お花結び

GIANTKILLING二次創作小説同人サイト

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飼い犬と飼い主 7

ザッキーがジーノの家に泊まった朝の話。夏木負傷の9月以降2か月くらいこの調子で暮らしますが、お前ら真面目にサッカーしる!w ジーノはザッキーと出会って最初の日から終わりを見ていますが風呂敷を畳もうとする度に何度も何度も自らぶち壊してしまいます。この時期になると発言と行動の乖離が益々進んで、ほとんどコントロール出来ていません。そして当事者のザッキーもまた情報が少なすぎてジーノの状況を全く理解出来ません。

穴隙~綴じ蓋

 昨晩の出来事が嘘のように、笑って笑って、二人食事を済ませて食器を片づける。赤崎はそこで紙の上に綺麗に並べられたサボテン達に目を留める。

「これ、どうしたンスか?」
「…あぁ。…植え替えをね、しようと思って。」

 咄嗟に無意味な嘘を付いた。なんでそんなことを言ったのかもジーノ自身わからなかった。

「あぁ、いいッスね、植え替え。俺、手伝いますよ。来年こそはこいつらちゃんと花咲くといいですね。なんか楽しみだ。」
「え?」
「え?って、これ毎年咲くんじゃないンスか?数年毎?サボテンよくわかんなくて。」
「…うん、花芽がついたのは今年初めてで…でも、基本的には…毎年かな?」

 簡単に未来を語る赤崎に驚く。来年?数年後?そんな世界、ボクにはひとつも見えない、と。赤崎の中にあるであろう未来の二人の姿は、どれだけジーノが赤崎とサボテンを見つめても全くどんなものなのか想像できなかった。数か月後の退団の未来しかわからないジーノには真っ暗な闇しか見えはしなかった。

「あれ、これちょっと傷んでる?」
「そうだね、これはもう駄目だと思う。」
「この前台木変えたらどーのとか言ってませんでしたっけ?」
「うーん…、なんか竜神木のことボク気に入っちゃって。なんだかもう駄目な子のために切り刻むのとか可哀そうな気がして。」
「はぁ?なに言ってンスか?やってみなきゃわかんないでしょ?駄目かどうか。駄目元でやってみて、結果を見てからそん時そん時で考えればいい。」
「えー?乱暴だなぁ…そういうのはちょっとボクとしては…」
「あんたのそういう本末転倒なとこ、ホントわけわかんねぇ。なんのために買ってきたんだっつー話。大体この竜神木って頑丈そうだし可哀そうって柄じゃないッスよ?」
「…そう?」
「どうみてもそんな感じっしょ。なんかツルッとしててイガッとしてて。チビに綺麗な花が咲くんなら、こいつだって本望ッスよ。わかんねぇけど。」

 ジーノは竜神木に赤崎を投影していた。なので竜神木を語る彼のセリフがまるきり赤崎自身の自己紹介のように思えて、なんだかなんとも言えない気持ちになった。緋牡丹を自分の分身と考えていたジーノには赤崎の言葉がこう聞こえたのだ。

   どんなことがあっても、
   たとえあんたを助けるのに
   切り刻まれて血を流したとしても、
   それでもあんたと一緒にいますから
   大丈夫、俺は頑丈で可哀そうって柄じゃないッスから

   結果を見てからそん時そん時でまた考えればいい

 切り刻まれて血を流している飼い犬を想像する。彼はとても嬉しそうに自分と手を繋いで落下していく。彼はこれくらい平気だと言う。谷底なんてちっとも怖くないと笑っている。この大切な飼い犬は、どんなところでも一緒にいて幸せだと、言ってくれている?これは馬鹿な考えなのか、悪辣な妄想なのかと、ジーノはぼんやりと考える。

 まるで聞いていない様な姿のジーノを赤崎は怪訝そうな顔をして睨んだ。

「なんスか?」
「フ…」

 それをみてジーノは苦笑いをする。

「うん…やってみよっか…でも大丈夫かな?」
「あんた、すっげー攻撃的な選手の癖に変な感じ。サッカー選手はトライ&エラーの繰り返しッしょ?やりましょうよ。」
「…じゃ、この子達にちょっと頑張ってもらおうか。」

 ジーノは再びサボテンを使ってちょっとした願掛けをやることにした。花芽は落ちたけど、台木は付くか?時々ジーノはこんな子どものような、そして心底真剣な遊びをやるのが癖だった。今回の願掛けは、花が咲くか咲かないかつまりは選手として羽化できるかどうかの以前の、人として生きるか死ぬかの願掛けだ。

 カッターやリボンを出してきて、やり方を説明しながら二人で一緒に台木の接ぎ替えを行うことにした。この作業は素人がやると大部分が失敗してしまうのをジーノは知っていたのだけれど、二人でやれば不思議とうまくいく気がした。ほっとくとそのうち死んでしまうこのサボテン。失敗したらすぐに死んでしまうこのサボテン。でも今からの処置が成功すれば。きっと死ぬまで一緒の素晴らしい夢のサボテンになる。優しくて頼もしい赤崎の気持ちのためにも、自分の心からの願いのためにも、どうか上手に台木がついてくれますようにと丁寧に丁寧に作業を進めた。

 ジーノのその仕草がとても美しく、また彼のサボテンへの深い愛情を感じたので、赤崎は目の前の男に釘付けになった。同じように昨晩触れられた自分の身を思い出しては、一瞬一瞬幸せな気持ちに包まれていた。

 救いが必要な弱りきった今のジーノは、先ほど感じた不安に目を閉じた。自身の割れ鍋の割れた部分にぴったりとフィットする綴じ蓋の発見に単に喜びだけを見出すことにした。なぜ執着に整理をつけようとしていたのかを忘れ、飼い犬がまだ手元にいることを楽しんだ。ああ、ボクはなにも失ってはいないのだと。