お花結び

GIANTKILLING二次創作小説同人サイト

*

飼い犬と飼い主 5

前回我慢できずザッキーに軽くちょっかいを出してしまって大後悔のジーノが今度こそはとほのぼののんびり飼い犬生活を目指します。良い先輩になるため頑張ってる幸せなジーノと、優しいホワイト版ジーノに可愛がられて幸せなザッキー、今回はそんな二人の原作1年前の年明けから夏までの話。エロなし健全。王子、赤崎、赤崎父、モブ女(気配)、ジュニアユースっ子(気配)、赤崎のジュニアユースの仲間(気配)。次回!バトル展開ッッ!!(エッ

接近~FK

「で、王子聞いてます?」
「うん、聞いてるよ?」

 ジーノは今日は久しぶりに赤崎に“お手”遊びを仕掛けて自宅の昼食に招いた。調子に波のあるジーノにとって、こんな些細な二人の時間がとても大切なものだった。赤崎のサッカーの情熱はいつもジーノの心を洗うので、充分それに触れたい時にはジーノは飼い犬を家に呼んで酒をふるまうことにしていた。今年に入ってからのジーノの一番のそして特別なリラックスタイムだった。

 ジーノは自宅で用意した食事をとる際に、昼間っからなんだけど、たまにはいいよね、と赤崎にワインを薦めた。午前練だというのに今日はうだるように暑く、赤崎はビールビール!とうるさかったけれど、ジーノは断った。用意がないし買いに行くのも暑くてだるい、とスパークリングで我慢するように言った。赤崎は渋い顔をしたが、部屋の空調も次第に効いてきてジーノに用意されたものをキュッと飲んだら結局はそれで気が済んだようだった。

 飼い犬は外で飲むと全然酔わなかったり、酔っても無口になったり不機嫌になったりすることが多い。けれど、不思議とこの家では酔いが早く、まるで子どもに戻ったみたいにかわいくなる。ジーノはそれを見るのが好きだった。酔った赤崎は普段以上にサッカーの情熱にあふれ、一杯話したいことがあるようで、普通以上にしゃべりっぱなしになる。それを聞くのが楽しいのだ。自分の手元にいる時にリラックスしきって内面をあらけざらけにする飼い犬を見ると、この子はボクのだ、と不思議な満足感を覚えていた。

 今、そんなかわいい飼い犬が酔って話をしているのは、先日ジュニアユースの練習に顔を出した事。あれこれ後輩にエラそうなことを言ってきたらしい。

「で、俺、こういったんですよ。サッカーってのはやっぱりカックイイ!特にこう、バシー!っとシュート決めた時とかめっちゃ目立つし気持ちいい!ってね。テンションが上がるっていうか興奮するっていうか?あんなの体験しちゃったら絶対やめらんねぇ!だから俺ね?お前らも頑張れよ!俺も今頑張ってっし、一緒にスタジアムでプレイしようぜ!ってね?」
「…うん、フフフ」
「俺ね?なんかちょっともっとあの頃こういうこと言っておけばよかったなって。俺はどうしたい!ってのはよく言ってたけど、まわりにやろうぜ!って声掛けはあんましてこなかったっていうか。そしたら色々違ったのかな~、ねぇ王子?だって昔ね?めっちゃうまい奴がいてね?そいつがジュニアユース辞めた時、ガーンっていうかそんな感じで…あ、スイマセン」

 ジーノは支離滅裂に話す飼い犬が面白いからドンドングラスにお酒を継ぎ足していく。赤崎はもう、なにがなんだかわからないんだろう、入れる度に一礼しては何口か飲んでしまう。ジーノのいたずら心で、飼い犬はフルボトルを開けてしまうくらいの量をあっという間に飲まされてしまっていた。何回か飲ませているので、ジーノはこれくらいなら飼い犬は翌日具合が悪くならない程度に楽しいお酒になることを知っていた。特にワインの白系や無濾過の日本酒なんかは飼い犬を綺麗に酔わせるので、ジーノは彼用に何本もストックを用意していた。飼い犬はお酒の中でも一番ビールが好きみたいだったが、あれだとあまり酔わないし、酔うほど飲ませるとお腹が膨れすぎて具合が悪くなる。だから何度言われてもジーノはビールを出すことはなかった。自分が飲みたい時用にストックは常に置いてあったけれど、そういう理由でいつも知らんぷりした。

