飼い犬と飼い主 12 【1部完】
二人が二人してバラバラに過去の思い出を思い返してあーだのこーだの考えているだけの、ジーノとザッキーそれぞれのオフのお話。二人がどんな心境で新体制を迎えることになったのか。
ジーノのオフ~チケット
ボクはいつの間にか幸せな夢を見ていた。インターホンの音が聞こえてきて、ボクはそれに気が付く。あの子はうちのカードキーを持っているはずなのになにやってるの?と。全くドジな子だね?どこに置いてきちゃったの?と。クスクス笑いながらフラフラとベッドから身を起して…。そんなちょっとした夢を見ていた。淡い淡い幻のような夢だった。寝ているのか起きているのかよくわからない、ボクの少し焦点の合わない目。そんなポンコツなボクの朦朧とした視線がモニタ越しに見つけた姿は、当然可愛い飼い犬なんかではなかった。
* * *
今日、日本に出張中の父がいきなりこの家にやってきた。ボクを迎えに来たのだ。ボクは力なく、チャオ、とモニタの中にいる父に言うと、父も溜息をつきながら、チャオ、とあきれたように答えたのだった。
なんていう失態。本来なら捕まらずに済む場所に逃げ込んでいるべきだった。全くこんな単純なことにも発想が回らないなんて本当にボクはどうかしていた。でも、父を前にしては、なにもかももう遅すぎる話だった。
女の子を連れ込んでるところがバレずに済んだのはまだマシだったけれど、ダラダラと自堕落な生活をしていたこと自体は見られてしまった。いつもはこうじゃないんだよ?なんて言ってもきっと言い訳にしか聞こえないだろう。こんな下品な装飾はボクの趣味じゃないよ?とか。ホントはここには住んでなくて、カーサではもう少しまともな生活してて、料理だって結構マメにやってて、美味しいって褒められたりもするんだ、とか。いくら言い訳並べてもね。しょうがない。今更。
口数少ない父の手にはチケット2枚。明日フライト?あー、なんて急な話。でもないか。ボクが何度連絡しても全然電話に出ないものだから、きっとそれを心配した母が直接父を寄越したんだろう。そりゃそうだ。あなたの直感はいつも正しい。残念だ。あなたはボクの異変を見つけるのがとても上手なので、小学校の頃に手痛い傷をつけられて帰った日や、彼女に振られた時なんかには家に帰るのが本当に苦手だった。
でもありがとう、感謝だよ?もうボクは自分だけの力では一歩も動くことが出来なくなってしまっていた。あなたの想像通りだよ。誰かの手がないと、もうここから出られない状態になってしまっていた。
さー、しょうがない、諦めよう、ジーノ?
こうなるようになってたんだね
細かいことは後からにしよう
ではご挨拶
Addio!buna fortuna!
(永遠にさようなら、あなたに幸運が訪れますように)
大好きだったよ、ニッポン
