飼い犬と飼い主 6
ジーノご乱心アワワで色々踏み外して幸せ飼い犬生活がぶっ壊れます。やっとこR-18 な時期に入りました。(ほのぼのエロなしから一転、バトル展開!というよりウツ展開?) 5と6で落差激しいです。王子、赤崎、黒田、夏木一家、村越、モブ女で、ジノ→←ザキ、ナツ+ジノ、ジノ+コシなどなど。
腹ペコジーノ
「次の休みの日、一緒にナッツのお見舞いに行こうよ。」
夏木さんの入院が決まってしばらくしたある日のこと。王子が練習後に俺に声をかけてきた。勿論お見舞いそのものは一度は行くべきだと思ったし行くつもりだった。けれど、彼の申し出については戸惑いの方が大きかった。
「俺とあんたが一緒にってなんか変じゃないですか?」
「ん?」
「だって俺ら日頃みんなの前でほとんど話とかもしない状態なのに。夏木さん、びっくりすると思いますよ?」
「あぁ…そうか。…それもそうだね。」
王子は今気が付いたとでも言わんばかりのポカンとした顔をしていた。元々二人でいることに関して人目を避けているのはこの人だし、神経質なほど注意深い人が一体なにを言い出すのか。俺のお見舞いは予定していた通り若手のみんなで行った方が不自然じゃない。そう説明すると王子は納得して頷いた。話はそれで終わりかと思ったらその後彼はこう続けた。
「じゃ、ボク一人で中に入るからキミは車で待っているといい。病院帰りに一緒にご飯でも食べようよ。」
飼い主の命令は絶対服従。そんな口調で王子は言った。車の中にいるんじゃついていく意味もよくわからないけれど、特に用事もないので付き合うことにした。高圧的な態度に思えたのに、一緒に行くと決まったら少しほっとしたような顔をしていた。最近の王子は時々よくわからない。一人で行くのが心細いわけでもあるまいに。
* * *
夏木さんの病院の帰り道の王子の一言。
「ねぇ、もう馬鹿ナッツの話はうんざり。今日見舞いに行って義務は果たした。それでおしまいでいいよ。」
王子は病院に向かう途中も不機嫌だったけれど。帰りもちょっと俺が、夏木さん元気にしてましたか?って聞いただけでこの調子。
「他に考えなきゃいけないことは山ほどある。ETUは彼の離脱で今季の勝ち点足りなくなるかもしれない。のん気な顔して人の心配なんてしてる暇なんてないんだよ。キミもボクの前で馬鹿面晒すつもりかい?1トップの席が一つ空いたんだ。サイドやりたいキミにも無関係じゃないだろう?お人よしな事言ってないでスタメン狙っていかないと。」
「そんなつもりじゃ…。義務果たしたとか変な言い回しして、一体なんスか?あんた夏木さんと仲良かったじゃないですか。人を人として心配するのとチームについて考えるのも別モンでしょ?ちょっとおかしいんじゃないッスか?」
つっかかった言い方をされてつっかかった言い方を返した。機嫌の悪いこの人がこんな物言いを許すはずもないと思ったのに、運転席からチラリと流し目を寄越した王子は無言で嘲笑のような意地悪な表情を浮かべた。そうして、
「何食べようか?お腹空いたよね?」
と話題を変えた。さっき、おしまいでいい、と彼が口にした通りもう本当に夏木さんの話をする気はないようだった。
* * *
お腹が空いたと言う割には、王子の食は進まなかったようだ。まだ半分も残っているのにフォークを置いてしまった。考えることは山ほどあると言った彼は食事中サッカーの話を一つもしなかった。そのかわりに彼の友人達つまりは王子の彼女達の話を、俺にとっては面白くもない話を繰り返していた。バカンスの夜の月がいくら美しかろうが、次はどこに行くのか悩んでようが、そうですか、としか返事のしようもなかった。
「王子、それ、もういらないンスか?残すなんて珍しいですね。」
「…帰ろっか。」
サッカーの話どころか俺の話も聞く気がないみたいに噛み合わない返事。くだらない話に退屈しているのが通じたのか、王子はため息をついてうんざり顔で立ち上がる。この人は味付けがおかしかろうがなんだろうが注文した料理は基本的に残さない。今日俺を無理に誘ったことで食欲もないのに食事に付き合ったんだろうか。
そう思って車に戻ると、
「なんか、お腹空いた…」
と彼はつぶやいた。なんだよそれ、と俺は呆れた。
