お花結び

GIANTKILLING二次創作小説同人サイト

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鎖に繋がれて 4.5ある兄弟猫の怯懦

3月下旬~4月下旬のジノモチ視点のお話。ザッキーを切ってフラフラなジーノがひょんなことから退院後の持田の家に転がり込みます。(同居です。やってません。この先もやりません)転がり込んだことさえ押さえとけばこれも読み飛ばしてもほぼ大丈夫にしたつもりです。
ややこしいですが、幻11(ザキ視点での夢)と、持田の日々(モチ視点)と、休憩・傷猫子猫・夢うつつ・遭難(ジノ視点)は、ほぼ同じ時期のことを違う角度から書いてます。

傷猫、子猫

 ジーノが持田の家にいきなり転がり込んで来てから丸二日目。

「どうしてボクここにいるの?」

 ジーノが食事中にポツリと呟いた時も、黙ってそれを聞き流す持田の表情はいつもと全く変わることがなかった。

「なんでキミの足、そんなんなっちゃってんの?」

 ハーフパンツから伸びた足にはクルクルと真っ白な包帯が巻いてあり、ジーノが指を差して説明を要求するもやはり持田は全く表情を変えず黙って食事を続けるばかりだった。報道に載る前に「仲の良いお友達」のナースからのリークで情報を手にしていたと数時間前に呆気なくゲロッたくせに。と持田が考えていたことは当然ジーノには伝わらなかった。プロ選手になって以降ジーノと持田はあまり互いのことを話し合う関係ではなくなっていたが、今の持田はある程度ジーノの情報を掌握済みだった。ボロボロ状態のジーノの心理的不調に付け込んで本人から巧みに引き出したのだ。だが当の迷子のジーノには現状での自分の脇の甘さやその失態すら理解する力がなかった。

「今日、何日?」

 ジーノはもはや自分の現状を咀嚼することすら出来ないほど疲弊した状態で、気が向けばこうしてポツポツとなんてことはない質問をただ繰り返すばかり。誰にも見せることのないこのジーノの退行は、つまるところジーノの持田に対するこれまで積み重ねられてきた大きな信頼を表すものだった。

「…たまにはさ、こういうのもいいかもな、ジーノ?」
「こういうの…って…?」
「俺もなんかもう…疲れたし」
「?」
「なぁ?痛いもんは痛いんだし、お前もさ、苦しいもんは苦しいだろ?」
「……」
「そういう時もあるよ、な、のんびり休憩しようぜ?」
「休憩?」
「……」

 しばしの沈黙、意味が通じているのかいないのか、ジーノはポツリとこう返事をした。

「いいのかな…それって怖く…ないこと…なの?」

 そしてやっぱり表情一つ変えずに持田は言う。

「怖いに決まってるだろ?」
「え…だって…」
「簡単に立ち止まってんじゃねえよ、なんなんだよお前いい加減にしろよ」
「モッチー?」
「一人で勝手にそんなんなっちゃって…頭の使い方も忘れたのかよ!さっさと元に戻ってこっから出てけ、俺を一人にすんなよ!ッバァーカ!」

 出て行って一人にするなという矛盾した持田の言葉の意味はいつものジーノには当然理解出来るものだったのだが、故障中のジーノは皆目見当が付かなかった。

 今回の持田の怪我は退院直後のこの段階では全く先が見えないものだった。この壮絶な苦しみを今目の前にいる優男にだけは触れられたくなかった。だが、その唯一傷に触れる力を持っていたはずの戦友が実際にこうしてその力を失ったまま姿を現した時、持田にどうしようもない孤独を感じさせたのだった。今の二人で過ごす時間は、寄り添いながらも未だかつてないほどの独り同志の時間となってしまっていた。

 隣町同志の手練手管を熟知しあったライバル二匹、野良猫兄弟。皮肉なことにそれぞれが同時に違う深手を負っていた。警戒心が強い猫は身動き取れず、動ける猫は戦う力のない未熟な子猫に戻ってしまった。今敵に狙われればひとたまりもない。

「この部屋、今何度?」

 何の会話をしていようが、こうしてジーノは再びなんてことはない他愛無い質問を持田に繰り返す。

「寒い…モッチーこの部屋ちょっと広すぎない?暖房あんまり効いてない」

 だから今はこうして二匹身を寄せ合って、部屋の片隅丸まっている。時が過ぎるのを待つ以外には、今の二人には他にやれることがなかったのだった。