニングの範疇内。キミとかコッシーの考え方は、まるで逆なんだよ。抑圧的過ぎるのはいけないって前にも説明したと思ったんだけどなぁ。頑張るために頑張ってるだけで非効率極まりない。」
「…あ、もしかして王子にとっては女性との関係もそんな意識で?」
「ん?まさか。趣味と実益ってとこかな。」
「…ははは」
色んな事をサッカーにつなげて話すジーノに感心したとたんにシレッと趣味と実益と言われて、赤崎は呆れて力なく笑った。やっぱ趣味だよな、言わなきゃよかった、なんて内心呆れた気持ちでニコニコしているジーノの顔を見返していた。
「とりあえず射精の管理って結構大事だよ?出し過ぎも出さなさすぎもテストステロンの値を下げちゃうからあんまりよくない。」
「…テストステロン?」
「男性ホルモンで、筋肉付きやすくなったり闘争本能が強まったりする効果があるんだ。アスリートなら値下げないに越したことないよね。」
「そんなもん…すか」
「今はいいかもしんないけど。試合にバンバン出るようになってきたらオスの闘争本能が刺激されて多分分泌増えるから。それって性欲も強まっていくってのと同じこと。増えるのはいいんだけど手軽に本能のままに自家発電で安易な処理繰り返してたら、やりすぎちゃって寧ろパフォーマンスガタガタになってくよ?」
「いや、俺はそんな…」
「わかんないよ?今までもなかった?試合終わった後さ、興奮して寝れなくなったりしてさ?キミ、射精の欲求、我慢できるの?プロリーグだよ?これまでとはスタジアムのムードが全然違うよ?」
「……」
「本能と理性のバランス調整の訓練、絶対必要だよ。メントレの一環としてボクの管理、受け入れてみたら?そういう管理全般まかせてもらえたら、ボクきっとキミの役に立てると思うんだけど。メンタルも鍛えるのに気持ちまでよくなるんだから一石二鳥じゃない?管理者がいるってだけで自慰の抑止効果も出そうだしさ。なにもずっとじゃない、一時の話だよ。コツさえ理解すればあとは自己管理すればいいだけの話なんだから。」
こんなきれいな顔をして“自家発電”なんて爆弾みたいな言葉を時々使うジーノに赤崎は毎回ぎょっとする。気紛れだけど優しくてユニークなETUの麗しの王子が、実は下品な男だなんてサポが知ったら泣くに違いない。あまりにも実も蓋もない単語を並べたてる姿を見ると、見かけと違ってこの人もその辺にいる普通の男と一緒なんだなーと感じた。それと同時にちょっと話の展開に無理がある無茶苦茶なことを言い出す姿に、感覚がやっぱり凡人とかけ離れている人だな、と感じた。
「なんか、女性関係乱れてそうな人に理性を説かれるとなんか違和感あるンスけど。自分の方こそ調整出来てンスか?」
「え~?ボクはまわりが思うほど私生活そんなに乱れてないよ?」
実際は周りが思う以上に乱れた生活をしているのだが、ジーノは素知らぬ顔をして嘯いた。
「だってあんた、二股三股当たり前って生活してんじゃないンスか?」
「まぁキミと違って、やろうと思えばどんな子相手でもセックス出来るけどね。この日じゃないとダメって日にお気に入りの子に予定とかあった時とかさ。仕方がないから自分で…なんて考えるだけで最悪。ないない、絶対ない。でもボクのそんな態度に目くじら立てるような子なんて周りに一人もいないから大丈夫。」
「普通そういうのを乱れてるって言うんですよ。」
「ねぇ、真面目に聞いてよ。テストステロンの管理って結構難しいんだよ?適度にムラムラしつつ我慢して、たまに出してあげる程度が一番値を高く維持できていい。やっぱ、ボクの管理下で調整しながら射精するのが一番てっとりばやいと思う。」
「…いや、さすがに…」
「ボクに任せなよ…。キミの様子見ながら、微調整してあげられるよ?メンタル的に沈んだ時はテストステロンなんて考えないでスッキリすることがいい場面だってあるだろうし、ボクならきっと上手にキミを心も体もいい感じにしていってあげられる。セックスしようってんじゃなし、別にそんな固く考えることないよ。」
淡々と話をしていたかと思うと急に意味深に耳元で囁かれて赤崎は緊張した。ジーノは自身の両腕は赤崎の肩に乗せたまま、そのままやんわりと赤崎の背中を包むように体を寄せた。その暖かさに赤崎の心臓はウサギのように跳ねまわった。
ジーノはといえば、反射的に拒否をせず大人しくそのまま背中から抱かれている赤崎に大層満足していた。
こうして彼を抱きしめるチャンスをずっと待っていた
汗ばんだ背中、早鐘を打つような動悸が心地いい
それにほら、この子の耳の後ろはとてもいいにおい
彼自身の体臭の良さは
もったいなくて誰にも気付かせたくないくらい
そうしてジーノは本人に悟られないようにこっそりとそれを堪能した。そのまま沈黙が流れた。
ザッキーは今、なにを考えているのかな?
