お花結び

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飼い犬と飼い主 11

達海就任直前の2006年12月頃。色々間違えて噛み合わず結局バラバラになっていくジーノとザッキーの生活と心理描写が中心。 ほぼずっと1人称視点。お別れの方法と解釈、トラブル時の対応の仕方。同じように繊細さを持ちながら、土壇場での弱さと強さ、それぞれ典型的な形になって事態が一歩ずつ変化していきます。それぞれ前進したり後退したりとそんな感じで。「淪落」は描写にモブ男(受)との絡みあり。依存傾向のあるジーノのひ弱さと不完全さを象徴する話です。王子、赤崎、モブ男(受)、世良、夏木、後藤、ジノ→←ザキ、ゴト+ジノ、ザキ+セラ。

淪落

 後藤の動きが活発化し達海の来日の可能性がドンドン高まる日々。ジーノは来たるべき恐怖の未来にただただ驚愕し、震え怯え続けていた。騙し騙しの生活を過ごしていた彼は今の状態で達海に会う勇気が一つもなかった。

 不安と焦燥。自身の更なる崩壊の予感。ひた隠しにしてきた素顔を不用意に飼い犬に見られてしまったジーノは、ショックのあまり彼を手元に置いておくことが出来なくなってしまった。近づきすぎた飼い犬には嘘と誤魔化しが効かない。あれはなんだったんだと問われる恐怖に震えた。だから彼はお化け屋敷に放り込まれた気弱な幼子のように、目と耳を塞いで一心不乱に逃げ出すような形で飼い犬を処分した。そして大切で大切ですでに体の一部になってしまったものを無理矢理引き千切ってしまったがために、彼はその時からまるで転落するかのように崩れていってしまった。まるで自らの意思で下を目指すような、そんな勢いを付けたままに。

    *  *  *

 この日、ジーノはとっくの昔に卒業した不道徳なパーティにまた顔を出していた。

 室内には派手なメイクや露出の高い服を着た人間達。着乱れた状態で絡み合いながらあちらこちらに転がっている。Queen AdreenaのPretty Like Drugsなんかが爆音で流れるソリッドでデカダンな喧騒を持つ猥雑な世界。

 ジーノは通常かなり上質なパーティでさえVIP席から少しも動かない、まるで高嶺の花のような憧れの対象だった。この界隈にはサッカーに無知な人間も多く、ジーノはETUの貴公子ではなく人脈の広い謎の美しい青年実業家というような存在で。ここにいるジーノの醸し出すムードは確かにいつもとガラリと違っていて、特徴的で印象深い顔立ちにもかかわらず別人だと言われてもおかしくない不思議な説得力があった。

 場違いすぎる程の上質な美青年。それがこんな地の果てに突然舞い降りてきたとあって会場は騒然とした。

 刺激的な官能を持つ見慣れぬ上玉に、信じられない奇跡を見たとでも言いたげに、その場にいたほとんどすべてのメンバーがジーノに群がった。日頃彼が傍にさえ寄せ付けない様な人物たちが酒を持って周りに現れる。すると花はふわりと優しい笑顔を浮かべて相槌を打ち、グラスを空にほんの少しかざして乾杯の仕草をしたりした。それを見ていたその他の輩も、こんなチャンスはないとひしめき合うように彼の周りを埋め尽くしていった。

「ねぇ、今日ボクが来たこと、ここにいない人には内緒だよ?そしたらまたこっそり来れる。またキミ達とこうして一緒に遊ぶことが出来る。いいかな?ねぇ、ボクまた来たいんだ、キミ達に会いに。」
「うっそ!マジ?」

 花は笑顔を湛え大量のお酒を口にし、そして数々の彼らの愛玩を受け入れた。ぼんやりと焦点の合わない目線は人々を悩殺し、彼の熱いキスが次々に周りのふしだらな快楽を引っ張り出す。獲物狩りの上手なジーノは、今日は全くその逆に沢山の蜜を配り歩き自らの真っ赤な花びらを散らすかのように振る舞った。彼らのエサそのものとなって自由に貪られるがままに身を任せていた。

「なぁ、あんたそんなガキみたいな遊びいつまでもやってないで、そろそろ上(2階にある乱交用ルーム)来てよ。」
「ん?ボク今オンシーズンだし、さすがにそこまではね?フフフ、スキャンダルは困る。」
「今更だよ。こんなハプバーのパーティに出入りしてる時点で終わってるだろ?入っちまえば下にいようが上にいようがおんなじことさ。な、いいだろ?」

 そんな会話をしながら、男がジーノの傍にやってきた。このバーを貸し切って行われているパーティの主催者だ。今日ジーノがここにきたのは彼の誘いがあったから。
 すると花の周りにたかる蟻のような者たちは自然にさっと波が引くように去っていった。二人の会話の内容が刺激的で、もしかして、彼、上行くの?まさか、と期待の目を向けながらもさりげなさを装いフロアに戻っていった。すでにこの段階で2階に上がる者たちもいた。

 長い髪を後ろで一つに束ねたスラブ系の色男。彼は大学時代にひょんなことで知り合ったジーノの知人だ。綺麗な金髪の派手な服装の男と黒髪の上品な服装の男。二人並ぶとまるでそこの場所だけ切り取られた絵画のようだった。なんとも現実味のない、違和感と言ってもいいような異質なムードが漂っていた。緻密に計算されたような張り詰めた緊張感と、それと同時に止めどなく崩れ落ちる退廃のようなものを感じさせた。

