お花結び

GIANTKILLING二次創作小説同人サイト

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鎖に繋がれて 1

2007年1月いよいよ達海監督就任。閉塞感満載だったETUに新しい風が吹き込み、それと共にジノザキ二人の関係性にも大きな変化が訪れます。公私共に大混乱!みたいな。そんな感じ。話の中で心理学系専門用語やイタリア語がちらつきますが勿論ナンチャッテで出鱈目です。王子、赤崎、椿、達海(気配だけ)など。

雨とジーノの悪い夢

 ETUご自慢の広い浴室。あったかいジャグジー。王子のお気に入りの席。

 みぞれに打たれた体の冷えも少しずつ温まり始め、俺はうんと伸びをしながらほっと一息。王子がいたらまた“寒い”だの“びちょぬれヤダ”だの機嫌が悪くなっていたのだろうか?そんなことを考えていると、何ニヤついてんだ気持ちわりぃな、と世良さんに言われた。っるせぇな、と返すと、んっとに態度わりぃなお前!とほっぺたをつねられてしまった。イテェよ!バシャバシャとお風呂で二人暴れ出してしまったので、コシさんに怒られた。ったく、やってらんねぇ。

    *  *  *

 王子は雨が嫌い。以前、全く最悪だね、と話しかけてきた不機嫌なずぶ濡れ王子に雨が嫌な理由を聞いたことがあった。ピッチがスリッピーだから?視界が悪くなるから?質問しても、好きな人っているの?だって普通嫌でしょ?なんてあやふやにはぐらかすばかりだったけど最後にポツンと不思議な台詞。

「…こんな日は悪い夢がボクを追いかけてくるから嫌なんだよ」

 いつも思う。彼のこの手のトンチキ発言。意味不明なのに笑うどころか逆にドキッとしてしまう。

「…フフ、今のカッコよかった?ん?何その顔」
「いや…ドン引きッス…」
「ハー、もう折角ボケたのに、ちゃんと突っ込んでくれなくちゃだよ?付き合い悪いなぁ」
「あんた自分で自覚ないのかもしんねーけど天然ボケ系だから、本気なのか狙ってんのか正直一瞬わかりにくいッス」
「えー?そう?まだまだ飼い犬として特訓が足りないのかもねぇ。ハハ、まあともかく、雨って悪夢だよ!服べっとり、スパイクぐっしょり。気持ち悪くて!全く王子って困ったもんだよねぇ?我儘で贅沢で文句ばっかり言って。ねぇ?ザッキー?」 

 雨に濡れるのが冗談でも何でもなく本気で苦手なんだとあの時わかった。王子が自ら我儘や気紛れを口にするのは少し話を盛ってるか、その話自体が冗談かサービストークの時だけだから。意味が解らなくてもドキッとした方の言葉の方が本質に近い言葉。追いかけてくる。意味深な言葉選び。彼の言葉にあの時もまた色がついていたように見えた。
 それから雨降りの時の王子をみるのが少ししんどくなった。特に降り始めのなんとも不安そうなあの表情。俺にはわからない王子の悪夢。本当にひっそりと近づいてきているみたいに感じた。

 雨が苦手な王子は雨に濡れると体と心が芯まで冷え切ってしまうかのように左腕を体に巻いて体を竦めていることが多かった。ETUにはあたたかい浴槽とジャグジーがあって本当によかった。

 ああ、どんな時も王子のことが頭から離れない。きりがない。少しのぼせてきたのを感じて、俺はもう風呂から上がることにした。

    *  *  *

 王子は雨が嫌いだけど、彼自身は何故だか不思議とあの重い空としたたる水滴がとてもよく似合う人だった。不愉快そうな表情で髪先から雨粒を飛ばしながら放った美しいFKの名シーンの数々。繰り返し繰り返し見た過去の様々な映像は、今でもいくつも思い起こすことができる。

 まるで太陽のように明るい調子で話す王子はラテン系で如何にもイタリア人風情。でも二人でいる時の王子はまるで湿度の多い日本のような、しっとりとした落ち着いた気配を持っていた。
 おかげでこの曇天のうっとおしいほどの重たさも前ほど嫌いじゃなくなった。だってこの薄暗くて少し物憂げなこの世界は、王子のあの寝室の纏わりつく様な暗さと湿度を持つ甘い闇に少し似ているから。