お花結び

GIANTKILLING二次創作小説同人サイト

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飼い犬と飼い主 5

前回我慢できずザッキーに軽くちょっかいを出してしまって大後悔のジーノが今度こそはとほのぼののんびり飼い犬生活を目指します。良い先輩になるため頑張ってる幸せなジーノと、優しいホワイト版ジーノに可愛がられて幸せなザッキー、今回はそんな二人の原作1年前の年明けから夏までの話。エロなし健全。王子、赤崎、赤崎父、モブ女(気配)、ジュニアユースっ子(気配)、赤崎のジュニアユースの仲間(気配)。次回!バトル展開ッッ!!(エッ

良き後輩として飼い犬として

 彼の魅惑的な姿に圧倒されながらも、要するにどういう意味かと後になって冷静に考えた。ショックだった。

   “ボクとキミは先輩と後輩。つまりは飼い主と飼い犬。ボクにとっては同じことだよ?”

 今まで何度も何度も彼に確認してきた彼の気持ち。ああ、これが本当に彼の答えなのだと理解した。こんなにも真に受ける理由は、俺が薄々勘付いていないわけでもなかったから。そう、いい風に考えようとしていた自分を知っていたから。彼の言葉はいつも一貫していて、彼の行動に目を瞑ればとてもシンプルだ。

 彼にとっては後輩とは従属する犬であるという認識なのか。それほど彼は俺のことを自分とはかけ離れた存在だと捉えているのか。確かにそうだけど。彼は完璧で素晴らしい存在ではあるのだけれど。あからさまな言葉が頭から離れない。“飼い犬”。俺は彼にとって“飼い犬”。人間扱いすらする価値のない、憐れな存在。大型犬とか、犬猫を抱き締めたのと同じとか。彼の話していた言葉を思い返せばさもありなんで。

 あれから王子は前と同様時々自主トレに顔を出すようになった。あんなに待ち望んでいたことだったのに、今は素直な気持ちで彼の顔をみることが出来ない。けれど、そんな俺になにも言わず、彼は相変わらず綿密で丁寧なアドバイスをしてくれる。まるで、あの日のことが嘘のよう。サッカーだけで生きてきた俺が、あれから益々彼のことが頭から離れなくなってしまった。彼との思い出の数々が脳裏をかすめてため息を付く。

   俺が王子に信頼を積み重ねていった間
   彼はずっと何を感じていたんだろうか

   体調管理だと言って俺のを初めて触った時
   「ようこそ」と俺を家に招き入れた時

   俺があの人に仲間だって言った時
   胸貸すから泣いていいって言った時

   なんでいつも俺にかまうんですかって
   彼に何度も何度も繰り返していた間中…

   そして、俺がこんなにショックを受けている今、彼は何を思う?

 楽しかったんだろうか、そういう、俺と過ごした毎日のこと。体に触れては俺を弄んだあの日々を。もうこんな気持ち捨ててしまいたい。この遊びはおしまいだと彼は言うので、そうしないと一緒にはいられないと彼は言うのだから。でも無理で。捨てきれない思いを抱えて、ただそれを隠すように努力して、そうやって彼の傍にいさせてもらうことしか出来なかった。犬でいいから傍にいたいだなんて。自分のプライドを曲げていいなりになってでもとか、こんな日がくるなんて思いもしなかった。

    *  *  *

 前のいわゆる挑発ごっこの遊びを終わらせた王子は新しい遊びを始めたようだ。時々、目が合うと“お手”といって手を差し出してくる。無視するとそれっきり自主トレに顔を出さなくなる。数日してまた、“お手”という彼に素直に従うとご褒美のつもりかその日は自主トレに顔を出し、俺を食事に誘う。繰り返される遊びの中で俺は気付いた。彼のやるこの“お手”の遊びは、予定がびっしり詰まった彼が、ほんの少し空き時間を作った時の合図だった。お利口にしていれば、かまってあげるよ?という彼のサインだった。

「お手」
「……」
「フフフ、なんだかキミ、随分お利口さんになってきたね?」

 この遊びの意味を理解した俺は、もう二度と彼の手を振り払うことはなかった。彼の手の平に乗せた俺の手を、やんわりと彼が包むこの一瞬が彼と触れていられる唯一の時間。この時浮かべる彼の笑顔はいつも見惚れるほど美しかった。非常階段で見上げた、あの王様と家来に似た情景。

 この手を繋ぐ一瞬以外では、彼の温度を感じることは皆無だった。犬が二度と勘違いを起さないように、彼はもう不要な接触は避けるという明快な線引きをしているらしい。寂しい気がしたが、受け入れる他なかった。