されるがままに従順で、ボクの適当なでまかせに騙されて、
本気でこんなバカげた管理を他人に任せるつもりなのかい?
キミはなんて愚かでかわいい子なんだろう。
「……!」
「おや?その気になった?」
ジーノに触られる想像でもしてしまったのだろうか。沈黙の中で赤崎のそれが少し反応し始めていることに本人が気が付くのとほぼ同時にジーノは指摘した。
煽ってあげるよザッキー。
興奮状態にあることを指摘して必要以上に意識させるのって効果的だよね?
もっと自分の欲情に注目して集中してごらん?
赤崎から見えないジーノの顔が、意地悪な微笑を浮かべていた。人をからかうことに快楽を感じるジーノの悪癖。嗜虐の喜びが珍しく顔に出ていた。でも赤崎はそのことには気付かない。
「あ…いや、すぐこんなのおさまっ」
赤崎の弱弱しい小さい声。ジーノの指摘が羞恥を呼び、それが興奮となり、さらに硬化していく。ジーノはその光景が楽しくて楽しくて仕方がない。もっと楽しくしたくなって、ジーノは耳に軽く触れるほどに近く唇を寄せ吐息がわざわざかかるようにしながらそっと低い落ち着いたトーンでつぶやいた。勿論、煽っていることには気づかせないように十分気を付けながら。
「そう?なんか、見た感じだと、おさまっていってる感じがしないけどね?大丈夫ならいいんだ。まさしくあれかな?本能と理性の葛藤の最中って感じ?」
「ッス…」
耳元がゾクゾクする。赤崎は何気ないジーノの行動にまた性的な快感を感じて意識しすぎている自分を恥じていた。背中から肩越しにそれをみつめられている今の状態がまるで視姦でもされているかのように感じてしまっていた。自分は頭でもおかしくなったのだと赤崎はぎゅっと目を閉じた。
ジーノの目はなにもかも見透かすような力があると赤崎は常に思っていたので、服の上からまるで中身が透けて見えてしまっているんじゃないかとも錯覚していた。おさめよう、おさめようと思えば思うほど、ますます意識してしまって、もうすっかり硬直し服におさえられていたいほどになっていく。ジーノはそんな赤崎の心理状態がまた楽しくて。わざわざ、凝視しているよ?とでもいいたげに、さらに深く覗き込むように赤崎の背に体重を乗せた。
丁寧に時間をかけて調教した子だと、
このまま言葉嬲りと見られているって刺激だけで
イッちゃうこともあるんだけどね
さすがに今のボク達の関係じゃ無理かな?
