鎖に繋がれて 7
ジノザキ、やっとおうちに帰ってきます。登場人物は王子、赤崎、持田の3人。一部ジノモチ的描写ございます。けど、じゃれてるだけでお話した通り単なる仲良しなお友達です。
モッチーがザッキーの事気に入って、親切半分、意地悪半分という感じであれこれと。ザッキーのヤキモチはそんなモッチーのあやふやなミスリード?にひっかかった形……のつもりです。
これからの話
どれだけ眠ったのだろう。寝る前は昼の日差しを感じていた部屋も今はもう月光が差し込む暗がりの中だった。室内の気温が下がっているのがわかる。でも久しぶりに夢を見ないで眠れた気が実感があった。
ふと気が付くと、寝る前は逃げ出さないようにジーノを背中から押さえつけるように抱きついていたはずだったのに、彼はいつのまにか片腕で赤崎に腕枕をしながら反対の腕を腰に腕を回し、いつものように赤崎を大切な宝物のように優しく包み込むようにしながら寝ていた。ずっと待っていた二つの腕の温かみが体全身に沁み通るようで今更ながら嬉しくて、心の中で王子、王子と小さく呟きながら涙ぐんだ。
「ザッキー?」
赤崎の自分を呼ぶ声が聞こえたのか、ジーノはぽっかりと目を覚ます。酔っているのか、寝ぼけているのか、目が上手く開かないようだ。それでもジーノは愛おしいものを見るように微笑みながら、いつものように赤崎の瞼に軽い口づけを落とす。
「Ti amo. Tu sei tutto per me.」
赤崎が初めて聞く言葉を呟き、ジーノはまた眠りに落ちていった。その言葉に赤崎はポトポトと涙を落とした。ジーノは言葉を大切に使うので、“Ti amo”という言葉はめったに口にしなかった。普段、“なかなかいい”とか“気に入っている”とかイタリア語でも“Mi piaci(好き)”とか、“Ti penso(キミのこと思ってる)”とか、やたらとそういう言い方をする人で、照れくさいのか、特別なのか、冗談めかしなら兎も角“Ti amo(愛してる)”という言葉を本来の方法で使うのがあまり得意ではないようだった。
それに比べて日本語の“愛してる”はとても手軽に使う。本人曰く演出に必要な言葉であるそれは赤崎に使われることなどなかったが、関係がぎくしゃくし始めた一時期には明快にこの言葉が彼の口から零れ出た。彼にとっては亀裂を修復するための治癒薬のようなタイプの言葉だったのかもしれない。心の表現に使う言語ではない、相手の為の言葉。そんな感じだった。
今、この時に、彼にとって“愛してる”の何倍もの意味を持つ、“Ti amo”が、彼の口からこんな風に極自然に出てきたことが、赤崎の心を大いに奮い立たせた。なにも告げずに突然行方をくらましたジーノの人知れず自身に向けていた愛の吐露。赤崎は嬉しかった。ホッとして赤崎もまたジーノと同じように再びうとうとと眠りに落ちていった。
* * *
幸せな眠りから覚めると傍にジーノがいないのに気付いて赤崎は吃驚して飛び起きた。部屋には暗めの間接照明が灯っている。けれどその明かりに照らされた範囲に男の姿は見当たらない。慌てて玄関に靴の確認をしに行こうと駆け出すと、シャワーから出てきたバスローブ姿のジーノとばったり出くわした。
「やあ、どうしたの?慌てて」
いつものように、気さくで少しとぼけたような顔。赤崎はたまらなくなって、駆け出した勢いのままジーノに飛びつき思い切り抱きついた。
「おかえりなさい!王子、俺!」
「……」
「王子?」
「なんていうか……」
「?」
「変だよ。……ここはボクの家なんだけど」
体を少し強張らせ、ただいまと素直に言ってくれないジーノのこの反応が、ついさっきまで感じていた安らぎをすっかり幻にかえてしまった。ジーノの言葉は
“家主でもないキミが、ボクにおかえりって言うなんて、それって少しおかしいんじゃない?”
と、そんな意味を含ませようとしているものだった。そう、この男は今日、半ば無理矢理ここに連れてこられたわけで、戦いと説得は、まだこれからの話だったのだ。
