鎖に繋がれて 2
冬のオフ~キャンプのジーノサイドのお話で前の「鎖に繋がれて1」と対になります。ジーノ捏造設定てんこ盛りでこの先ドンドン厨臭くなるっていうか恰好悪さが増していく予定でして本当に恐縮です。登場人物は王子、赤崎、後藤、椿、達海、オリキャラで主治医とかジーノ母とか。次の「浜辺にて」はこの2の中のキャンプ合流直前のジーノの生活の話ですがジノモチのケがあるのでニガテな人は読み飛ばし推奨。
一緒に居させて
年が明け、今はキャンプのまっ最中。ジーノは苦痛に喘ぎならも番犬と猟犬と位置付けて赤崎と椿を愛玩する日々を続けていた。
「フフフ、なんかさ、キミ達二人ってとってもかわいいね。今日もさ、一緒にご飯食べない?色々話をしようよ。」
キャンプ中、ちょこちょこ二人を誘って食事をとるのには理由があった。
調子の落ちたジーノが食事を楽しめないのはいつものこと。そのせいでここ1か月ほどまともな食生活をしてこなかった。へとへとながら良質の睡眠がとれない今のジーノはほとんど朝の食事を摂取しそびれ、フラフラの状態のまま練習に向かう羽目になっていた。
午前中は軽く流し、ランチタイム。空腹ながらも固形物を受け入れがたい体調の中、飼い犬を眺めながらなら無理なく食事をとることが出来た。一人はつらかったし、でも村越の混沌に近づくのは状態の悪いジーノにとって禁忌に近かった。あの不調が達海とのしがらみで広がったものだとジーノは察知していたので、益々厄介に感じていた。自分と村越の混沌は混ざり合えばおそらく致命的な問題に発展していく。確実にチームを崩壊に向かわせる嵐になるに違いなかった。
混沌のジーノは飼い犬達との戯れの中で少しずつ視界を晴らし、食事が終わり午後になれば楽しそうに練習に参加する明るい王子に変化した。そんな姿を周りは“ようやく王子が御目覚めだ”と揶揄したが、ジーノの能天気なほどの快活な笑い声は殺伐としたチームのムードの中で一種の清涼を生んでいたことも確かだった。
明るく笑う王子はジーノの言うところの傲慢の王子だった。なにもかも切り捨てて、自分の為だけにサッカーをエンジョイする存在。本人が嫌がるのも平気でのん気に達海の怪我のことについて質問してみたり、沈鬱な村越に“便秘かなんかなの?”などと神経を逆撫でする様なからかいの言葉を掛けたりさえしていた。若手とベテランの亀裂などお構いなしに、自由にその間を泳ぎ笑っていた。まるで空気を読まないがごときその振る舞いは、なぜか不思議とバラバラになったチームを糸のようなもので繋ぎとめる働きも持っていたりしていた。傲慢の王子のぶしつけは、ジーノ本人の考えとは裏腹にチーム全体に愛される必要なスパイスとなっていたのだ。
* * *
そんな練習の時間が終わり、食事を済ませ、すっかり夜が更けた頃になって部屋に戻りやっと再び一人になる。ジーノはベッドの上に疲れ切った心と体を投げ出す。昼間のサッカーの熱が体に残っていてどうにも処理しきれず身を丸くする。ちらつく番犬の肢体の躍動、一体感。いつの間にかまた体が体を求めてどうしようもなくなっていた。盾になった飼い犬は、身を捨てて守っているはずの飼い主に背中から刺されるような裏切りを受ける。やりたくないと思いながらゾクゾクが止まらなかった。
「つくづく…最低だな。さあ、ジーノ、消灯の時間だよ」
得られる快感の大きさに喘ぎながら今日も日課のように傲慢の王子を断罪し、心の中でひっそりと絞殺する。闇夜と同じような暗がりが再びジーノの心を包み込む。翌朝飼い犬にこの闇を晴らしてもらうまで、ジーノは自身の混沌に喘ぐ時間を過ごすことになるのだった。
