飼い犬と飼い主 3
のん気なザッキーを前に、ジーノは終始、YOU!食べちゃいなよ!という声に悩まされて、食べようか食べまいかフラフラしつつ結局のところ…。ザッキーかなり据え膳化が進んできた入団1年目晩夏の頃のお話。ジーノの中にあるザッキーへの気持ちに少し変化が訪れます。すっかり気に入って戯れに軽く遊ぶおもちゃでは気が済まなくなってきました。ジーノがちらっとモブ女とやっちゃってます。ご注意。王子、赤崎、世良(名前だけ)、村越、モブ女。
カーサで流す見えない涙
おもちゃをペットに変えること。それはすべて退屈しきった自分の暇つぶしのための気紛れ。ジーノはそう思い込んでいた。
だが、実はそんなことはジーノの顕在意識が勝手にやっていることで、本当は全然違う意味を持っていた。ジーノは自分の本質を見る力を失っていて、こうしていつでも出鱈目で馬鹿馬鹿しい錯覚の世界に生きていた。
本当はジーノは人恋しく寂しがり屋で、自分自身で作り上げた高い障壁を超えてくれる誰かをずっと待っていた。ずっとずっと欲していた。だが、自分で作ったその障壁はあまりにも高すぎて、外にいる人たちは到底乗り越えることが出来ない代物だった。届かないながらも差し伸べられ続ける周りからの手。馬鹿なジーノはその手をことごとく払いのけ、そうして待っても待っても誰も来ないといいながら、一人で膝を抱えて生きてきた。年々広がる孤独という名の心の中の大きな欠損。幼い頃からずっと引きずる重たい傷。このことがジーノの今抱えている疲弊の根本要因だった。
ジーノの内側には、自分でも忘れてしまいたいほどに、いや実際に忘れてしまうほどに、大きな苦痛が生じる個所がいたるところに存在していた。だが、感受性が非常に強く人一倍痛がりのこの男は、人の助けを乞うことが出来なかった。そうやって他者に働きかける力をひとつも持ち合わせていなかった。
そんな男が、無意識ながらもようやく自分の力で高い障壁の一部をほんの少しながら切り崩して、自分から誰かに手を伸ばそうとしたのだ。今回の彼の決断はそういう意味で非常に重く、重大な意味を持つ行動であった。このことは、どん詰まりまで追い込まれて疲弊しきった潜在意識が、つまり孤独に泣くジーノの魂そのものが、自身の救済のために打って出た大きな掛けだった。
塔の孤独に泣きながら窓に背を向けるラプンチェル。
人知れず、我知らず、長い孤独の中で伸びたラプンチェルの髪が、窓をすり抜け地を這った。そんな現象によく似ていた。髪に気付く人がいるとも思えない、髪が梯子になるとも思えない。ましてやその痛みに耐えられるとも思えない。そんな絶望の中にある一寸の希望のような行為だった。
この先、この決断からジーノの状態は今まで以上に不安定な状態になり、そして赤崎もまた、ジーノの中の嵐に巻き込まれて大いに翻弄されることになっていく。すべては二人の無自覚の世界の話。ジーノが声をかけ、赤崎が軽く承諾した講習会の参加をキッカケにして、ちょっとした風が吹く。この先自分達になにが起っていくのか。何も自覚を持たないこの二人には、そんなことは全くわかるわけもなかった。