などとほくそえんだ。
おさまるまで見届けるかのようなジーノの行動。もうおさまりきらないところまできてしまった赤崎のそれ。現状がこのまま永遠に続くのではないのかと焦り赤崎はもうどうしていいのかわからなかった。ジーノはそういう赤崎を堪能しつくしていた。
こんなのホント単純な遊びだけど
この子が相手だと不思議と楽しい
このまま勘弁してあげても満足だけどどうしようかな
「ねぇ…ホントに大丈夫?痛そうだけど。」
「!」
沈黙が続いていた後に、また耳元で囁かれ、その刺激による快感に赤崎は体をビクッと震わせた。
この子はホントに耳が弱いね。
ストレッチの合間に、さりげなく意識的に育ててきた赤崎の弱点なのに、他人事のように心の中で嘯いた。ジーノはわざわざ左耳を重点にずっとチャンスの度にこうした刺激を続けていた。左耳の開発は左利きのジーノにとってのセックスの体位まで想定したお気に入りの子への一番最初のプレゼントのようなものだった。体の穴という穴はすべて性感帯たりうるという考えのジーノなので、一つ目の順調に大変満足した。
この子なら、
最終的には体のすべてが弱点になるくらいに
仕上げていくこともできそうかも
先の楽しみを妄想して笑いがこみあげてきて止まらない。でもジーノは自分がフフフッと本当に笑ってしまっていることに気づいていなかった。赤崎はその笑いを自身の状態への嘲笑と受け止め恥ずかしくて思わず背中に寄り掛かるジーノを払いよけた。
「なに?驚いた。どしたの?」
「…そゆの…失礼ッス。笑うとか」
「え?笑うって?」
「あんた、今、笑ってたでしょう?」
「…そう?気が付かなかった。」
きょとんとした顔をしているジーノに、赤崎はイラついた。ジーノは赤崎のどんな反応もおもしろいのでなんとも思わなかったが、少し肩をすくめた。
「そういうことって、勃起しているの笑われたってこと?被害妄想じゃない?生理現象なんだもの。そんなことで笑わないよ。」
「じゃ、なんで笑ったンスか!」
「だから…笑ってたかな?わかんないけど。」
「……」
「笑うとしたら、あれだね。もしかしてキミってよっぽど変態チックな子なのかなってそういうことかもね。」
「なっ!」
「だってね?そもそもの話がさ?今日は本能に任せて快楽選んだって平気な日なわけでさ?そんな場面で出来そうにもない我慢を無理矢理してみたり、わざわざボクの親切を断って自分でしようって考えるんでしょ?変わってるよ。なんか変な性癖だなって思うのも仕方ないと思うけど?」
「ほ…他の男にさせるほうがよっぽど変態だよ!」
「その考え方もなんか変態なんだよね。なんかネッチョリしてるっていうかさ。ボク若い頃なんて仲間同士で出しっこなんて普通にしてたよ?変に意識しすぎで逆に気持ち悪い感じ。」
「…普通に?」
なんでも真っ正直に受け止める赤崎がおかしくてジーノはたまらなかった。
やっぱり、少し自分の方がおかしいのかもなんて、思い始めてるよね?この子
ホントに素直すぎて
今までよく世間のいろんな悪い人に騙されないで生きてこれたものだよ
「そうだよ?普通だよ?当たり前じゃない。」
「それ…多分イタリアだから…」
「日本だよ?こんな変に意識しすぎて考え込んじゃう子なんて、今まで一人もいなかったよ?あの頃は単に遊びだったけど、ボクがキミに提案していることはちゃんと合理的な意味があって、ボクのメリット度外視でキミだけの為に言ってあげてることなのに、やっぱおかしいよキミ。」
「……」
「男にさせるのが変っていうけど寧ろ男だからおかしくないんだよ。同じアスリートで体の仕組みもよくわかっている者同士だろう?これが女の子だったら、逆にかなりいかれた女の子ってことになる気がするけどね?セックスならともかく男をいかせることだけしたがるなんて自分にない一物に興味津々な変態な子ってイメージ。」
「…そう…かな…いや…でもそれはあんまりにも…。」
フフフ…
迷ってる、迷ってる…!
ジーノはこみ上げる笑いを抑えるのが大変だった。
「それに交換条件でキミにもやれっていってるわけでもない。ボクは別にこんな即物的な行為なんて必要ないし。やっぱ女の子との愛あるセックスでイクのが一番健康的。やっぱ色々キミ、不健康なんだよ。大丈夫だよ?なんの心配もない。ボクはキミには性的な愛情なんてひとつもないけど、選手としてのキミは大切に思って言ってるんだ。キミのためなんだよ。」
「……。」
「ボクは了見が狭い人間じゃないしいいけどね?普通はこういう気持ち、断ったり否定したりするのって相手に失礼だよ?」
「あ…」
素直な赤崎は、ジーノのからかいなど全く気付かず、至極真面目に彼の言葉を受け止めていた。
俺は、やっぱりこの人の善意を踏み潰していることになるのか?
本人にこうしてあらためて口に出して言われると、
なんだか自分がとても傲慢で我儘なことを言っているような気がしてきた。
ひっかけたいジーノと、ひっかかりやすい赤崎。この二人の組み合わせというのは、ある意味では最高の、またある意味では最悪の組み合わせと言えるものだった。
「それ…やっぱりまだおさまってないよね。どうするの?」
「…どうするって…」
「あくまでも断るつもり?ボクの善意はキミには迷惑…なんだ…」
「あ!…そういうわけでは」
少ししょんぼりしてみせたら、ほら、その言葉
ダメだよ?そんなに簡単に線を踏んじゃって
つけいられてしまうよ?
