お花結び

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飼い犬と飼い主 12 【1部完】

二人が二人してバラバラに過去の思い出を思い返してあーだのこーだの考えているだけの、ジーノとザッキーそれぞれのオフのお話。二人がどんな心境で新体制を迎えることになったのか。

赤崎のオフ~誠意

 今回で冬のオフも2回目だ。去年のことはもう随分昔のような気もするし、ついこの前の事だったような気もする。

 一年前の今頃は自主トレの合間に友達との同窓会みたいな集まりが続き、なんとなく賑やかに忙しく過ごしていたと思う。それでも印象に残っているのはそれとは別の事だ。
 あの時期、俺は王子に対して抑えきれない欲望を抱えて毎日を過ごしていた。立食パーティの日の抱擁と突然のキス。俺は心の準備も何もないままに、いきなり彼の感触を全身で体感してしまった。王子の言うとおり、スキンシップに不慣れな自分。あの体験がもたらしたのは、終始振り払うことのできない頭の芯までしびれるような刺激。まさに衝撃と言ってよかった。
 男同士の快楽の味わい方も知らなかった俺は突き動かされた衝動のままに妄想の中で王子を抱いた。彼の表情、彼の声、彼の匂い、そして彼の肌と唇と舌先の感触。男が女を欲するがごとく、何回も何回もそれらをイメージしては自分の快楽を引き出していった。今考えると意味わかんねぇ。なんか笑ってしまう。

 王子と過ごす現実のあれは全く別物だった。想像をはるかに上回る官能。信じられない世界。彼の戯れは毎回俺を翻弄し、俺は俺でそんな自分の破綻に何度も酔った。まるで強い中毒性のある麻薬のような快楽だった。

 でも王子はついぞ愛を語ることをしなかった。かわりにキミを誑かさないでフェアに扱ってあげると笑った。ボクのこの誠意がペットにだけ示す貴重な情なのだと、感謝してくれていいよと。そうして終盤には、キミの欲しいものは何一つあげられない、と彼は俺の両手を握り悲しそうな顔をした。あれは犬から人になりたがった欲張りなペットに対する困惑だったのだと思う。

 俺とのあれは彼にとって他愛無い飼い犬とのスキンシップであり、肉欲の解消自体はその延長にくっついたおまけのようなものでしかなかった。体の相性がいいからキミと寝るのはとても楽しいよと、なんかのついでのように語っていた。その表情はあっけらかんとしたもので。まるでひとっ風呂浴びた後のようにさっぱりとドライな笑顔だった。そんな調子で俺との行為を表現していた。なのに、俺にとっては全然そういったものではなかった。毎回毎回、俺はいつもあんなにも、目が回るほどの陶酔にまかれてしまっていて。
 王子にかかると単なるついでの性欲処理すらこんなに凄いのかと、正直なところ驚いてばかりだった。

 彼は気のない素振りでさらりと行うサッカーのプレイも、気楽な犬とのじゃれ合いも、まるでエスプレッソのように濃厚なものだった。じゃあ女性たちとの本気で愛と情を交し合うアレは一体どんな?本気で魂を込めて行う彼のファンタジックなプレイは一体どんな?なんかマジで凄そうだなってくらいしかもはや想像もつかず、それを実際に見たり感じたり触れたりしてみたいと常に切望していた。

 彼の本音。俺達の現実。それが飼い主と飼い犬のあの奇妙な生活だった。俺はあの頃、特定のスティディを持たない“みんなの王子”の、たった一匹の飼い犬という特別な存在だった。ある意味彼にとっての唯一無二の存在になれていたのだ。

 でも、彼があまりにも優しげに“ボク達は特別な関係だよ”と繰り返し繰り返し笑いかけ、“大切に思ってるんだ”と言ってくれるものだから、俺は心がほどけていくのを我慢することが出来なかった。与えられる以上の彼を欲し、彼を困惑させ、そしてとうとう逃げられてしまった。このことはこうなる前からわかってはいたことだ。彼が犬を欲し続け、俺が犬に徹しきれなかった。あまりにも当然の結果だったんだと思う。我慢しきれなかった馬鹿な俺が、自ら破綻という結末を選んだと言える。