「だって、こう、そいつのってバシー!って言うよりもミドルが、ズバー!っていうか?あんだけやれてて普通に高校入って教師になるんだーって。まあ、サッカーは顧問とかやれそうだったら嬉しいなとか言ってたけど~…。そんでいいの?っていうかー。一緒にやってくんじゃなかったのかよ!ってか~、ねー?王子、サッカーって楽しいッスよね?俺、もし寝なくていい体になれたらずーっとボール蹴ってると思う。ずーっと。ずーっと。」
「…うん、キミはサッカーが本当に好きなんだね。フフ」
「んで、こう、バーン!!てね。…王子?聞いてます?」
「フフフ、聞いてるよ?」

 今日は最初はザッキーがいつも聴いてる音楽がなにかっていうことを話していたのに、やっぱり結局サッカーが大好きだって話になってしまっていた。ジーノは予定通り飼い犬がサッカー大好き大好きっていう話をしている姿を見ることが出来て本当にとても楽しかった。赤崎はじっとしてられないのか立ち上がってシュートモーションを早くするにはどうすればいいのかとか、色々質問にもならない質問をしだしたりするし、見ていて本当に退屈しなかった。次の日にはほとんど忘れてしまっているのも面白くて、ジーノは気が緩んで安心して深酔いしている彼がなんとも愛おしかった。

「だからね、俺…、ん?王子!聞いてるの?!」
「はいはい、クスクス」
「この前のアレ!すごかったって話ッスよ!さすが!スゲー!かっくいー!!」
「なに?なんの話?」
「ほら、こうあんた左利きだからね?蹴る時にこう、なんていうかこういう姿勢で…」
「えぇ?今度はボクのこと?話が飛んでて全然わかんないよ。」
「なんでわかんないンスか!めっちゃ巻いて入れてたでしょ!俺、あれ昔からスッゲー好きなんスよ!」
「あー、この前のFKの話?」
「そう!なんの話だと思ってたんれすか!ホンット、あんたってずりー!めっちゃすげーし!かっこいい!俺ね?あんたが直接FKで決めたゴール、全部言えるくらい好きなンすよ!?すごいでしょ!」
「…へぇ…初耳。」
「フフン!もうね?どんだけあんたのゴールシーン、繰り返し見てきたことか!スタジアムでもね?あとサッカー番組とかもETUのでてるシーンあれば全部とっといてるし!おやじと一緒に見てたあの…ホームの試合ん時の、ロスタイムのゴールシーンはもう忘れらんないな!でもあんたは忘れてるでしょ!ホント、なんなの?なんなの?」
「へーそうなの?じゃ、ボク自分でわかんなかったらキミに聞くことにするよ、クスクス」
「あんたすごすぎるから!知らないでしょ!ユースん時とか廊下ですれ違うだけでも俺めっちゃ緊張とかしてたし!だってオーラ出まくりでかっこいいし!」
「…ザッキー、今日どうしちゃったの?変だよ?フフフ」
「王子のプレイってパスとかも絶妙でめっちゃかっこいいんだけど、やっぱセットプレイは盛り上がりますよ!だって、外す気しないもん!王子って日頃すっげぇ優しいのにピッチではめっちゃ怖い選手なんだよな!壁を前にして立ってるあんたってさー、ホント絵になるっていうか!迫力あってさー?絶対相手選手、ああ、かなわない、って思っちゃってるって!ホント、めっちゃかっこいくて!敵チームじゃなくてよかった、俺昔からホント王子のこと大好きで!」
「……」
「ちょっと王子、聞いてます?」
「あ…あぁ…うん、聞いてるよ?」
「…ん?また?…ども」

 ジーノはなんとなくワインを継ぎ足した。すると本人に気付かれないようにさりげなく継ぎ足すのがジーノのテクニックだったのにカチリとボトルがグラスに当たって、らしくない自分に苦笑いした。相変わらず赤崎は入れる度に一礼しては何口か飲んでいた。

