お花結び

GIANTKILLING二次創作小説同人サイト

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飼い犬と飼い主 7

ザッキーがジーノの家に泊まった朝の話。夏木負傷の9月以降2か月くらいこの調子で暮らしますが、お前ら真面目にサッカーしる!w ジーノはザッキーと出会って最初の日から終わりを見ていますが風呂敷を畳もうとする度に何度も何度も自らぶち壊してしまいます。この時期になると発言と行動の乖離が益々進んで、ほとんどコントロール出来ていません。そして当事者のザッキーもまた情報が少なすぎてジーノの状況を全く理解出来ません。

クラック2

「おはよう、ザッキー。いい朝だね?なんかお腹空かない?」
「おはようございます。」

 うっとりするような美しい笑みを投げかけられて、赤崎は思わず反射的にいつもどおり返事をした。今回の出来事は彼にとって大事件だったのだが、目の前にいる綺麗な男にとっては単なる当たり前の日常生活のようだった。こんな挑発遊びの後、彼が何を言うのかいつものパターンを知っていたので、彼を逃がすまいと次の言葉を続けた。また忘れろと言われるのはまっぴらゴメンだったからだ。

「あんだけ昨晩、俺を食い散らかしておいて、あんたはまだ腹減ったって言うんスか?」

 ジーノはあまりに想定外の返事を受けて、呆気にとられてしまい、思わず笑ってしまった。

「キミにはかなわない。ボクが言いたかったのは、本物のお腹の方だよ。ま、キミをもう一回いただいちゃってもかまわないけどね?」

    *  *  *

 いくらなんでもやり過ぎだ、なんでもいいから飯を食わせろと赤崎はジーノに催促する。それを受けてジーノはわずかに頷いて、そのままキッチンで朝食を作り始めた。赤崎は大げさに不満げなため息を付いて、ダイニングテーブルのいつもの椅子に腰かけた。料理があまり得意でないので日頃から支度を待つ時はこんな感じにすることが多かった。

「そういえば、キミと朝食を一緒に取るなんて初めてだね。」

 食事の支度をしながらジーノが何気なく赤崎に話しかけた。視界がぼやけて日常会話をこなすのだけでも精一杯だった。話の中身も適当で、別に返事も必要としない反射的な無意味な行動だった。

「なに言ってんスか?遠征んとき、あんた朝飯食ってないとでも?」
「それはそうだね。でも同じテーブルで食べてないからさ?ああいうのって一緒に食べたって言える?次のアウェイでは一緒に食べてみよっか。」
「あんたの周りにいる面子、濃いからご勘弁。」
「えー?コッシー傷ついちゃうかもよ?あの人結構かわいいのに。」
「ホント王子のセンスってわけわかんないッス。俺とか村越さんとかがかわいいとか、意味不明レベル。」

 いつもと全く変わらない気楽な日常会話をしながら、ジーノはもう一度コーヒーを入れることにした。今度はうまくコーヒー豆を挽くことができて、室内にはその香りがふわりと広がっていった。出来なかったことがやれるようになってきて、少しホッとする。少しずつ調理にも集中力が戻り始めたのを感じて、また少し楽になれた。大丈夫、これならまだ王子を維持出来そうだ、と胸を撫で下ろす。

「大したものないけど。」
「これが大したものじゃないって、なんつー生活してんだか。ま、あんたの食へのこだわりは知ってたから驚きはしませんけどね。」

 いただきます、と礼儀正しく手を合わせ、赤崎は出されたものをカツカツと元気よく口に運んだ。ジーノは彼が食べている姿を見るのがとても好きで、眺めているうちに目の前の男が果たしておもちゃなのか、飼い犬なのか、よく整理できない状態に困っていた。一体これは誰なんだろう?このままいつもの王子的な応対を選択し続けていることは正解なんだろうか?複雑なことが出来そうにない状態なので取りあえず直接本人の反応を見ることにした。

「ねぇ、昨日の遊び、楽しかった?」
「遊び?あんたには遊びなんだろうけど、俺全然慣れてねぇーからそれどこじゃなかったし。体中イテェし。ホント、あんたスタミナ半端ねー。もっとピッチでそのスタミナ活用すればいいのに。」
「おや、説教はゴメンだよ。飼い犬の癖に飼い主に命令しようっていうの?」