「上、今誰いるの?男女比どれくらい?」
「今、女多目かな。でもあんた行けばここの奴らみんな上行くかも。十分楽しんでいけばいい、ね?」
「上手な子とか、いそう?」
「いるいる。そうじゃなくても、あんたとやりたい奴も、やられたい奴もごまんと…。好き勝手に奴隷みたいにこき使えばいい」
「…う~ん…やっぱやめとく。最近ボク疲れてて…今は大人数お相手できるほど体力ないや」
「ちぇ…あんたはどっちにしろ端っこでニヤニヤ見てるだけで結局参戦しないタイプじゃん。そんだけでもいいのに。ちらっと数人はべらせて気持ちよくなりながらそんな風にさ?駄目?」
「ヤダ、めんどい。」
「そううまくはいかねぇか。な、じゃ、ここでいいからこっそり触らして。ちらっと気持ちよくさ…、ね、ちょっとでいいから。あと俺のも…。いい?」
「フフ、…なぁに?今日のキミ、随分はしたないねぇ、そんなにボクが欲しいの?」
「いいだろ、ん…キス、俺にも…」

 お互いの体に両腕を回し、絡みついて深いキスを交わし合う。

「…なんかあった?今日のあんた、こう…ちょっと雰囲気違うっていうか、すげぇいい」
「フフフ、そう?ね、さっきの上行く話、オフになったら考えとくから。もう少し小規模の集まりでなら…それならまあいいかな」
「マジ?!ホントどうしちゃった?あぁ、くる…、ん…」

 キスの合間に会話をしながら、二人の男の手は少しずつ下のほうへ移動していく。

「疲れてるって言いながら…でもちょっとは反応してる…欲情してくれてはいるんだね、あぁ…、ん…」
「なに?そういうキミは触る前からこんなに…フフ、やんちゃな子」
「ね、もっと俺に欲情して?も少し触らせて…」
「ちょっと…コラコラ…」
「あぁ…これ俺、ヤバいかも…、ん…、クッ!」
「…しょうがないなぁ…がっついちゃって、もう服汚れてきちゃったんじゃない?」
「…あ、どうしよ…ねぇ、…俺、…ん…」
「…うーん、気が早いなぁ…落ち着いて?」
「だって…それはあんたが特別…ん!はぁ…、ねぇ、駄目、俺もう」
「じゃ、やめとく?こんなとこでお互い困っちゃうよね?さすがに…」
「あ、駄目、もう少し…、ね、場所、替えよう、場所。上、無理なら二人で奥(スタッフ用控室)行こう?駄目?」
「駄目って…うーん…ま、キミだけなら…いっかな?みんなに黙っていられる?でも本番なしだよ?」
「マジ?いいの?内緒なの、知ってるから。学生ん時一回こっきりで俺ショックだったんだよ。本気だったからさ。」
「フフ、なに?今でも本気?」
「決まってんだろ?今でも忘れらんないってあんなの、今までで一番…すごい良かった。でも誰にも言ってないよ、だって約束だったもんね?だから今日も絶対言わない。ちゃんとお利口するから。ねぇ、ホントにいいの?」
「キミって随分世慣れしてるね?…まさに嘘も方便だ。ハハハ」
「違うって!ホントだ、あんたが俺のになるなら、こういう業界からすっぱり足洗ったって…」
「クスクス…キミがいなくなったら困る人沢山いるだろうし…恨まれるのはゴメンだなぁ。」
「ね、いいから奥行こう?早く…」
「前みたいに変な薬使っちゃ駄目だよ?ボクああいうのそもそも合わないみたいし…」
「わかってるってば。ね?こっち来て?俺、もう限界…」
「まったくもう…、あ、部屋に鍵あるよね?」
「勿論だよ…さぁ…」

    *  *  *

 グズグズと崩れていくように。崖から飛び降りるように。

 ジーノは日頃の上質なおもちゃを使うのをやめ、段々猥雑で粗悪なおもちゃに手を出すようになっていった。

 この世界にいる大部分が、大きな渇望と欠落を抱え悲鳴を上げながら暮らしている人間達だ。彼らは常に己の弱さで自ら不幸を呼び寄せては、喘ぎながら涙を流し続けている。ジーノは笑いながらその止めどなく流れる真紅の幻の涙を眺め、気軽に身を散らすように己を投げ出していく。ここにいるみんなは本当の意味でのボクの仲間たち、ここがきっとボクの本当の居場所、そう感じて身を沈めていく。

 室内は暗く、窓もなく、決して光など届かない場所だった。もう自分の大部分が闇に囚われてしまった状態の今の彼にとって、ここは残酷なまでに居心地がいい場所だった。この真っ暗でいながら血のように真っ赤な世界は、ジーノのもはや慣れ親しんだ旧友と言ってもいい程身近になった、あの悪夢の世界にとてもよく似ていた。

 日の当たらない暗がりにジーノは足しげく通う。

 無理矢理自分から引き千切って出来た大きな欠損に、アレも違う、コレも違う、と適当にくっつけてみてはポイポイと放り出す。失われた欠損が何かは引き千切った自分が一番理解している。それとは毎日のように顔を合わせている。なのに、あれに似た代わりはないかと、今日もこの馬鹿馬鹿しい行為を繰り返す。やる前から絶望を含んだこの行為。ジーノは重度のアルコール中毒患者のようにどうしてもこれをやめることが出来ないでいた。震える手、ガタガタと歯の根が合わないほど不安な自分。これを鎮めるにはこの方法しか思いつかなかった。そして当然偽物を本物に見立てて試してみたところで、ジーノの震えが治まるわけはなかった。今の惨め過ぎる自分の現状に、ジーノは見えない涙を浮かべながら、ケラケラ、ケタケタと大笑いをするばかりだった。