お花結び

GIANTKILLING二次創作小説同人サイト

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飼い犬と飼い主 9

今回は一直線のザッキーを書くのがテーマでした。どんな時も逃げ出さずにあくまでも冷静に問題点を突き詰め立ち向かっていく。この突き詰め→努力→解決で今まですべてを乗り越えられてきたザッキーが今回初めて解決しきれず少しずつ空回りの絶望の世界を知っていくという。ジーノ失速を曲解したせいです。時系列は9と8で重複。ちなみにこの頃のザッキー、実際にはサッカーへの集中力は半端なく、選手としてグングン成長し始めているけれど、一段と向上心が強まりちょっとやそっとの達成感じゃ満足できないようになってきただけです。

夜が歌う時1

「ほら、いいからやってごらん?」

 体を繋げた王子が、イキたいなら自分で弄りながらそのまま吐精しろと。彼があまりにも生ぬるい腰つきで俺の弱点を優しく突き続けるので、俺はもう限界。でも甘く苦しい息が漏れても俺はずっと首を横に振り続けて、もうどれだけこんな時間を俺達は二人で。

「そ?大丈夫、キミいい子だからどうせやるよ。今日は機嫌がいいからもう少し待ってあげる。」
「なんで…最近あんたそんな…」
「フフ」

 王子は時々とても機嫌が悪くなって。そんな時はこうして俺が自分で快楽を追う姿を見たいと執拗に要求してくる。とてもつらいのに俺は彼の瞳に冷徹な欲情の色を見つける度にゾクゾクしてしまう。虚ろな王子に比べてこんな時の彼は明らかに俺を強く欲していると実感してしまうから。

「キミっていい子だよ?だってこんなに悪いことが大好き。今すごく感じてるでしょ?ホントお利口だね。」

 嫌なふりが大好きなキミの為に手伝ってあげるよと、王子が俺の左手を俺の興奮の印に誘導する。首を横に振り続ける俺はその動きで王子の緩慢な動きを補うように快楽を追い始めており、とても従順に彼の導きに従う。

「…クッ…」
「うわ、やーらしぃ顔…」

 触れた瞬間にゾクゾクと快感が走り体を跳ねさせる俺に、王子は満足そうに呟いた。彼の手が俺の手を覆うようにしながらやんわりと握りこまれていく。わざわざオレの手を使いながら上下にゆっくりと緩急をつけて動き始める。

「あ、あ、嫌ッ」
「もう諦めなよ、フフフ、キミさ、自分でもうわかるでしょ?腰がほら」

 俺の体はもう彼に染められて、どうやればどういうように気持ちがよくなるかすっかりと覚えてしまっていて。俺は自分の手が挟み込まれたままの状態でいつものように自然に快楽の波を追い、意識とは裏腹にドンドン手と腰の動きが止まらない状態になっていく。次第に王子の突き上げもそれを煽るような形で刺激を強め、いつのまに彼の添えられた手が離されたのかもわからないままに俺は激しく自分を擦りあげ腰を振り、卑猥な声をあげ続けていた。もう、夢中で夢中で、完全に理性が吹っ飛んであっという間に俺は。

「あぁ!」

 我慢を強いられていた時間が長かった分だけ激しく飛び散る快楽の印。王子は笑いながらそれをすかさず彼の左手でねじりとり、ヌルついたその手をまだ出しきらない俺のに添えて、さらに強引に絞り出すようにきつく扱く。

「あ!あ、あぁあ!」

 俺は王子に会うまで知らなかった。射精した直後にこうして強制的に扱われると自分でもびっくりするくらい大きな声を出して強烈な快楽にまかれてしまうことを。イッた俺の体がガクガクと痙攣するように勝手に振動を続け、王子はその刺激を利用して彼自らも欲望を達成する。
 
 そう、俺は悪いことが大好きで。追い詰められれば追い詰められるほどに王子の言うように快楽が増す体になってしまった。そうしつけられたのか、俺自身が元々淫らなのかはもうわからない。そして今更そんなことはどうでもいいことなのだ。

 二人満足気な最後の吐息を漏らした後に、あの時間がやってくる。彼の表情がなんとも暗い顔に変化して、体が離れ。俺はその瞬間体がスッと冷えて心臓が突然キリキリと痛み始める。追い詰められ、登り詰めた先が高ければ高いほどにこの急降下の恐ろしい喪失感。なんでこんな。早く逃げ出したくて。そんな気持ちでティッシュを取り出し現実に戻って淡々と後始末をしている彼を見つめ。そして振り返った渇き切った彼の瞳に再び火が灯り、手が差し伸べられた瞬間にまた俺には魔法がかかる。もう、何回こんな日々を過ごしていることだろう。いつも通りの二人の夜。ずっと夜であってほしい、俺達の夜。