 飼い犬の癖に。ジーノは自分で言っておきながら、ドキリとした。まだ自分は目の前の男がおもちゃなのか飼い犬なのかもわかっていない。大いに体を弄んだ翌日にこんなことを言う自分に対して、彼はどういう反応を示すのか?不安になった。

「命令じゃないッス。素直な意見と疑問ッス。あんた、まだまだやれるんだからやりゃいいんですよ。」

 特に変化が見られない赤崎の応対。頭がぼんやりして話の意味もイマイチよくわからない。まだまだやれるってなにをいってる。ボクはもう限界を超えている。

「…ボクが?そんなことないよ。」
「なんかホントあんたのそういうとこ、腹立つんですよね。謙遜するタイプでもないところが益々腹立つ。」
「キミはボクに夢を見すぎなんだよ。これで十分頑張ってる方だよ?」
「外ではあんなに自信満々で不遜な態度のくせに、あんたはホント自分に夢見なさすぎ。ま、そのおかげで俺はあんたに会えたんだから結果オーライッスけどね。あんたが本気ならこんなとこでちょろちょろしてるタマじゃないっしょ。何か国語もしゃべれるんだし。」
「……」

 話が全然通じない。ジーノは赤崎の勘違いを訂正する気力も、説明する能力も持ち合わせていなかった。ま、どうでもいい、と思った。

「なんスか?」
「いや、昨日ボクに強姦されて、翌朝よくそんなこと言えるなーって。」
「!」

 赤崎はパンを喉に詰まらせて思わずむせてしまった。

「あぁ、大丈夫?ね、ほら、お水。飲める?」
「あんたね!なんてこと言うんだよ!」
「なにが?」
「ご…強姦とか…」
「だってそうでしょ?なんとなくさ、急にやりたくなっちゃったんだもの。ボクね、さかっちゃうと駄目なんだよね。あんま我慢きかなくってさ?」
「…い…今更そんな。強姦とか…。ホントあんたって性格わりぃ…わかってるくせに…」
「なにが?」
「大の大人が、男が、簡単に手籠めにされるわけねぇだろってことだよ!」
「あ!昨日の遊び、気に入ってくれてたんだ?なんだ、嫌々かと思って…早く言ってくれればよかったのに。」
「気に入ったとか、嫌々とかそういう話ふるんじゃねーよ!何言ってんだあんた!恥とかてらいとか知らねぇのかよ!」
「なにそれ、わかんない。ねぇ、ならさ、ご飯終わったらまたする?」
「はぁ?あんたどんだけスタミナ無尽蔵なんだよ!無理だろ!」
「フフフ、冗談だよ。」
「冗談に聞こえねぇよ!」

 楽しく笑いながら、ジーノは益々わからなくなっていった。この子は一体誰なんだろう?ずっと入団以来、ひとつも変わることのないこの男は。沢山の罠を使って釣り上げた獲物は、おもちゃから犬に変り、犬に変えてからおもちゃに戻し。ジーノの策略に関わらず、ずっと彼は彼のままだった。右にも左にも彼の道を変えて大いに振り回してきたつもりだったジーノは、彼の中の安定した自分への信頼感について大きな喜びを感じたと同時に決定的な不安要素に感じた。

   振り回されているのは、あきらかにボクの方だ
   彼の絶大な信頼感は、もはやボクの手には負えない
   こんなに彼を陥れたのに、彼は全く変わらず真っ直ぐだ

   周りを見渡すボクの目に映るのは、
   足元にある今にも崩れそうな崖っぷち
   ボクの半分はこの谷底の下にいる

   真っ直ぐボクを見つめる彼の目には、
   嘘で塗り固めたボクの手しか映っていない
   もうすっかりほら、あんなに安心してボクに笑って

   ボクはもう、自分の力ではこの手を離すことが出来ない!
   このままでは駄目だ、ここのボクはあそこのボクと引き合うから
   一緒に足を踏み外して

   違う、一人が寂しくて彼をあそこに連れて行きたくてボクは…

   誰か…ボクのあの子を助けてあげてよ、どうしよう、誰か…!