 ちょっと不器用にワインを注ぐジーノの心は、戸惑いと嬉しさと恥ずかしさで一杯だった。赤崎が素面だととても言いそうにないような直球な褒め言葉を羅列しはじめたのが原因だ。日常的に飽き飽きするくらい褒められる場面が多い男なのに、突然飼い犬に美辞麗句を並べられて、何故かひどく照れてしまったのだった。不思議といつも他の人達に言われる時とは全然違う感じがしていた。

「だから今ね?毎日夢みたいに幸せなンス!大好きな王子と、大好きなサッカーやって、こんなに俺、幸せでいいのかなーって!マジで王子とこういう感じで話して遊びに来るなんて考えもしてなかったし?勿論ETUは一つの過程でしかないとは思ってるけどぉ、ほら、俺もっと成長するつもりだし?でも王子がね?色々アドバイスしてくれたりとかマジありえねぇっしょ?一緒にいると勉強になること沢山あるし、そうじゃなくてもなんかいつも楽しいし、嬉しいし!王子、俺、幸せなンス!ホント!!はやくピッチに立ちてぇ~!!」
「…ザッキー…」
「俺、ぜってぇレギュラーになったら王子のアシストで点決めて、アシストして王子に点決めてもらうし!どうしよ!ゴール決まったら王子に抱きついちゃうかも?どうする?俺、どうする??スタジアムで?みんな見てる前でえぇ?ギャーマジで?!やべー!でもあんた避けそうだな~」
「キミ、いつもそんなこと考えて練習してたの?まいったな…クスクス」

 サッカーの話をするのはいつものことだったけれど、飼い犬が飼い主の話をこれほど具体的にするのは初めてのこと。ジーノも自分が少し顔がほてってきたので、ちょっとしか飲んでいないのにボクも少し酔ってしまったのかな?などと考えていた。

「またあんなん決めてくださいね!ギューン!って!」
「ん~?」
「そしたら俺めっちゃ嬉しいし!ま、外すとこなんて想像もつかないけど!」
「…やだなぁ…さりげなくプレッシャーかけないで?」
「俺の王子はプレッシャーとか平気ッスから!だって、王子ッスよ?ETUの貴公子!」
「まいったな…」
「ホント、王子が蹴るの、すごく綺麗で…でね?こう、巻くのもいいけど…強烈なのもいいし、PKならクッキアイオとかも…絵になりそうだな~、王子…聞いてます?」
「…うん、聞いてるよ?」
「俺、きっとあんたみたいなキッカーに…王子…」
「…疲れちゃった?眠い?」
「夢みたいに…FKが…あんたの…一番…」
「しょうがないなぁ…」
「…ああいうの…王子…いいなぁ…綺麗…聞いてます?…弾道が…ほら…俺もああいう…」
「…目が開いてないよ?」
「…傍で…みたい…綺麗な…一番の…」

「王子…綺麗…すごぉく…、…めっちゃ…好…」

「……」

  

    *  *  *

 ジーノは思う。かわいい飼い犬は本当にボクによくなついていて、本当にボクのことが大好きで…と。

 憧れのETUの貴公子の繰り出すスーパーなセットプレイは飼い犬の中にある綺麗な綺麗な夢。ジーノは飼い犬がかわいくてかわいくて仕方がなくて、ご機嫌な様子で情景を語る、彼の中の大切な夢を心から守ってあげたくなった。飼い犬は去年、初年度の意気込みをすっかり空回りさせて、シーズンが終わった時に何とも言えない顔をしていた。折り返しのこの時期にあってチーム成績は振るわないけれど、ジーノは今季、これから少しでも彼の気持ちをいいものに変えてあげたいと願った。

「…特に直接FK、頑張っちゃおうかな?…ねぇ、だからちゃんとみててね?」

 もうすっかり眠ってしまって飼い犬はニヤニヤ笑いながら夢の中。ジーノは相変わらずチームも自分も調子は不調で色々思うところはあったけれど。それはひとまず置いておいて、気付かれないようにダイニングテーブルに突っ伏するかわいい飼い犬の頭をそっと撫でた。