鎖に繋がれて 2
冬のオフ~キャンプのジーノサイドのお話で前の「鎖に繋がれて1」と対になります。ジーノ捏造設定てんこ盛りでこの先ドンドン厨臭くなるっていうか恰好悪さが増していく予定でして本当に恐縮です。登場人物は王子、赤崎、後藤、椿、達海、オリキャラで主治医とかジーノ母とか。次の「浜辺にて」はこの2の中のキャンプ合流直前のジーノの生活の話ですがジノモチのケがあるのでニガテな人は読み飛ばし推奨。
ジーノの中の魔物
ボクがボクの中のSi(はい)に触れることが出来てから、自分の中に張り詰めていたものがふっと緩んだような気がした。依然、思考は粉々で、視界には膜が張り続けている。外的症状は更に悪化したとさえ言っていい。ドンドン自分の中のあらゆる機能が停止し、無力化していくのも感じられたけれど、その反対に何かが大きく動き出している感じもした。もう止められないであろうこの流れ。不思議と奇妙な心地よさがあったりもした。
* * *
その日。なんだか魔物の夢を見た。
闇に沈む遊園地、恐々と居残りを決めた少年の前に一人の男がやってくる。彼はあの時河川敷でしてみせたのと同じチャーミングな笑顔で、お待たせ!また遊ぼうぜ、と少年に言った。
すっかり日が暮れる程遅刻して現れた彼との遊びはまるで夜の遊園地みたいにキラキラと。それはそれは美しくも不気味な、心ざわめくスペクタクル、体感したこともないエンターテイメントの数々だった。河川敷でボールを持って何年も何年もこの時を待ち続けていた小さなジーノは、とても幸せそうに笑っていた。無邪気にはしゃぐ子どもと、それと一緒になって遊ぶ楽しい魔物。それをみて、ようやくボクも笑うことが出来た。なんて素敵な、まさに夢のようなひと時。
小さなジーノと遊んでくれてありがとう、とボクが魔物に手を差し伸べたら、その瞬間振り向く魔物の衣装がハラハラ風に舞い始めた。ボクは魔物の仮装よりもおそろしい彼の本質に触れるのが怖くて、小さな悲鳴を上げ、ガバリと半身を起す形で目を覚ました。カタカタと身は震え、冷たい汗が額をつたっていた。
* * *
これはきっと、正夢。否が応でもこじ開けられていくボクのパンドラの箱。
本物のタッツの中の叫び声と、本物のタッツの中の溢れる涙と、体から吹き出すあの血しぶきを全身で体感する日はもうすぐそこまでやってきている。きっと想像しているよりもとても痛くて、とても残酷で。でも彼は平気な顔をして、夢の中の魔物と同じように何事もなかったかのように笑っていることだろう。ボクは小さなジーノのように、明るく無邪気に笑いたい。でもそれはおそらく無理。彼の姿は、夢の中の彼と同じようにボクの心を引き裂くに違いない。これはあの日彼にしがみつきながらも逃げ出したボクの、10年越しの宿題だ。ボクが彼を知ってなにもかもすべて虜になったあの瞬間から、この時を迎えることはあまりにもわかりきったシナリオだったのかもしれない。
ボクはまるで震えの止まる気配のない体に、全く厄介なことだと他人事のような不便さを感じながらなんとなくフラフラと起き上がる。恐怖に荒れ狂う感情とは裏腹に、ボクの内面は葉を散らす晩秋の植物のようにひっそりと無機質なまでに褪めていたりした。
