お花結び

GIANTKILLING二次創作小説同人サイト

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飼い犬と飼い主 3

のん気なザッキーを前に、ジーノは終始、YOU!食べちゃいなよ!という声に悩まされて、食べようか食べまいかフラフラしつつ結局のところ…。ザッキーかなり据え膳化が進んできた入団1年目晩夏の頃のお話。ジーノの中にあるザッキーへの気持ちに少し変化が訪れます。すっかり気に入って戯れに軽く遊ぶおもちゃでは気が済まなくなってきました。ジーノがちらっとモブ女とやっちゃってます。ご注意。王子、赤崎、世良(名前だけ)、村越、モブ女。

飼い主の勇気

 今日は試合後の回復トレの日。これが終わった夕方には、赤崎とジーノの二人でかなり前に申し込んでいたTPPT講習に参加することになっていた。ジーノの住むマンションのジムで定期的に開催されている、実習もある初心者向けのセルフケア系の勉強会だ。

 実は今日、ジーノの心は揺れていた。かわいいペットの成長の為にこういうものに参加させるのは大いに意義がある。だが、頭ではOKと思っていても、自分だけの大切なテリトリーであるカーサの敷地に赤崎を招き入れることは果たして自分に耐えられることなのだろうかと。

   大丈夫だよ、ジーノ
   キミはよくやってる
   キミの試みは大いに成功した

   ほら、彼は今ではキミの立派な自慢のペットだ
   招き入れることになんの不安も必要ない

   そんな気持ち、馬鹿げてる
   犬にビビる飼い主なんて聞いたこともない

   それに今日はジムに連れて行くだけだろう?
   大丈夫、もし限界を感じても
   彼はキミの部屋を知らない
   キミのカーサからはまだまだ遠い場所じゃないか

   怖がることはない
   彼は敵ではない

   大切なかわいいかわいいキミの犬だよ?

 基本的に思考が多重なジーノは、今日の今日まで様々な気持ちがせめぎ合っていた。頭の中でワイワイガヤガヤ。考えがとりとめもない。頭がとても痛い。

   場所を抑えられたらあとは同じことじゃないか
   彼がキミのカーサを汚す、汚らしい人間でないとなぜ言える?

   あそこはキミの、キミだけのための大事な場所だ

   そんな場所に職場の人間を招き入れるなんて
   どうかしてる、言語道断なんだよ

   もし、あの場所が機能しなくなったら
   一体どうするつもりなんだ?

   引っ越しとかそういう安易な考えは無駄だ
   自分の中にある概念上のゆりかごを破壊されては
   その後再構築など不可能だ

   ヴィラの中だけで生きていくのか?
   あれが駄目だったから逃げ場を作ったんだろう?
   カーサだけはかわりがきかないことくらいわかりきったことだ
   馬鹿なジーノ

   今から用事が出来たとキャンセルしろ

   TPPT講習なんて、あそこじゃなくてもどこでもやってる
   お前を気に入ってくれた講師が
   いつでもこいと言ってくれてる
   そんなところが沢山あるじゃないか
   いくらでもそこにねじこむことができるだろう?

   なんでこんな真似を
   自殺行為だ、今すぐ思い直せ

 頭の中の、心の中の喧騒に、ずっと付き合っているととても疲れる。なるべく意識を中に向けないように努力する。そう、飼い犬が目を伏せた時、思ったよりもまつ毛が長い事とか、そういうことに注目しながらやり過ごす。目じゃなくても手でもいい。

   また昨日爪を切ったのか
   彼の切り方はまるで深爪で、
   でも骨ばった長い指にキレイにそろった
   薄い色の爪先がとても美しい

 散漫な思考が、頭の中を駆け巡る。

   この状態は退屈ではない。
   退屈ではないんだけれど、
   少々賑やか過ぎて、
   あんまり楽しくはないかもしれない。

 頭の中の喧騒を眺めるもう一つの自分の目線が、そんな風に感想を述べる。意識が、視点が、バラけていく。細かく細かく、とりとめもない。

    *  *  *

 そんな思いでジーノが揺れていることなど、赤崎は理由を全く知らなかった。練習が済んで帰り支度が終わると、彼は当たり前のように、じゃ、行きましょ、とジーノに声をかけた。

   あ、これ、いいのかなぁ

 赤崎の普段通りのいかにも若者らしいラフな服装を見て、ジーノはひとつ思い出したことがあった。ジーノの住んでいる高級マンションのジムにはドレスコードがあったのだ。カジュアルな服装を持たないジーノは日頃自分のジムのドレスコードを意識したことがなく、どのラインまで求められているのかよくわからなかった。なので赤崎の今の服装がOKなのかNGなのか、咄嗟に判断がつかなかった。問い合わせれば簡単な話だが無粋だし、このまま行って、もしひっかかればかわいいペットに傷がつく。ジーノは思案した。ひとつ明快な解があったが決断するのに時間を要するので、とりあえず二人でマンションに向かう前にコーヒーの一杯でも飲みに行くことにした。