    *  *  *

「もっと鳴いて?ザッキー、ねぇ、お願い、もっと」

 してもしても、また王子としたくなる。うっとりするような魅惑的な微笑も、悪意に満ちたような残虐な顔も、どれもこれも全部俺のもの。こんな状態、自分でも駄目だと思う。

 それから後もまたいつもどおり、俺は彼の手でまるで楽器になって悲鳴のような嬌声をあげ続けていた。息つく暇もなく二人肌を重ね続けているにもかかわらず、それでも俺達はやっぱり未だに満たされきることを知らない。いつも渇き、求め続けている。なのに求めるほどに、渇いていく。俺達は負のスパイラルから抜け出せない。これが彼の言うところの、からっぽの未来なのか。ないものねだりを続ける俺の愚かさを、成長の見られないこの俺を、今の彼はどう見ているのだろうか。

 早朝、彼の家を出てとぼとぼと自分のマンションに向かう時、どうしようもない閉塞感に包まれる。家に着き、支度をし、グランドに向かい、彼の声を待つ。呼ばれればまた二人夜を過ごし、朝になればとぼとぼと家に帰る。昔なじみからの連絡や誘いがあっても、気乗りがしないで断る日々。彼の声掛けがない日は一人自宅でじっと明日が来るのを待つ。コンビニで適当な飯を買って、モソモソと飲みこむように食事をし、くだらないテレビを付けたままベッドで貝になって、膝を抱えてそのまま眠る。

 俺は、いつのまにかサッカーを見失い、その空洞にすっぽりと王子が入り込んでしまった。俺にとっての唯一無二の存在だったはずのサッカー。彼が削り取ってしまったのかも、自分で捨ててしまったのかも今はよくわからない。体中が軋む。心のあちこちにひびが入っている。俺はもうとっくの昔に、自分の都合の良いように考え続けることに疲れ果てていた。

   こんなにもままならないなんて
   自分の成長を信じきれない気持ちになるなんて

 俺は毎日のように祈り続けていた。そして努力も続けていたつもりでいた。彼は俺に心をくれない。それは俺が未熟で彼にふさわしい存在ではないから。
 お利口で従順なペットとのスキンシップを楽しむ彼と飼い犬の俺とは、まだまだ恋人同士どころか対等の人間同士、チームメイトとしてすら認識してもらえていなかった。イメージが先行しすぎている今の俺は、全く体と現実が追いついていかない現状について軽く絶望をし始めていた。俺は元々不器用な人間で、いつでも何かを手に入れるためには人より少し時間がかかる。プライドがあるから簡単にやれた顔をしたがるけれど、自分で自分をよくわかっている。でも今回のこれは。王子は遠い。俺は今、本当に彼の足枷でしかなくて。俺は彼を求めることをひとつもやめなくて。選手として本気を出して欲しくて、俺に心を寄越してもらいたくて。彼は未熟な俺に向かって、黙って忍耐強く苦笑いを浮かべながら飼い主としての責務を果たし続けているだけなのだ。そう、これは俺が彼のペットである限り続く、俺が彼に与える拷問。

 もしかするとこんな不安、生まれて初めてのことなのかもしれない。自身の成長を熱望していながらも彼との時間に溺れてサッカーをないがしろにしていってしまう今の俺。ぼんやり考える。思い出す。ジュニアユースでポロポロと俺の傍から離脱していった大切だった仲間達のこと。彼らはあの時、自信が揺らぎ、こんな風に毎日毎日息苦しい時間を過ごしていたというのだろうか。これはきつい。確かにしんどい。みんなあんな幼い年頃で、こんな重たいものを抱えていたのか、俺はわかっているようでいて、やはり何もわかっていない馬鹿な子どもだった。俺はこの年になるまで、自分を信じきれなくなったことなんてなかった。こんな風に焦燥感を感じて前を向くに向けなくなってしまう事柄に出会ったことがなかった。

 それでも。

 この痛みを今更ながら覚えた俺は、その分少しは成長出来たってことなのだろうか、と考える。通常ならサッカーに没頭することで当たり前のように自身が成長し、その結果として彼が手に入るはずだったんだ。
 なのに、俺は彼が欲しすぎて、彼に夢中になり過ぎて、逆説的にサッカーに没頭することが出来なくなってしまった。 こんな苦痛知らなかった。だからこれは彼が教えてくれた痛み。新しい成長の糧。
 あなたの言うとおり俺は赤ちゃんで、今の今まで世界は自分が中心に回っているのかと思っていたようだ。そんな風に、願うことは叶うことだと、思うことは実現することだと、ただただ単純に信じて疑わなかった。そう信じきるというのは、何も知らない子どもには易しくとも、大人にはとても難しいことだったのだね、王子。

 今まで全然知らなかった。何もわかっちゃいなかった。俺はそんなことを今更知った。知れた。