ジーノは自分の仕掛けた簡単な罠に、次々に見事にひっかかっていく赤崎に、チェックメイトを言い渡すことにした。
「じゃ、おいで?」
今度は先ほどとは違って、ジーノの胸に赤崎の背中を寄り掛からせるように引き寄せる。バランスを崩されて慌てた赤崎だったが、ジーノのキュートで優しい屈託のない笑顔に何も言えなくなってしまってた。こんな顔されては、誰も断れるわけがなかった。やだ?無理強いはしないけど?と無邪気に言う。赤崎はしばし思案したが、観念して体を預けるように力を抜いた。それでも緊張で体は小刻みに震えていた。ジーノはそれを察して見つからないようにまた意地悪な笑顔を浮かべた。
ホント、かわいくってバカな子。
でも、せっかくだからボクにもう少し遊ばせてよ。
いいよね?
「あ、前回片付け大変だったよね、ティッシュ用意しないと。」
体を預ける赤崎を乱暴にどかして、立ち上がって部屋の隅にある箱のティッシュを取りに行く。その動作はきびきびと。話す言葉はハキハキと明るく。
「ね、何枚くらいいる?」
「……」
「結構沢山だったよね、この前。いつも何枚くらい使ってるの?」
「…そんな…わかんねぇッス。」
「じゃ、あれだね、箱ごと持ってっちゃったほうがいいのかな?」
「…お任せ…します。」
「ねぇ、精液のついたティッシュとかゴミ箱に捨てちゃってたらなんか少しヤバいかな?前回どうした?」
「え!」
「ゴミ集める人とか、変に思わなかったかなぁ?」
「…さぁ…それはどうか…」
「かといって、トイレットペーパー使ってトイレに流すとか証拠隠滅考えてもねぇ。多分、それだとボロボロくっついちゃって大変そうだよね」
わざわざ色気のない身もふたもない話を繰り返すジーノ。大きな声で話す内容でもないことをわざわざ聞かされて赤崎は大いに焦った。そうこうしているうちに赤崎はすっかり気持ちもあれも萎えてしまったようだった。
わざとだよ?かわいいザッキー
だってこんな簡単にじゃつまらないだろう?
もっともっとボクと遊ぼう?
うんとボクと楽しもう?
「あの…大きな声で…そんな」
「おまたせ!結局箱ごと持ってきたよ。…あれ?なんか落ち着いちゃってる?」
「……」
「んー、どうする?やめとく?」
赤崎はすっかり萎えてしまった状態であらためてそう尋ねられると、すっかり冷静になって途端に恥ずかしくなってしまった。ジーノがわざわざ、してあげようか、ではなく、やめておく?と否定的な方向の言葉を使ったことは気づいていなかった。やる気を振り絞ってお願いしてくれてもいいし。勇気がなくて言えなくても、それが焦らしになるなら次までのお楽しみになるし。どっちにしろ楽しいからね、とジーノはそんなつもりで言葉を選択していたのだ。赤崎を支配して振り回すことが本来の目的のジーノは結果がどっちに転んでも愉快だった。
「…あの…今日はやめときます。」
「そう?ま、この手のこと、今日のボクの話も踏まえて少し真剣に考えてみてよ。別に焦って答えを出す必要はないけどね。」
「はい…。」
「さ、ちょっと脱線しちゃったけど、ストレッチの続きやろうか?ダメだねー、こういうのは本当は負荷かけたすぐ後にやんないとあんまり効果ないのにね。ま、今日は脱線させちゃったのボクだけど。なんかごめんね?ぱぱっとしちゃえばって思ったからさ。」
あっさり引いて切り替えるジーノに赤崎はまだ戸惑っていたが、元の通りゆっくりと背中を押されるので懸命に集中しようと努力をしていた。その戸惑いの赤崎を、ジーノはおかしくておかしくてたまらない気持ちで眺めていた。素直すぎて退屈にも思える赤崎の反応の数々が、ジーノはとても新鮮に感じた。こんなシンプルな世界がとても心地よかった。
